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年越しまでの話

新しい季節が始まりまして、皆さま、お身体にかわりはございませんか?

新生活の息抜きに、読んでいただけたら幸いです。

「あら、新しいジャンパー、格好いいじゃない。」「頂きものっす。」ジャンパーをアウターとは言わないコンビニオーナー兼店長の奥さんであるオーナー夫人は、レジ横の蒸し器に肉まんを並べながら、店に入ってきた自分を出迎えてくれた。すぐに着替え、カウンターに出る。「うちのコンビニの肉まんって、攻めてるっすよね。」年末年始の期間限定商品に、肉まんの新商品がラインナップされている。その名も“お年だマン”。中身がランダムになっていて、キャッチコピーは『貴方に幸運を。大人も子供も食べてビックリお年玉』。中身はそれぞれ、とろける長ネギに染みジュワ角煮と、ニンニク生姜たっぷりジューシー豚ミンチ、とろっとカスタードとほろ苦カラメル。で最後は、「お節の中身っすもんね。」ふき、タケノコ、えび、いか、紅人参、椎茸が包まれていて、一見、中華まんの中身ならありそうな具材だが、味付けは和風出汁。なかなか好みが別れる仕様だ。ついでに肉まんの生地には黒豆が練り込まれている。

「私は、意外といけたわよ?」「えぇ?大人っすね。」「腹に入ればみな同じ。」そんな話をしながら、いつもの掃除と品出し。冬場の冷凍食品を補充するのは、ことさら辛いがよく出る商品の一つだ。寒いから出たくないので買い置きしておこう。急な来客に出す一品に買っておこう。って事らしい。お節の注文もすでに締め切り、店内も、商店街も、一年の締め、年越しの準備を始めている。

変わらないのは自分だけなようで、物悲しさがある。「前も言ったけど、お正月の三が日、入れるのよね?大丈夫?」「はい。予定ないっすし。」「うーん、それはそれで問題よねぇ。」夫人は困り顔でフゥーと息を吐いた。


昨日は、少し遅めの昼食にみっちゃんがデリバリーピザをとってくれ、それを食べた後で三人で二階の荷物を片付けた。と言っても服はハンガーにかけ、プレゼント類は箱から出し、紙袋と空き箱を処分した。それだけでスッキリし、乱雑に置かれた物が分類されて、寝るスペースが広く取れた。掃除機をかけ、布団を窓辺に広げる。「暫くこうしておきましょ。そしたら寝る時、気持ちいいわよ。」短い冬の日差しではあるが、多少でも布団をふんわりと膨らましてくれるだろう。

「あー、疲れた。今日は掃除するつもりじゃなかったのに。」みっちゃんは首を回しながらぼやいた。「今年の正月みたいに、ソファで折り重なって寝たいの?」と、たくやさんに横目で見られながら釘を刺されるみっちゃん。「美男子ならやぶさかじゃないわ。」「ウチらの店に美男子が来るワケないじゃない。バカね。」たくやさんは呆れ顔で、店の鍵を閉めた。みっちゃんには、買った野菜や肉等が入ったエコバッグを持ってもらい、たくやさんは小型の電気ストーブを持ち、自分はリュックと冬服の入った紙袋を自転車のかごに乗せ、三人仲良くアパートを目指す。「すんません、持って貰って。」「いいよ。お陰で部屋が片付いたし。」「毛布は、車じゃなきゃ運べないわね~。」「あんなにあるとはね…。」荷物を片付けていると奥から、別の圧縮袋に仕舞われた複数枚の毛布が出てきた。たくやさんも知らないそれは、みっちゃんが店を開いたばかりの頃に購入していた物で、荷物の山に埋もれていた。元来、いい加減なところがあるみっちゃんは、「あら?見つかんない。じゃあ新しいの買いましょ。」っと購入したのが今使ってるやつ。たくやさんとじんさんがいるから、まだ、どこに何があるかギリギリ把握できているが、みっちゃんのみだと、今頃は天井が崩れ落ちているかもしれない。

「今日は、広いお風呂でゆっくり体を癒すわよ~。」みっちゃんはエコバッグをダンベル代わりに、腕を曲げ伸ばしている。「あ、風呂屋?」「そー。冷えるし、年末の忙しく働く体をいたわんのよ。」「いいね、俺も行こーかなー。」「あんた、正人君の体、目当てでしょ。」「いい体つきだよねぇ。お尻の形なんかキュッとして…。」「あの…。」盛り上がっているところに水を差して悪いんだけど。「正人さんにバレて大丈夫っすか?」「なにが…あーー!?」みっちゃんが叫ぶ。「ちょっと、うるさいわね!」たくやさん、オネェ言葉が出ている。「忘れてたぁ…。そうね…、最近慣れて来てるから…。けど…。」「なによ、ぶつぶつと。」たくやさんがいぶかしむ。「ちょっと、理由はわかんないっすけど、正人さん、自分を男だと思ってるっす。」「…え?」


「騙してた訳じゃないけど。本人に、無理に教えるのもどうかと思ってたら言えなくなっちゃって。」一旦、荷物を自分の部屋に運び入れた後、自分とたくやさんは、みっちゃんの部屋に招かれていた。「まぁ、この見た目だしねぇ。」ここの食事と弁当のお陰で、多少肉付きがよくなったとは言え、まな板の胸部と肉付きの薄い臀部は、男性と間違われても無理がないほどであるのは確かで、たくやさんが言う事も一理だ。ましてや、「今は伸びてきたけど、ベリーショートだったしねぇ。」「あれは、ベリーショートなんてお洒落なものじゃなくて丸刈りよ。」みっちゃんのお小言は、辛辣である。

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