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その時の話  旨い飯は誰と食べるか

みっちゃん。里田(さとだ)光紀(みつのり)君は、特別だ。彼は、保育園の時から周りと違っていた。

まるで、違う世界の人のように、(まと)っている空気が違う。周りの田舎くさい、デリカシーの欠片もない芋ヤロウとはことごとく違う。

成長していくにつれ、如実に()()は表れて、自分以外の人間も気づき始めてしまった。けれど、その誰もが彼に近づけない。遠目で眺めるだけ。()()()()。だって、私は幼なじみで、私の祖父が彼のお父さんと知り合いで、本当に小さい時から、付かず離れずの関係を保ってきたの。彼にちょっかいを出す奴は、私がちゃんと罰を下した。だから、彼は傷つかないの。キレイなまま。

なのに、芋くさい下品な下町生まれが学校に来てから、変わってしまった。買い食いなんてした事なかったのに、商店街の肉屋の揚げたてのコロッケが、彼の帰宅途中の楽しみになり、雨の日は体操服に着替え、敢えてグラウンドでドッヂボールをし、別の日にはペットボトルを並べ立て、友達をスライドさせてピンを倒すボーリングもするようになってしまった。学生食堂の裏メニューにある、白ご飯に目玉焼きとチャーシューの切れ端を乗せて、混ぜそばのタレを掛けた金欠学生飯(きんけつがくせいめし)を食べるのも、あいつと遊ぶようになってから。だから、嫌い。私の宝物を、()()()()()()()()()()()()行為が許せない。許せない。



体育館での校長からの“休みの間の注意事項”を聞き流しながら終業式を終え、明日からは冬休みである。「どうする?お昼、どっかで食べる?」朋ちゃんがワクワクしながら聞いてきた。「部活は?今日はないの?」「昨日でおしまい!部室の掃除もしたし、荷物も持ち帰り済みだよ!」「俺、おかわり無料の店行きたい。」リンダは、当たり前に話に入ってくる。「リンダも予定ないの?さっき、カラオケ行くって話、してなかった?」

終業式が終わって教室に戻る途中、幾人かの男子生徒が集まって、帰りにカラオケ屋に寄る算段をたてていた。うち、数名から「鈴田も行こうぜ。」と声をかけられていたのを見た気がする。「せっかく誘ってくれてたのに。」「別に無理にあーし達に合わせなくていいよ?」「…お前らは、俺の親戚か?」「「だって、ねぇ?」」朋ちゃんと顔を見合せる。「若い男子高校生が女の子とばかりつるんでたら、ねぇ?」「他に友達いないのか心配になるでしょ?」「いや、友達いるから。」なんだよ、その親戚のおばさんみたいな心配の仕方は。と、リンダはブー垂れている。「カラオケは、後で合流するよ。先に飯、食いたいけど、お前らと食うほうが楽っつーか、食べやすいんだよ。」朋ちゃんは片眉を上げて、「なんじゃそれ。」と言った後「じゃあ、おかわり無料の店探すかぁ。」と、スマホで検索しだした。いつもの三人に決まりである。


「じゃあ、来年の春にはリンダ、おじさんになるの。」餃子をフーフーしながら口に運ぶ。ハフハフと湯気が上がる。

「おれ、赤ちゃんなんて怖くて抱っこできねぇかも。」リンダが持つとレンゲが小さなティースプーンのように見える。「赤ちゃんの頭なんて、砲丸より小さいだろ?万が一、力が入ったらって思ったら。」悲壮な顔をしながら、リンダは口いっぱいにチャーハンを頬張る。器用な奴。「お兄さん夫婦、円満でいいじゃん。」朋ちゃんは、メンマをポリポリ言わせながら言った。「あーしが言うのもなんだけどさ。」ずずっと麺をすする。「仲良く暮らすのが、子供に、とって、一番、だもん。」モグモグしながら喋っている。「確かになぁ。自分は最初から“母親”が居なかったし、だからって“父親”も“らしい”事は、全くと言っていいほどしてこなかった人だから、こんな世の中を斜めに見る子供に育っちゃったんだな。」白飯に餃子をワンバンさせて食べる。すぐさま白米をかきこむ。「あはは、(ゆき)ちゃんの自己分析力ハンパネェー。」朋ちゃんがケラケラ笑う。「…俺、なんでお前らと飯食うのが楽か解った気がする。」大盛のレバニラをチャーハンに乗せながらリンダは言う。「なによ?」「お前ら、優しいもんな。それに、踏み込み過ぎないし。後ろ向きな事もあんまり、言わねえじゃん。」チャーシューを噛みきる朋ちゃんと目を合わす。「いや、後ろ向きな事は言うし。」「人のプライバシーに程よく興味がないって話で。」モヤシをジャキジャキ言わせて「人が誉めてんだから、素直に聞けよ。」と、リンダは言ったが。「誉めて…。」「ないっしょ。」落ち着きない子を「元気で明るい」と言うような。自分勝手な奴を「マイペース」と言うような。「いいだろ、別に。気にするなよ。」リンダは、皿に残ったチャーハンを平らげた。

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