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伝説に残らなかった大賢者【書籍2巻&コミックス1巻、発売中!】  作者: しゅーまつ


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おかしい

 慌ててプロテクションステップを新たに作り、ローズを抱っこしたまま気配を探り、みんなを探す。


「おかしい……」


 マーギンが呟く。


「見つからないのか?」


 マーギンにお姫様抱っこをされたままのローズが耳元でささやく。


「ひゃっ!」


 耳に息がかかるのに敏感なマーギン。


「ど、どうしたのだ?」


「いや……ちょっとくすぐったくて」


 そう返事をされて、赤くなるローズ。


「そ、それより見つからないのか?」


「あぁ、気配が探れない。かなり距離があるってことだな。方向を間違えたとは思わないんだけど」


 ローズはその言葉を聞いて、マーギンにしがみついた手に力が入り、強張った顔をした。


「ま、まさか全員死んでしまったのでは……」


「それはない」


 死んでしまって気配がないと想像したローズに対して、マーギンはきっぱりと言い切る。


「あのメンバーが落ちたところで死ぬと思う? 怪我してもカタリーナがいるんだ。何ともないと思うよ」


 言い切ったマーギンの言葉に安堵したローズは、そのままキュッと抱きついた。


「良かった……」


 抱きつかれたマーギンは照れくさいより先に、見つけられない疑問が先にくる。


 ◆◆◆


 ンギャァァァアン。


 大型のラプトゥルが姿を現し、咆哮を上げてオルターネンたちを威嚇する。


「囮だ。周りを中型が囲んでいる」


 大隊長が目の前に出てきた大型ラプトゥルと対峙すると、バネッサが木の上から周りの状況を叫ぶ。


「バネッサ! 後ろだ!!」


「チッ」


 中型ラプトゥルがバネッサの背後から襲い掛かろうとしたのを見て、カザフが叫ぶ。


 ピッ、ピッ。


 バネッサは横に跳んで、オスクリタを投げて牽制して逃げる。しかし、それを待ち受けるように襲ってくるもう一匹のラプトゥル。


 バクッ。


 口を開けて、牙だらけの口でバネッサを食べようしたラプトゥルをスウェイで躱しながら、顎にムーンサルトキックを食らわせた。


 ガッ。ガツンッ。


 顎を蹴られて強制的に口を閉じさせられたラプトゥル。しかし、ダメージはない。


「こいつらヤバぇっ! カザフ、下に降りろ」


 木の上では勝ち目がないと判断したバネッサはカザフと共にみんなの元へ降りた。しかし、下も乱戦だ。大型ラプトゥルは大隊長と対峙し、中型ラプトゥルが大量に出てきたのを他の全員で戦っていた。


 《プロテクション、プロテクション、プロテクション!》


 カタリーナが次々と襲いかかってくる中型ラプトゥルをこっちに近づけさせないように、プロテクションで壁を作って防御。防ぎきれずに襲ってきたものをオルターネンたちが倒す。


 ブーン。


 ラプトゥルと戦っていると、虫の魔物が大量に飛んできた。


「撤退っ! 大隊長を先頭にここを離脱。殿は俺がやる」


 オルターネンがこの場からの撤退を指示し、大隊長が倒しきれなかった大型ラプトゥルを突風で吹き飛ばし、走る。それに全員が続いた。


「アイリス、あの虫の魔物を焼けっ! 焼いた瞬間に全力ダッシュ!!」


 最後尾を走るオルターネンからアイリスに指示が飛んだ。


 後方から大量に飛んでくる虫の魔物はビッグモスキート。麻痺毒を飛ばしてくる厄介な魔物だ。その毒は燃えると気化し、麻痺ガスになるとマーギンから聞いていたオルターネンはあえてその指示を出した。


「はいっ!」


 アイリスは足を止め、ビッグモスキートに炎魔法をぶっ放す。


 《カエンホウシャ!》


 ごうぅぅぅぅ。


 両手を前に出して、まるでドラゴンが口から炎を吐いたような攻撃をビッグモスキートの群れに向かって撃った。


 カッ……ドーンっ!


 ビッグモスキートが一瞬で大量に燃え、体内の麻痺毒が一気に気化して爆発を起こした。


 《ストーンウォールっ!》


 オルターネンが大きな土壁を出して、麻痺毒ガスを含んだ爆風を防ぐ。


「アイリス、大隊長に風魔法を頼んでくれ!」


「はいっ!」


 カッ、ドーン、ドーン。


 一つの群れの爆風が他の群れに引火して、次々と爆発を起こしていく。


 ドサッ。


 アイリスがこの場を離れたあと、土壁では塞ぎきれなかった麻痺ガスがオルターネンを包み、その場で倒れたのであった。


 ◆◆◆


 ドーン、ドーン、ドーン。


 爆発音がマーギンの耳に入った。


「あっちだ!」


 マーギンは瞬時に、アイリスがビッグモスキートに炎攻撃をして、爆発を起こしたのだと気づく。知らずにやらかしたのだとしたらヤバい。全員が麻痺ガスの餌食になったかもしれない。そう思ったマーギンは、プロテクションステップをスライダーにして、ローズをお姫様抱っこしたまま、音と煙が上がった方向へ一気に進んだ。


 しかし、


「なんだよこれ……?」


 煙の上がった方向に進んでいるはずなのに、近づけない。そして、視界の前方から横にズレる。何度も方向を調整するのに、煙上がっている方向から横へ横へとズレる。まるで360度カメラの撮影しているかのようだ。


 マーギンはさらにスピードを上げると、あまりの速さにローズが強くしがみつく。


 サワサワっ。


 しがみついたローズの髪がなびいてマーギンの耳をくすぐる。


「ウッヒャヒャヒャヒャッ」


 緊迫した状況だと言うのに、マーギンの力が抜けてローズを落っことしそうになる。


「きゃぁっ!」


 ずるん。


 落ちかけたローズはマーギンに抱きつき、マーギンはローズを落とすまいと、ぐっと腰を沈めて抱き寄せた。


 ポン。


 マーギンは足を伸ばして座り、ローズが正面から抱きつき抱っこをされた形になってしまった。


 凄いスピードでプロテクションスライダーを滑っているのに、時が止まったかのように見つめ合う2人。


 そして二人して赤くなり、ローズは恥ずかしくてマーギンにキュッと抱きついた。


「ローズ……」


 ざわっ。


 マーギンのいる場所の近くの森が一瞬ざわめいた。


「えっ?」


 その瞬間、プロテクションスライダーが消えた。


「うわぁぁぁぁっ」


 プロテクションスライダーが消え、落下しながら叫ぶマーギンに対して、目を閉じてマーギンにしがみついているローズは落下に気づかず、この不思議な感覚を消化できないまま、強くマーギンに抱きしめられるまま、身を委ねたのであった。




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やはり、ここにいるのだな……
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