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その4 雀をつかまえた!

「あれって……どこなの?」

「ここ。鎧屋さんのショーウィンドウの前だよ」


 ミノリは隣のトウヤのディスプレイをのぞきこむ。トウヤのディスプレイにはアキバの商店街にある鎧屋がアップで映っていた。店先にいくつか鎧を飾ってあるその足元に、ぱたぱたと羽ばたく小さな茶色い生き物が見えた。小雀に間違いなかった。


「よし、行こう!」

「うん」


 ミノリは自分のディスプレイの前に戻ると、トウヤを追いかけた。シロエはあとから黙ってついてきてくれている。

 しかし、早足で近づいた三人の気配を察知したのか、小雀はぱたぱたと逃げてしまう。


 怪我をしているせいかあまり高くは飛べないけれど、地上30センチくらいの高さを滑空してゆく。ときどき、ショーウィンドウにぶつかってばたばた暴れながらぽたり、と地面に落ちるのが可哀想だ。


「んんっ?街の中じゃあ武器も魔法も使えないし……どうやってつかまえたらいいんだ〜?」

 トウヤが困って声をあげる。


「武器じゃないものなら、拾って使えるアイテムがあるかもしれないよ?周りを少し探してごらん?」


 シロエがヒントを出してくれる。


「アイテムって…」

「これ?」


 よく見ると、街の細い路地にいろいろなものが落ちていた。壊れたモップの柄、15秒に一回止まる扇風機、空になったペットボトル……。カーソルをあててみるが、どれも小雀を捕獲するには使えないものばかりだった。


「うーん、こんなの使えないね」

「待って、ミノリ……これは?」


 トウヤは壁に立て掛けられている段ボール箱を見つけた。カーソルをあてると、〈持ち帰る〉〈組み立てる〉と選択肢が出た。


「よしこれを組み立てて……っと」


 組み立てると、ポリゴンモデルと対比してミカン箱くらいの大きさになった。

「よし、これで雀を捕まえてみよう!」

「うん」


 箱を持って近づくと、不思議なくらい雀がおとなしくなった。上からすっぽりと箱を被せると、〈籠にうつしますか? Yes/No〉と選択肢が表示された。


「やったあ!!」

「つかまえたっ!」


 ミノリは、横に置いた時計を見た。8時32分。まずまずのペースだった。


「よし……次は、草原でモンスターと戦って、薬草を手に入れよう!」

「がんがん行くぜ~!」

 トウヤはすごく嬉しそうだった。



  ◆




「今のうちに指示出ししておくね。フォーメーションは直列で。トウヤは〈刹那の見切り〉〈受け流し/クールディフェンス〉の運用を心がけて。ミノリはトウヤから離れすぎないように……」

「はい!」

「了解だぜ、兄ちゃん!」


 シロエの指示を受けながら、アキバの街のゲートを出る。〈ソトカンダの大草原〉の空はくっきりと青くて目にしみた。〈エルダー・テイル〉内の時計は午前10時を指していた。

 昼間だから、周りのようすもよく見える。MAP上にはモンスターの姿はなかった。


「ミノリ、薬草の近くにモンスターがいる、って書いてあったよね」

「うん」

「早くモンスター出てこないかなあ?」

 モンスターに勝てば薬草が手にはいる、とゲームのガイドブックには書いてあった。トウヤはかちかちと視点を切り替えて歩いているようだった。


「モンスター、かぁ」

 モンスターが出現するまでの間が、ミノリは少し苦手だった。戦闘になってしまえばひたすらトウヤを守るために障壁を張り、HP・MPの管理をして、回復と援護攻撃をするだけなのに。

 いつ敵が現れるかわからない"待ち"の時間は、緊張状態が続くので辛かった。


 それに……。

(どうして、モンスターと戦わなくちゃいけないんだろう?)

 トウヤはなんの疑いもなく"モンスター"を"敵"だと思って戦っているが、ミノリには疑問があった。

(私たちが近づかなければ、モンスターだって襲ってこないんだし……。アイテムを手に入れたり、レベルを上げようと欲張らなければ、それほど戦う必要はないんじゃないかな)

 ミノリは、"戦うことによってレベルを上げること"に夢中になり過ぎる自分に居心地の悪さを感じていた。

(強くなくちゃ、トウヤを守れない。強くあってこそ、仲間を、そして自分を守れるのは解るけれど……。戦うだけじゃ駄目なんじゃないかな)

 けれど、ミノリの思いはそこから先に進むことができなかった。まだ14歳という年齢では、その先にある答えまでは遠すぎて、たどり着くことは難しかった。

「静か、ですね」

 小魚が跳ねる泉があったが、その周りにはモンスターはいなかった。

「うん、そうだね」

「いきなり、角を曲がったら出てきたりして……!うわっ」

 トウヤはふざけて言ったのだが、小さな岩山を回ったところでその言葉が現実になった。

 モンスターが現れたのだ。



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