運命の火
変化が起こる日というのは、いつだっていつもと変わりのない、ごく普通の、ありふれた日から突如始まる。
時は数時間前に遡り、月界警備軍総隊長の『朔』は予ねてより調査にあたっていた疑惑が事実であることにたどり着き、単独の調査に乗り込んでいた。
今は亡き『金満』が生前、失脚の決め手となった大会議において【靈光泉の課税制定】という言葉を出したこと。そして当の本人でさえ、今初めて知ったと言わんばかりの反応をしたのが彼の心を捉えて離さなかったからだ。
靈光泉は月界全体を巡るエネルギーであり、生命線である。
仮に止めたとなれば、国も人々も全て死に絶える大量虐殺となるため、今日まで万国万人に平等に無償で供給されていた。
その生命線が独裁者の手の内に収まってしまえば、国民は屈服以外の手段がなくなってしまう。
輝夜の母『月魄』を探しに向かった部下に代わって朔は調査の末に割り出した、秘密の場所へと向かっていた。
そこは月界で最大規模の港にある倉庫。
カモフラージュを幾重にも重ね、言われなければ見向きもしない場所に隠された階段を下る。
薄暗く長い廊下を突き進み、最奥の開けた広間に着くと朔は言葉を失った。
広間の中央には、無数の管に繋がれた巨大なガラス玉の中に淀み一つとない瑠璃色の液体【靈光泉】が収まっていたからだ。
(……本当にあった……! 間違いない、これは紛れもなく靈光泉そのもの! 量や貯蔵庫の造りからしても、これは政府が関与しているとは思えない。急ぎ報告をしな━━)
記録用のカメラを表示させようとしたそのとき、朔の右肩に強い衝撃が走る。
見ると彼の右肩から、頭ほどの大きさをもつ鋭利な刃が突き出ていた。
朔の小柄な身体が宙に浮き、力なく刃を伸ばした張本人の元へと引き寄せられる。
武器と思っていた刃の正体は尻尾だった。
深淵の奥から現れる異形の存在。
体長はゆうに十メートルを越え、メタリックな黒の体色をし、長く太く逞しい腕の先にある手の指は鎌のように長く、鋭い。昆虫と人が混ざったような独特すぎる見た目の巨大生物は、朔を目の敵にしているかのように歯軋りをしながら睨む。
「火遊びが過ぎたな、朔」
巨大な生物の背後から悠然と歩いて来る一人の影。
着けられていたことと予想が完全に的中したことに、朔は怒りの感情を露わにする。
「……神無! それに神刺! ……やってくれたなお前ら。あの金満以上の暴挙! 本当に靈光泉を独占していたとは!」
「誰が口を開いていいと言った!」
変身した神刺は突き刺した朔を勢いよく壁へ投げつけた。
変身を解いた彼女の額には青筋がヒクヒクと動いており、並ならぬ怒りを隠すことなく前に出している。
「前々から神無様の周りをハエの如く徘徊しやがって……ガキだからと調子に乗っていたな? 貴様……ッ!」
咳き込みながら起き上がろうとした朔へ、神刺は何の躊躇いもなく鋭い蹴りを叩き込んだ。
息が止まり、朔の体内で臓物が込み上がってくる不快感が彼の身を襲うが、神刺は烈火の如く殴る蹴るの暴行を加えていく。
「もとより、路傍のゴミにすら劣るお前らが、神無様の御許可もなく醜い面を上げて堂々と表を歩き! 身の程も知らずにのうのうと生きるお前ら皆んな死ねっ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねッ!!」
狂っていた。
タガが外れて罵倒と暴力を振るう彼女は、完全に頭に血が上って我を忘れている。
だが、神無を至上の存在として崇め奉る神刺からすれば、朔のような反乱因子こそが異常であり、今の彼女は彼女にとって正常そのものなのだ。
「そこまでだ神刺。朔を殺せば後々が面倒になる」
神無の一声を聞いた途端、神刺はピタリと動きを止めて朔から離れた。
顔は膨れ、口からは血を垂れ流し、虫の息である朔の髪を、神無は鷲掴んで様子見する。
「神刺、例の学園の生徒、教職員、及びその家族どもが乗った船が見つかった。至急向かい、全員逮捕せよ。逆らう者は始末して構わん」
「畏まりました、神無様」
先ほどまでの狂暴さが嘘のように冷静に返す神刺は、踵を返して現場を離れていった。
二人だけとなった空間で、神無は片手の腕力だけで朔の服を破り捨てていく。アザだらけの身体を見ると、神無は軽く舌打ちして苦々しく朔の華奢な身体を見回す。
「神刺め、やり過ぎだ。これでは分かり難いではないか」
「な……に……を……する……」
「致し方ない。それならそれで別のやり方にしよう」
言い終えるや否や神無は思いきり朔を殴りつける。瀕死の状態であった朔は微睡の中へ溶けるようにして意識を失った。
※
所変わって場所は月界の辺境地。電光一つとない自然あふれる山中の大川に一隻の船が泊まっている。
雷花と月島が勤めていた学校の全校生徒とその親族。並びに教職員と家族が乗った避難用の船内は、ミイラとなった遺体が床一面を覆っていた。
幼い生徒から失血死寸前だった校長まで、老若男女の垣根を無視したおびただしい遺体の数。
生き残っているのは当初の四分の一ほどで、これから殺されるかもしれない状況下だというのに、生徒とその両親たちに表情はまるでない。
例え目の前で自分の友だちが生き血を吸われ、干からびていく様を目の当たりにしてもなお、一同は声も上げず、恐れもしない。
「んはぁあああぁぁああっ! やっぱり子どもの生き血はたまらないわ! もっと! もっと飲ませてちょうだい!」
禍々しく生えた悪魔のような二本角。紅に光る目。人の頭を丸々齧れるほどに開く口。血に塗れた口の内部は鋭利な牙が幾つも生え揃い、口の外にすら牙が飛び出している。
異形の姿を露わにしながら貪欲に血を啜る神楽の精靈『アザミ』の傍らで、同じく神楽の精靈スイレンが従える亡霊たちが柄にもなくオロオロしていた。
計画上の必要な犠牲者数をとうに上回ってなお、アザミは暴飲を止めないからだ。
意を決した亡霊の一人が止めに入るが、アザミは酷く不機嫌そうに振り返り亡霊たちに迫る。
「なあに貴方、食事の邪魔する気? いい度胸じゃない。それなら代わりに、お前を喰ってやろうか?」
血塗れの鋭利な牙を見せつけるように口を開いて威嚇するアザミに、亡霊たちは恐れ慄く。
しかし無理もない。彼らは日本で起きた旅客機事故によって亡くなった一般人でしかなく、霊になって間もない。
対してアザミは悪霊になってから長く、天月人の能力に加え他の精靈同様、邪霊の力すら有している。どちらが上なのかなど比べるまでもない。
「……なーんて、冗談よ。冗談。仲間じゃない。そんなことするわけ、ないでしょう?」
牙を引っ込めて朗らかな少女の笑みを浮かべるアザミ。だが亡霊たちは気が気ではない。向けられた殺気と敵意は紛うことなく本物だったからだ。
するとアザミは弾かれたように振り返り、口角を吊り上げた。
「あぁ……来たわね。貴方たち、スイレンを呼びなさい。この子たちをよろしく頼むわよ」
そう言うとアザミは船外へ出ると負傷した姿へ変身し、よろめきながら歩いていった。
先には神刺と複数人の部下たち。アザミの姿に気付くと部下たちは皆一斉に獲物をアザミに構える。
「た、助けて! 誰か、誰か! 助けてえ!」
「神刺様、例の学園の生徒ですが負傷しているようです。いかがされますか」
何も知らない神刺の部下たちは、幼い少女に警戒することなく神刺からの指示を乞う。
しかし神刺は違った。
「終符……『神切蟲』」
朔を刺し貫いた昆虫と人が混ざったような姿へ変身すると、有無を言わさず尻尾の刃でアザミの腹部を突き刺した。
「……んー? ……どうしてバレたのかしら?」
「阿呆が。人の身でありながら霊気を発せる者がどこにいる」
刺されても意に解さないアザミを地面へ叩きつけると、断頭台の如く刃を振り下ろしてアザミを斬ろうとした。が、アザミは間一髪のところで流れるように避ける。
睨み合う二人。剥き出しの敵意が周囲の空気を刃の如く鋭いものへと変える。
「精靈、殺す前に聞くが、誰の差し金だ? 言え」
「言えと言われて素直に応える訳ないでしょう」
人の叫びと蛇の鳴き声が混ざったような声を上げて鞭のように尾で地面を叩くと、後続の部下たちが光線銃を発砲した。
可憐な少女から異形の悪鬼へと変わったアザミに向かう幾筋もの光線は、アザミの身体をすり抜け奥の船底を貫く。
効果がないと判断した神刺は咆哮を上げて発砲を止めさせると、巨体に不釣り合いな速さでアザミへと向かった。
「んん! いいわよいいわよ! 食後の水菓子なんて気が利くじゃない!」
まるで恐れていないアザミだが、彼女の抱いた期待は叶わなかった。
神刺が目前まで迫った瞬間、スイレンの有する亡霊が密かにアザミへ耳打ちをする。
アザミが小さく舌打ちをした直後、神刺の薙ぎ払われた尾刀がアザミの胴体を横に切り裂いた。
水風船を壁に叩きつけたような音を立てて船尾にぶつかり、力なく地面に落ちたアザミの上半身を神刺は容赦なく踏み潰す。
「何のマネだ貴様。何故戦わん」
「ええ、私も非常に不満ではあるけど、ここでお開きよ。もう準備が済んだからね」
意味深な発言に訝しんでいると、神刺の真上に一つの影が翻る。
双眸に殺意を込めながら音もなく振り下ろされる刃に、神刺は頭部を斬られて大きくのけ反った。
後続の部下たちが降りて来た影に向かって発砲しようとするも、周りから飛び出した闇によって雁字搦めになり、追撃はとうとう叶わなかった。
「その異形の姿……貴女、神無の側近の神刺ね? 一体何をしているのかしら?」
影の正体は『冥』だった。
鋭い殺意と敵意を向ける冥に神刺が威嚇をすると、船の方から幼い声が届く。
「冥様! 晶濟さんが、船内は老若男女の遺体で埋まっていると言っています!」
冥の従者である少女『風香』の報告を聞いて、神刺は自分が嵌められたことを悟る。
先に踏み潰していたアザミは物言わぬ遺体━━のフリ━━となっていた。
(やられた……! あの駄霊め、これが狙いだったか!)
「……三月皇の側近が虐殺とは……いよいよ本性を隠さなくなったわね、アンタら! もはや語るに及ばず! 覚悟!」
有無を言わさず冥は神刺に向かう。
大木を薙ぎ倒し、大岩を砕く必殺級の威力を持つ神刺の攻撃も、俊敏に動く冥には余裕で避けられる。
大ぶりな攻撃故に隙も大きく、その隙を冥は見逃さない。
両手に持った両刃のレーザーブレードが神刺の身体を少しづつ斬り刻み、メタリックな身体から紫の血が噴き出ていく。
分が悪いと感じた神刺は見た目に似合わぬ跳躍で後退すると、身体を筋繊維が露出した赤い筋肉質な人形へと姿を変えた。
大型の姿とは打って変わって冥以上の素早さになり、木々を足場にして縦横無尽に駆け回って攻撃を繰り出す。
(コイツの能力は変身する能力なのは間違いないけど、初符と終符のどちらも変身する能力なのかしら? それとも一つの能力に複数の変身形態を持っていて、終符は別のもの?)
俊敏に動く神刺を目で追う冥。
隙を見つけて死角から飛び出した神刺の身体から、赤く鋭利なトゲを無数に飛び出させ、手には身体の丈と同じほどの鎌を作り出して冥の首を跳ね飛ばそうとした。
しかし神刺の相手は、今回に限っては最悪だった。
時は夜。天地を夜闇が染める世界は冥の独壇場。
飛びかかった神刺を周囲の暗部から無数の闇が止めにかかる。
クモの巣が幾つも重なったような隙間のない闇の糸に、神刺は完全に動きを止められてしまった。
「まあ、動けなければどっちだろうと変わりはないわね。さて、神刺。私だって鬼じゃないわ。大人しくお縄につけば、少なくとも私は貴女の命を奪わないわ」
「……貴様、月宮解放軍の者か。噂に違わぬ凡愚どもめ。少し考えれば船内の所業が誰のものか判別できるというのに」
「御託は結構。それで、どうするのかしら」
「生憎だが、私たちは虐殺などしていない。嘘だと思うなら生存者にでも聞いてみろ」
神刺も連れの部下たちも日頃の行い故に疑われても仕方ないが、今だけは謂れのない罪を被せられた身。
信じようとしない冥をよそに、船内にいた生き残りが風香と晶濟に連れられて続々と出て来る。
神刺も部下たちも初対面の生徒と教師と、その親御たち。
だが生徒たち一行は冥が問い掛けると、親の仇と言わんばかりに全員が神刺を指差して声を荒げた。
「アイツ! アイツがぼくたちの友だちを殺した!」
「わたしたちの目のまえで、せんせいも友だちも、みんなあの人に殺されたの!」
「さわいだら殺すって言われた!」
「神無さまにさからった、おまえらがわるいって……いわれて……みーんなあのひとに、ころされた!」
「この畜生女! 人でなし! 子供たちばかりでなく親御さんまで手にかけるなんて! お前なんか地獄に堕ちてしまえ!」
神刺と部下たちは愕然として言葉を失った。
しかし無理もない。皆が皆口を揃えてありもしないことを声に力を込めて言うのだから。
神刺はアザミが冥たちと連んでいると判断したが、事は矢継ぎ早に起こる。
上流の方から明らかに人口の光がポツンと浮かび上がり、徐々に強さを増していく。その光源の正体は月宮解放軍の調査船だった。
神刺に焦りが生まれ、終符である昆虫と人が合わさった巨大な姿へ変身し、冥の束縛から逃れようとする。
相手は現政権を目の敵にしている集団。中立な結果など望めるわけがない。ましてや凄惨な虐殺から生き延びた生徒とその両親が、異口同音に神刺たちを非難するのなら、もはや釈明の余地なく有罪にさせられるのは火を見るよりも明らかだ。
「ちょっと! 大人しくしなさいって!」
「離せ! 貴様らの茶番に付き合う暇はない!」
「茶番? 何のことか知らないけど、大人しくしなさいっての!」
冥は魔力を込めて神刺を封じる闇を増強させる。
調査船の光がどんどん強まっていく。逆光の中に垣間見えたのは、違法に改造された携帯銃を持った解放軍員が船頭に三名。規模からすれば内部には数十名いるのは確実。
いくら神刺といえど多数に無勢なのは嫌でも理解出来る。
「……お、おのれ……あの糞駄霊め!! 私にこんな! こんな恥辱を与えるとは! ……神無様……申し訳御座いません!」
すると神刺の身体から黒い煙が昇り始めた。
火特有の焦げ臭さより、腐臭に似た不快な臭いに冥はいち早く煙の正体を掴んだ。
「……な、あ、アンタ。まさか暗符を!? この大バカ野郎!」
冥のレーザーブレードが、縛る闇ごと神刺を十字に切り裂く。
敵も味方も関係なく無差別に危害を与え、コントロールは本人にさえ不可能である暗符の発動は、神刺の絶命によって直前で防がれた。
煌々と光る切痕が輝きを失うと、溜め込んでいた血が辺りに撒き散り、夜闇に染まる川の色を一層濃くさせていく。
神刺だった肉塊は重い音をたてて地面に転がり落ちた。
二つに分けられた頭部は短時間でグズグズに歪んでいるが、口元の部分は底知れぬ憎悪の叫びを今にも大声であげそうな状態で時を止めていた。
「冥さん、大丈夫ですか?」
晶濟が駆け寄ると、冥は大丈夫と返して後から寄って来ようとした風香と共にその場を離れた。惨たらしい姿は風香に見せるべきではないと配慮してのことだ。
調査船からは続々と解放軍員が降りて生存者の確保にあたり、次いで船内の調査へ数名のメンバーが向かっていく。
「晶濟、聞きたいのだけど船内の遺体はどんな感じだった?」
「どんな感じ、とは?」
「バラバラに殺されてたのか、腹とかを刺されて殺されたのかとか、そういう意味よ」
「……干物みたいでした。体内の血というか、体液全てが抜かれて……風が少し吹けば乾いた音が出るほどでした」
「冥、そんな所で何をしている。急ぎ首都の方へと戻って本隊と合流してこい」
割って入ってきた別のメンバーから突拍子もなく出た命令。冥が聞くと、首都の方で衝突があったと言う。
怪訝な顔の冥はすぐには向かわず、悲劇の舞台となった船内に一人で向かった。
晶濟の言う通り船内へ入ってすぐに、干物のように乾いた遺体が無造作に廊下へ捨てられている光景が出迎えてくれた。
調査用の手袋をつけ、悲しくなるほどに軽い遺体を持ち上げて調べていると、妙な部分に目が止まる。
(これは噛み跡だわ。だけど……神刺の、というか人の歯列じゃない。獣でもこんな無数の歯列を残す種はいないわよ)
他の遺体も皆同じだった。アザミ一人の手によって殺されたのだから当然ではあるが、それがかえって神刺たちの関与を疑わしいものへと向かわせていく。
(なにか変だわ。神刺と、神刺の部下を合わせても、全く同じ歯列を短時間で残すことなんて出来るわけがない。……となると……神刺ではない別の誰かがやった? 神刺らは本当に何もやっていなかったの?)
「よう、何か気になることでもあったかい」
我に帰った冥が振り向くと、冥よりも背丈のある落武者のような見た目の細長い男が立っていた。
「あ……貴方は?」
「銀皇だ。兄の赫皇が祭りの最前線に出てるんで代理で来た。それで? どうしたんだ」
解放軍のリーダーである赫皇に弟がいること自体初耳であった冥は、呆気に取られつつもことの詳細を話した。
「━━以上のことから、この船内にある遺体を、全て検死にかけるべきと思ったのです」
「……なるほどな。分かった、手回ししとこう。で、他の奴から聞いているだろう? 早く首都の方へ行った方がいいぜ」
「首都の方で何が起きたのですか」
「革命だよ。いよいよ神無もお終いさ。お前も早く行きな。祭りに乗り遅れるぞ」
それは待ちに待った改革の日のはずだった。
しかし冥は言い知れぬ不安と胸騒ぎを覚えていた。
目の前に立つ銀皇の目は夜闇に染まった山間の闇よりも深く、改革とはまた別の野心にギラついているように見えたからだ。
しかし立場上言い返せない冥は、晶濟たちを連れて首都の方へと向かって行った。
その様を蠱惑で妖艶な色白の美少女の姿になったアザミが、木の上から黒煙が立ち込める首都の方と交互に見ていた。
「さあ、大詰めよ。私たちのために最後まで頑張りなさい」




