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その3 シロエの教え 


 ガイドセンターはアキバの広場に面していた。ベーカリーショップから少し歩き、ガラス張りの立体歩道の下を通り抜けて黒いビルへと向かう。通りに面したガイドセンターの入り口は広く、他のプレイヤーがたくさんいても楽に中に入ることができた。


「いつもすげーなぁ」

「そうだね。えっと……こうかな?」

 ミノリはカウンターの中にいるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)をカーソルで選択し、コマンド画面の〈話しかける〉をクリックした。

 淡いブルーの髪をしたNPCの女性は、あずき色の瞳をぱちぱち瞬かせると選択肢を表示した。


 ミノリはその中の〈クエスト内容を見る〉をクリックした。

 画面が一瞬暗くなったあと、現在攻略可能なクエストが4種類表示される。

「よし、これで〈小雀の守り鈴〉を選んで……と」

 ミノリはクエスト名をクリックしてさらに先に進んだ。

 するとクエストの内容と必要なアイテムの説明が表示された。必須アイテムは、保護した小雀を入れる鳥かごだけだった。

「鳥かごだけ買えばいいみたいだね。……よし」

 シロエはクエストの内容をあらためて確認して、頭の中で段取りを組んだようだった。

「よし、アイテムショップに行こうよ、トウヤ!」

「うん!」


 三人は隣のアイテムショップで鳥かごを購入した。

「鳥かごは、ミノリが持つといいんじゃないかな。トウヤは前で戦わなくちゃいけないからね」

「そうですね。じゃあ私が持ちますね」

 ミノリは小さな鳥かごを片手に持った。

「兄ちゃん、これで冒険に行けるんだね!」

「あ、ああ。そうだね」

「いよ〜し!モンスターをやっつけに行くぜ!」

「トウヤ、先に雀を探さなくっちゃ」

「うん。わかってるって!」


 三人は、傷ついた小雀を探してアキバの街を歩きだした。

 トウヤのポリゴンモデルはミノリとシロエのまわりを駆け、先になったり後になったりしながらついてきた。回りのポリゴンモデルは自動的に回避できるから問題はないが、ミノリはついはらはらしてしまう。


「トウヤ、ちょっとは落ち着きなさい!」

「ええっ、ミノリは冒険に出るの嬉しくないの?」

「嬉しい、けど、トウヤははしゃぎすぎだからっ……すみません、シロエさん」

 ぴょこぴょことミノリのポリゴンモデルが頭を下げるのが面白かったのか、くすくすとシロエの笑い声が聞こえた。


「大丈夫だよ、トウヤがすごくクエストを楽しみにしているのは、僕もよくわかるんだ。僕が初めて〈エルダー・テイル〉をプレイしたのも、トウヤと同じぐらいの年齢のときだったからね」

「そうだったんですか」


 そしてシロエは、親から勉強のためにパソコンを買ってもらったこと、インターネットの海を旅していろいろな事を調べる楽しみを覚えたこと、〈エルダー・テイル〉をプレイするようになって、たくさんの仲間と出会えたことを話してくれた。


「僕は……〈エルダー・テイル〉はもうひとつ別の現実だと思うときがあるんだ。プレイヤーはみんな生身の人間だし、だから人間関係もある。この世界で身につけた知恵は、元の現実世界に戻っても役に立つことがたくさんあるんだ」


「たとえば、どんなことですか?」

「一番わかりやすいのは、チームワークかな。一人じゃ倒せないモンスターでも、みんなで力を合わせれば倒すことができる。大人になってからでもそうなんだ。一人じゃできない仕事だって、みんなでやれば完成できるんだ」

 そしてシロエは、自分や仲間の"強み"を見つけること、そして連携プレーを取ってお互いの"強み"を生かすことも大事だと話してくれた。

 ミノリは、シロエがとても大切なことを話してくれているのだ、と強く感じた。一生懸命に鉛筆を走らせて、シロエの言葉をメモに残した。


「あっ……ミノリ!あれって雀かなぁ?」

 トウヤが不意に、声をあげた。




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