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7 トキメキ心房細動

『今のはときめいただろう?!どうだ、サラ』


興奮気味に話しかける神様の言葉に、サラは首を傾げた。


「トキメキってなんですか?ときめくってなんですか…?」


『心臓がキュンってなることだ』


心臓がキュン…?それは、心房細動ではないのか?競走馬時代のサラは健康優良児だったので、心房細動を経験したことはない。


だが、レース中や調教中にそれを発症するとかなりきついらしい。


「神様…私、一生トキメキたくないです」


『乙女ゲームのヒロインがめちゃくちゃなこと言うな!ていうか、心房細動とキュンは違うから!』


心房細動と違うキュンとは、一体なんなのだろう。


ふいに誰かが優しく頭を撫でてくれた時の記憶がよみがえる。心地よさの中に、どこか心臓がかき乱されるような気持ちが混ざって…。


ー「サラ。君に会えて僕は幸せだ。君は僕の人生を変えた馬だ」ー


誰かの言葉を思い出す。私の記憶の中にたびたび登場する、あなたは誰なの?


「神様…やっぱり私、何かを忘れていますよね?」


『ん?まー…馬だし記憶力がなくても仕方ないよね』


神様は時々何かをはぐらかすような態度を見せる。絶対に何か大切なことを忘れてしまっているのに。


私はそれを思い出したいのに、神様は思い出させないようにしている。気がする。


誰かを疑うことなど人生(いや、馬生?)で初めてだ。初めての相手が、まさか神だなんて。


『そんなことより、王子のせいでサラに注目が集まってるぞ。アフィたんもまた怒ってる。かわいいね』


確かに先ほどからものすごく鋭い視線が突き刺さっている。アフィシャージュはギリギリと音を立てそうなほど歯をかみしめていた。


「へえー、殿下が自分から興味を持つなんてね」


ルクールはサラの全身を一瞥した。


「俺も君に興味が湧いた。もし運命であるのなら、また近いうちに会えるだろう」


ぱちんとウインクをするルクール。教室の女子たちから黄色い悲鳴が上がる。


「か、神様…なんだかぞわぞわします。心が落ち着かないです。鳥肌が立ってるんですが…これがキュンですか?」


『たぶん違うな…イケメンのウインクにドン引きするのやめてくれないか?』


神様がしきりにルクールのことをイケメンだと言うので、ぼんやりとしか見ていなかったご尊顔を見てみることにした。


なるほど、確かに整っている。吊り上がった目はきつい印象を与えるよりはむしろ色気があり、長いまつ毛が瞳の美しさを際立てている。主張が強すぎず、けれどもしっかりと通った高い鼻筋。唇は決して厚くはないが、やはりどこか色気を感じさせる。


「なるほど、これがイケメンですか…」


『ときめいたか?』


「いえ。人間がなぜイケメンを好むのか、余計に謎が深まりました」


サラにはイケメンの良さが分からなかった。


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