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文化祭の話 楽しんだ後の片付け

「今日、すっごい人いてた。」片付けながら、朋ちゃんが興奮気味に言ってきた。「何が?」文化祭が終わり、廊下や教室を掃除している最中。一年は合奏だから、教室は汚れていないが、食堂や中庭、校門周りなど何人か駆り出されて、各場所、各クラスで担当して掃除する。運悪く、自分と朋ちゃん、朋ちゃんの隣の席の子と岸田が選ばれて、ホウキ片手に門の周りに落ちているゴミを集める。「今日、『思い(重い)のたけ(竹)をぶつけるゲーム』で、的を貫通させた人がいたのよ。」「へぇ?凄いね。」たぶん、自分の知り合い。「もっとおどろいてよ~。」土嚢を積んでそこにベニヤ板を丸くくりぬいた的を立て掛ける。周りは砲丸投げやハンマー投げに使われる移動式のネットを置き、安全に配慮した上で、的に“思い(重い)の相手”の写真、もしくは名前を書いた紙を貼り、指定場所から先を削った青竹(学校敷地内で伐採されたもの。)を、重さ、長さ、太さを自分好みのものを選び、投げる。ちから比べで投げる男子グループ、インスタにネタで上げる為の女子グループ。意外に人が訪れ、楽しんでくれたらしい。その中で、「詳しくは言えないけど、」と、誓約書がある為詳しく話せない朋ちゃんは、それでも言いたいらしい。「すっと、竹を一目(ひとめ)見て選んで、お手本みたいな姿勢で…。」リアクション付きで説明してる朋ちゃん。聴きながら植え込みに捨てられた紙カップをハサミで拾う。「で、的にめがけて、」ズドンッ!!爆音と共にキャーッと叫び声が上がり、一瞬の静寂の後…。「…なに?」「わかんない…」朋ちゃんと顔を見合せていたが、「火事だっっ!!」誰かの叫び声に再び女生徒の悲鳴。「あんた達、グラウンドに行って!」校舎から先生が叫びながら、指示を飛ばす。手には消火器。「火事だって!」「ヤバいな。」岸田とクラスメートの女子生徒と朋ちゃんと四人で、掃除道具を片付けてグラウンドへ向かう。煙の臭いが漂う。他の生徒達も、避難訓練通りに学年、クラス、出席番号で、ぞくぞく並んでいく。「おう、そっち、大丈夫だったか?」でかくて目立つリンダの横に並ぶ。「校門じゃ、火の手は見なかったよ。」小声でリンダに応じる。ざわざわと、周りも不安から互いに情報を得ようと話し声が波のように起こる。「はい!静かに!」校長が朝礼台から話をする。「火は、すでに消えました。落ち着いて聞いて下さい。」おじいちゃん校長は、落ち着いた声で静かに話した。「北側の外階段。いつもは、何も置いていませんが、この数日は文化祭の準備で出たゴミや、使い終わった道具等を一時保管していました。」へー、そうなんだ。模擬店をしない、一年生達はキョロキョロする。「しかし運悪く、捨てるスプレー缶から、残っていた微量のガスが漏れて…。」校長は、一呼吸おいた後、「職員の一人が階段でタバコを吸い、その吸殻を下に落とした際に、火が着いたようです。」一同がざわめく。「静かに!」教頭が叫ぶ。「消防の方も、次期に来て調べて下さいます。皆さんは、教室に戻って帰宅の準備をして待機していて下さい。」言い終わらない内に、消防車が校内に入ってくるのが見えた。用務員さんが車両を誘導している。みな各クラスに順番で戻っていく。「あれ?うちらの担任は?」他のクラスは、担任が先頭に立って戻っていくのに、うちの担任の姿がない。「私が行きます。はい、ついてきて!」教科担当の先生が声を張りながら、先頭する。「ケガとか?」「消防の人の対応とか。」ひそひそと幾人かが囁きあう。「なんだろうな。」リンダが小声で話しかけてきたが、曖昧な顔をするしかない。


教室でいつでも帰れる準備をし、待機。教科担当の先生は、もう一度生徒達に指示した後、どこかに行った。「あー、早く帰りたい。」「バイト遅れちゃう。」本来なら下校する時間。クラス中から不安と不満が漏れ出ている。「ちょっと、静かに待ちなさいよ!」島崎さんが、声を荒げる。しかし、生徒の目は冷ややかだ。自分は外を見た。下を消防隊員の人や先生が行ったり来たり。「杉本さんっ!」いきなり、名前を呼ばれて振り向く。「鈴田君に、川田さんも!」島崎さんは、自席からこちらを睨みながら「あんた達が仕組んだんでしょっ!?今日の演奏っ!」ギリギリと歯を噛みしめる音が聞こえそうだ。「まさか。」「嘘っ!あんた達以外!誰がすんのよっ!」どんなに怖い顔をしても、怒鳴っても睨んでも、自分も朋ちゃんもリンダも、どこ吹く風だ。「私達だよ。」震える声を上げたのは、井上さんと遠藤さん。「私達が、相談したの。」「合奏を止めたいって。」「何でっっ?!」島崎さんは二人を睨む。

彼女達は、岸田が連れてきた、朋ちゃんとリンダに相談してきた、女生徒だ。

「だって、私達にも、何も言わなかったじゃないっ!」「島崎さんが、自分の都合だけで私達の思い出や楽しみを変える様な事、私、されたくない!」苦虫を噛んだ様に顔を歪める島崎さん。おろおろする“ふくい”。「え、どういう事?」「ふくい、お前、何にも気づかなかったのかよ?」ふくいの隣に座る男子生徒が尋ねる。「何にもって…。俺、島崎さんが『私が会議に出るから大丈夫。』って言われて、塾あったから帰ってたし。指揮者だから、練習要らないって。」つまり、自分が(らく)な事しか考えてなかったという事だ。

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