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階段の話 踏み外さないように。

放課後、パートに分かれての練習。教室外では、他学年が準備に走りまわっている為一年生は極力、教室内で、とのお達し。自宅からリコーダーや、ピアニカを持ってきている生徒もちらほら。自分達三人は、教室の端で小さく(かたま)って紙の上で指を動かす。島崎さんと“ふくい”は、監視員のようにグループの間をうろうろと見て回っている。「川田さん、本番は、姿勢正しくね。」「鈴田君も杉本さんも、早く楽器持ってきてね。」この言い方が、なんとも苛立つ。しかし、我々は黙って従う。その、様子を横目で見ながら、島崎さんは他のグループを見て回る。


「あ~、ストレス~。」「マジで、地獄じゃねえか。」あーしとリンダは、グラウンドに向かいながら愚痴る。一時間で練習は切り上げられた。塾や、部活、バイトと理由は様々だが、正直クラスメートの全員が我慢出来なかった。「なんで、あいつらは練習しないんだ?」「さあ、ふくいは指揮者って聞いたけど。」部室近くまで来た時、「ちょっと。川田、鈴田。」呼んだのは、赤点三人衆の岸田。「どうした?」リンダが返事をする。「ちょっと。」と手招きする。「「?」」部室裏で、誰も聞いていない事を確認してから、「ちょっと待ってて。」と岸田は走る。「え、どっきり?」「いゃ、新手の嫌がらせじゃね?」「マジか。アイツのタオル、洗ってやらねぇ。」「悪臭騒ぎが起こるな。」なんて話していたが、直ぐに岸田は戻ってきた。二人の女生徒を連れて。「あれ?」一人は、テスト勉強で隣の席の子と一緒に勉強していた子。もう一人は、島崎さんと最近まで昼を共に過ごしていた子だ。「なに、どうしたの?」「岸田に何かされたのか?」「ちげぇよっ!」岸田がリンダにパンチを打つが、逆に手を痛める始末。そんな二人はほっといて、「私達、川田さんに聞いて欲しい事があって。」「どうしたらいいか、考えて欲しいの。」と、なにやら切実に訴える二人。「一応、先に言っとくけど、あーし、島崎さんにめっっっっちゃ腹、立ってるからね。彼女に協力して、なんて話だったら最初から聞かないから。」二人は、顔を見合せて「私達も、腹が立ってるの。」「このまま文化祭を迎えたくないのよ。」「「合奏、止めたいのっ!」」二人は息ぴったり、同じ言葉を言った。「…。わお。」リンダが感心して呟いた。


文化祭まで、何の問題も起きず、波風立たず、順調に日々が過ぎている。あと数日。着々と準備が進められる。



文化祭当日。三年生はポップコーンやフライドポテトなどの飲食物、二年生はお化け屋敷や、輪投げ、的当て等の模擬店を各教室で催し、中庭やグラウンドでは運動部が各部の特色を生かした出し物をしている。また、文化部も活動している教室で展示や体験、販売など幅広く展開していて、「ほんとに、お祭りみたいじゃん。」「それに、安いしなぁ。」「朝イチから揚げもん食べれるあんたの胃が信じられんわ。」ポテトを一度に4~5本口に放り込むリンダに称賛の言葉を投げる。「俺達の予定は?」「あんた、ちゃんとプログラム見なさいよ。一年は体育館で、一組から順次、発表していくんだけど合間に5分の休憩や、他の部の発表が入るからね。」「昼からの部、1時半位には体育館入口集合だよ。二人とも、陸部は?」「俺達はこれからすぐ向かう。」「先輩方も午前中はクラスの模擬店が一番忙しいもんね。」という事で、一旦解散。二人を見送って、さて、一人でどうしようかと歩いていたら、「あ、えっと杉本さん。」呼ばれて振り向くと、「あぁ、…広川先輩。」人が多く行き交う廊下。とりあえず、先輩をつけて返事をする。「もしかして、一人?時間ある?」確か、広川弟は二年生。「いえ、これから待ち合わせがありますので。」「あ…そっかぁ。良かったらお化け屋敷してるから。友達ともおいでよ。」そういって持ち場に戻っていく。自分も歩き始めたが「やーい、ふられた。」「うっせ。」なんて会話が背中ごしに聞こえた。「お前、モテとんなぁ。」「冷やかしだよ。」小声で幽霊と会話しながら、校門へと向かう。「あ、ゆきちゃーん。」たっくんが手を振って突進してきた。「グフッ」なかなか重いボディだ。「ごめんねぇ。たくやが見たがっちゃって。」「いえいえ。」「私はここのO()G()よ?違和感ないでしょ。」大有りである。本来は休みの週末土曜日。ご家族さんがいらっしゃれるように、という配慮だ。自分は家族、呼ばないけどね。2日前に夕飯を食べていて、文化祭の話になり、「お祭り?たっくん、行きたーい!」となった。ゆり子さんと正人さんは用事があって来れなかったが、みっちゃんがここあさんとたっくんを引率してくれるという。「(ゆき)ちゃん達は何時から?」校門で配られたパンフレットを見ながら、みっちゃんが尋ねる。「昼からの部です。1時半に集合と言われてるっす。」「楽しみだね。」「ねー!」ニコニコの親子に「これ。」と、渡したのはご家族様用百円券。全生徒に配られた。「たっくんに何か買う足しにしてね。」「わ、ありがとう。良かったね、ありがとうは?」「ゆきちゃん、ありがとう。」い、癒し…。「あたしはぁ?」残念なイケメンが甘えた口調で言ってくるが、「みっちゃん…。見苦しい。」「…まだキモいって言われた方が、傷つかないわ…。」本気で傷ついていた。

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