検証
「マーギン、出発してから何があったか検証するぞ」
バネッサを追いかけようとしたマーギンだったが、オルターネンに呼び止められてしまった
「あ、うん。分かった」
遺跡の上の部屋に上がっていったバネッサ。外に出るんじゃないだろうな? と心配していると、カザフが追いかけていった。それを見たマーギンはオルターネンと大隊長と検証会議をするのであった。
「ふむ、特別なことはしていないのだな?」
「そうですね。ただ、ある地点に辿りつけない……いや、通ることすらできなかった場所が歪みのあった場所じゃないかと思います」
大隊長は地図を見ながら、それはおそらくこの辺りだろうと指で場所を示した。その場所はマーギンがゴルドバーンで入手した本の地図とほぼ合致する。
「場所はほぼ確定ということですね。では、なぜ歪みが消えたかという謎が残りますね」
オルターネンは次の疑問を解決しようとする。
「それなんだがな、一瞬、ほんの一瞬だが、その場所と思われるところがざわついて見えた。マーギンが後ろのみんなを迎えに行ったときだな。そのときは何をしていた?」
「えっ?」
「こっちは特別なことをしていない。していたとすればマーギンの方だと考えるのが筋だろう」
「な、な、何もしてませんよ。落ちて動けなくなっていたローズを介抱していただけで……」
歯切れの悪いマーギン。しかし、大隊長は「そうか」、とだけ言って、深く追求をしなかった。
「では、最初からもう一度、何があったか細かく確認するしかない。明日、同じことを繰り返すぞ。それで何か思い出すかもしれん」
こうして検証会議は終わり、遺跡の中に張ったテントに戻ると誰もいなかった。いつもなら誰かが寝に来ているはずなのに。
マーギンは、アイリスとバネッサのテントに行ってみると、アイリスが1人で寝ていたので、次にカザフ達のテントに行く。
「マーギン、話は終わったのー?」
タジキはすでに寝ていて、トルクは起きていた。
「カザフは?」
「バネッサ姉を追いかけていったままだよー」
バネッサが上の階に上がってから、けっこうな時間が経つ。まさか本当に外に出たんじゃないだろうな? と、心配になったマーギンは探しに行くことにした。
『死ぬ気で戦ってたのによ』
そう呟いたバネッサの声が心に刺さったままだ。あのメンツが揃ってたら大丈夫だろうと、すぐに戻らなかったのは事実だ。バネッサはカタリーナの言動で、ローズとのことを察したのだろう。そのことの罪悪感がマーギンを襲う。
「ちっ……」
マーギンは軽く舌打ちをして、上の階に登った。
「バネッサ、カザフ、いるか?」
2人の気配はない。しかし、気配を消しているかもしれないと声をかけた。
シーン……。
「本当にいないようだな」
遺跡はそれほど広くないのに、気配を探っても見つけられない。本当に外に出たのかもしれない。
マーギンは遺跡の外に出て2人を探す。夜の森は危険度が増す。何もなければいいが……
カッ。
しばらく2人を探して森を進むと、オスクリタが飛んできて、マーギンをかすめて木に刺さった。
「危ないだろうが」
「どうせ当たんねぇだろ?」
そう言いながら、バネッサが木の上から飛び降りてきた。
「勝手に外に出るなよ。心配するだろうが」
「はんっ、お前はそんなこと気にしちゃいねぇだろ?」
マーギンが怒ったかのように言うと、バネッサがそっぽを向いて吐き捨てた。マーギンは何も言い返せない。
「……カザフは?」
「その辺にいるんじゃねーか?」
バネッサはそっぽを向いたままだ。
「あったーっ! あったぞバネッ……マーギン? なんでいるんだよ?」
カザフが満面の笑顔で走ってきて、バネッサの横にマーギンがいることに驚いた。
「お前らがいなくなったから探しに来たんだよ。何してたんだ?」
「これだよ、これ。ほら、バネッサ。もう落っことすなよ」
カザフは嬉しそうな顔で、綺麗な石をバネッサに渡した。
「あぁ、悪かったな。落っことしちまってよ」
「本当だよ。気をつけろよな」
どうやら、バネッサがプロテクションステップの上から落とした綺麗な石を探しに来ていたらしい。昼間はプロテクションステップの上からの探索になるだろうと、夜の間に地上を探したようだった。
遺跡に戻る途中、カザフはバネッサに嬉しそうに石を見つけたときのことを話している。しかし、バネッサは面白くなさそうな顔で、時折マーギンにオスクリタを投げつけるのであった。
「では、同じことをしながら進もう」
まるでデジャヴのように、初めに出発したときと同じ行動をする。
「うむ、歪みが見えるな」
大隊長の言うとおり、森の一部が歪んで見える。ここまでは前回と同じだ。
「お前、石をひょいひょいと投げてただろ? 同じ行動をしろよ」
「また落としたら、さすがに悪いだろうが」
マーギンが、バネッサに同じ行動をしろと言ったが、バネッサはやらない。
「落としたら、その場で拾いに行くから」
そう言うと、渋々、ひょいひょいと石を投げた。
「まだ歪みが見えるな、ここから何があったか覚えている?」
大隊長は歪みのある場所を見ながら、マーギンに聞いた。
「確か、この辺でバネッサが石を落としましたね」
「そうか、ならその石を落とせ」
「えっ?」
バネッサが大隊長の方に振り向く。
「大切なものなら探しにいく。だから落とせ」
大隊長に命令されて、バネッサはカザフの方をチラッと見てから石を下に落とした。
フッ。
石が地面に落ちたときに森の歪みが消えた。
「うむ、確定だな。バネッサが持っていた石は何かの鍵になっているのだろう。マーギン、探しに行くぞ」
大隊長が石の秘密を見抜き、全員で石を探しに行く。あの石が遺跡を隠すためのものだと推測したのだ。
プロテクションステップを螺旋階段のようにして、真下に降りた。
「俺とオルターネンは周囲を警戒。みんなは石を探してくれ」
しかし、なかなか見つからない。
「カザフ、お前はどうやって見つけたんだ?」
マーギンは、カザフに石の探し方を聞く。
「え? 普通に探すだけだぞ」
「お前にとっちゃ普通でも、他の人にとっちゃ普通じゃないかもしれんだろ」
「えーっ、そんなことを言われてもなぁ。よく見る、よく聞くしか……」
よく聞く?
「よく聞くってなんだよ? 魔物を探すなら分かるけどな」
「そんなこと言われても分かんねーよ。なんか石の声が聞こえるんだよ」
そういやこいつは、モグラの魔物の音も聞こえてたな。そう思ったマーギンは集音器を取り出し、音を増幅させてみる。
「石の声なんか聞こえないぞ」
「聞こえるっつーか、感じるんだよ」
そんなもの魔導具で分かるわけない。これはカザフの能力なのかもしれん。
「分かった。俺達には無理だ。カザフが探してくれ。俺達は魔物を討伐する」
大隊長とオルターネンが攻撃態勢に入ったのに気付いたマーギンは、石探しをカザフに託し、攻撃に参加したのであった。
そして、日が暮れた。
「あったーっ!」
暗くなったことで、カザフの感覚が増したのか、石を見つけ出せた。
「よくやった。マーギン、出発地点まで転移を頼む」
大隊長がここから離脱すると宣言し、転移魔法で出発地点の遺跡に戻ったのであった。




