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恋の話 

「あんた、正人さんと食事に行ったんだって?」たくやさんがテーブルに肘をつき顎を手の平に置くいわゆるぶりっ子スタイルで、むっつり仏頂面で聞いてきた。「…二週間くらい前の事っすか?」「そうよ!私達が谷の大学行って(すでに呼び捨て)、ダンスと肉体美を披露して(自分は見せて貰えていない)、勘違い男(かがわって奴)と、いけすかない(しのはらってひと)をこてんぱんにしている時っ(つまり大学の学祭)!」たくやさんがネイルが光る人差し指をビシッと自分の鼻先に向けて、「デートしてるなんてっ!」許せないっ!私も行きたかったのにっ!と怒っているが、「デートじゃないっすよ。昼飯、食べに行っただけっす。」「なに食べたのよっ?!」「えっ…と、鴨せいろ…。」「贅沢っ!なにが“鴨せいろ”よっ!それをデートって言うのよ!」ダメだ、噛み合ってない。「(こう)くーん、相手にしないのが一番。」じんさんが筑前煮を作りながら助け船を出してくれる。「ったく、誰から聞いたのよ?」「そば屋の大将!店の前通ったら…」おぉ、あんたんとこの若い子、こないだ食べに来てくれてねぇ。兄貴さんか?若い男二人、旨そうに食ってくれると作りがいがあらぁね。通りから見える席に座って食べてっから、それみて若いお姉ちゃんグループも釣られて入って来てくれて。おれ、ウハウハ。嫁さんに「鼻の下伸ばしてんじゃないよっ!」って怒られちゃったよ。わははっ!   「若い男で、兄貴って位の年齢で、そば屋の大将が名前を知らないって言ったら、正人さん位しかいないじゃない!?」するどいなぁ。聴きながら空のペットボトルや缶をまとめて裏に出す。「別に、(こう)君に下心なんてないわよ。ほら、早く準備しな。」じんさんがたくやさんを二階に追いたてる。ぶつぶつ言いながら上がるたくやさん。「(こう)君、気にしないでね。」「?はぁ、気にしてないっす。」たくやさんが正人さんに岡惚れしてるのは知ってる。怒っているって言うより、羨ましいって気持ちだろう。ソファにハンディ掃除機をかけながら答えると「あんたは淡白すぎよねぇ。」ため息混じりに言われた。と言われても。はてなが増えただけだった。


学校生活においても、あまり代わり映えはしなかった。担任は、この二週間の間ずっと休んでいて、学年主任と教科担当の先生方が代わるがわる見にきてくれている。「野村、そんなに重症なん?」「手術とか必要だったんかな?」なんて不安な声もちらほらしていたが、幽霊から「前髪と、眉毛燃やした。」って事を聞いてた自分は、心配など()程もしなかった。島崎さんは、一人で弁当を食べながらも粛々と学校に来て授業をうけている。イジメに発展しないのは、皆、自分達の行いを鑑みたから。文化祭のあの後、クラスLINEが荒れた。島崎さんと“ふくい”、クラス委員を除いたクラスLINEで、元々はダンスの映像を共有するため作ったのだが、みんな、憤まんやる方ない思いがLINEで溢れていた。が、リンダの言葉で皆、押し黙った。「ならクラス委員をしたい奴、いるか?」面倒、大変、やる気ないし、要らん責任押し付けられそう。そういった思いがあるなら、引き受けた島崎や、ふくいに、偉そうな事は言えないだろ?問題なのは、“クラスで考えなかった事”だ。それは、俺達全員がクラス委員におんぶに抱っこだったからだ。なのに、自分の都合が悪いと文句を言ったり、虐めたりするのは「クソだせぇよ。」男女とも、その言葉は考えるきっかけになった。「きれい事じゃん。」「優等生乙」なんて言ってる奴もいたが、「え、あんた、委員に立候補?自分ならもっと上手く出来るって?」なんて朋ちゃんがすかさず言ってくるので、口を閉ざすしかない。「ペンは剣より強し、の現代版だな。」スマホ画面をみながら、自分は現実に呟やいていた。

それと、クラスメートの一部だが“選曲は担任の独断”だと言うのは知っていた。クラス委員の島崎さんとふくいはもちろんだが、リンダと同じ陸部で赤点三人衆の岸田が見ていたらしい。職員室で、たまたま部の顧問と話しながら職員室内を移動して、担任の後ろを通った。担任はパソコンに向かってイヤホンをしていた為、岸田に気付かなかった。ちらりと見えた画面には、そのアイドルの楽譜。そして、机に置いて開かれていた手帳型のスマホケースの裏側に、そのアイドルがやっているラジオのステッカーが貼られているのを、岸田は見逃さなかったのである。まぁ、先生だってファンになる事だってあるよな。なんて、考えていたらそれが選曲になり、モヤモヤしてリンダと朋ちゃんに相談しようかと迷っていたところに、例の女子生徒二人から“リンダ達に相談したい”と相談され、岸田もついでに見た事を伝えたのだ。「やっぱり。」「だよねぇ。」との返事だったらしいけど。何にせよ、自分達は“人任せ”にするリスクを知り、不安や疑問を解決、相談せずに流されるとどうなるかを身を持って体験した。その点で言えば、ボディパーカッションを促した自分達も同じ事なんだけど「アイドル曲をリコーダーで演奏」するか、「洋楽をリズムに合わせて手拍子」するかどちらかを皆、選んで後者になった。それは、一か八かの賭けだったし「絶対委員の二人にバレない」保障もなかったけど、委員の二人を除くクラス全員が同じ方向を向いていた結果。ちなみに、リンダが歌った英語の歌詞は、英語の教科担当の先生曰く「全くの出鱈目。」だと言うのは、言わずもがな。

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