Epilogue 平和な休日
燦々とした日差し。
レジーナが帽子越しの空を見上げる。
「ママー!」
アドリアナがよそ行きのワンピースを揺らして、駆けてくる。
「ママがお休みで、リアナうれしい! ママ大好き!」
「ママも、リアナ大好きよ! たまには、ママも休まなきゃね」
レジャーシートの上の手作り弁当(アグナード作)を、つつきながら、
二人は笑顔の花を咲かす。
アグナードは、近くの木に背をつけて、寝ている。
「も〜パパったら、だらしなぁい!」
「パパは朝早く起きてお弁当作ったして、疲れてるのよ」
「お仕事は?」
「そりゃ、お仕事はもちろんよ。パパは現場や育成で大変なのよ」
「ふ〜〜ん? でも平でFでしょ?」
「平? F? リアナ、あなた何か勘違いしてない?
確かに昔みたいな最前線の伝説級ではないけど。
FはフロンティアのFよ」
「? それって、すごいの?」
「ものすごくね!」
寝たままアグナードを見て、リアナは驚いた声を出す。
「え〜〜! パパって、そんなすごいの?」
こっそり起きていたアグナードは、そっと口角を上げる。
(褒めろ、もっと褒めろ!)
「でもさぁ、エルくんの方がすごいいよね? お屋敷に、ドラゴンさんのお部屋を作ったって!」
(がくっ。またエルか……)
「あなた」
レジーナがいつのまにか、そばで笑っている。
「リアナを助けてくれて、ありがとう。
惚れ直したわ」
「お、おう……」
しかし、噂をすれば影がさすというが、本当にエルウィンがドラゴンと
現れた。
「え、エルウィン?」
「あ! エルくん」
アグナードが慌てる。アドリアナが喜ぶ。
「そ、その節はどうも……。ドラゴンの散歩ですか?」
メイドに挨拶をするレジーナ。
「ま、そんなところです」
「エルくん、大好き! 大好き! 大好き!」
アドリアナが、エルウィンに抱きつく。
「大きくなったら、リアナ、エルくんのお嫁さんになる!」
「え……。り、リアナちゃん?」
「おい」
アグナードが起きてくる。
「だ・め・だ! リアナはやらん!」
「ちょ、アグナードさん、怖いです」
邪神竜が、割り込んできて、エルウィンを守る。
《エルに、手は出させん》
「んだと⁈ リアナから手を引け、エル!」
「も〜〜何言ってんの! パパ!」
「あははは!」
「ははは」
次の瞬間、レジーナやアドリアナから笑いが起こる。
だが、アグナードと邪神竜はまだ睨み合っている。
エルウィンは困り顔。
「エルウィン! お前は誰が好きなんだ? 言ってみ」
「え……そ、それは……」
「なんだ、その間は? まさか、おまえ! リアナの他に……?
リアナのなにが気に入らないんだ?
「ぼ、僕はどうすればいいんですか!」
「は、ははは」
「わはははは!」
《ハハハ》
みんなの笑い声が風に舞って運ばれていく。
青い空に、雲。そして、よく見ると、優しい細い月。
ひとしきり騒ぐと、アグナードはまた、木にもたれかかって、寝息を立て始めた。
たまには、こんな日もいい。




