祭りの話 神輿の進路
次の日の昼、いつも通り教室で昼飯を食べ、それぞれ思いつきで脈絡なく喋って笑っていると、「杉本ー。呼ばれてるー。」クラスメートの男子生徒が教室入り口から自分を呼ぶ。その生徒の肩越しに顔を覗かせるのは広川少年だ。「なに、あんた、何かしでかしたん?」「リンチか?カツアゲか?今からでも謝ってこい。」「なんで“やった側”なんだ。」二人に見送られ廊下に出る。「先輩、どうされました?」「あ~…っと、ちょっと目立つから、移動していい?」目立つのは、あんたの身長だろ。と、腹の中で思うに留め、先輩の移動するに従う。雨が降っている為、校舎の外には出れないが渡り廊下なら人通りも少なく、話し声も雨音が消して、他者に聴かれる事も少ない。少し肌寒いが、短い時間なら我慢も出来よう。「昨日、姉ちゃんから聞いたんだ。」
店の開店時間もある為、長居させる訳もいかない。しかし、途方に暮れて泣く女性を放り出す事も人道的によろしくない。そこで、二人が取った行動とはー。「あんた、ななみとはるかって子、知ってる?」唐突にじんさんが名前を挙げる。「…?はい、同じ企画の役員です。ゼミは違うけど。」「私達、そっちからお声かけて貰っていてね。この店(“ぷいぷい”)は水商売だけどさ、それぞれ昼の顔があんのよ。」「副業、ダブルワークってやつ。」「はぁ、なるほど…?」「あんた、そっちのグループに入ったら?」「え!そんなっ!?」突拍子なく始まった話の内容に広川姉の頭にはクエスチョンマークが浮かんでる。「そもそも、その“しのはら”って子に頼まれて、写メで見た事しかない男を探してたの?」「…いえ、自分が勝手に。」「じゃあ、そのグループで、特別あんたじゃなきゃならない役割を任されてるとか?」「…いえ、ないです。」「じゃあ、いいんじゃない?」「けど、しのはらさんのおかげで、ゼミに入れたし、声かけてくれたから、皆とランチも出来たし。」「確かにきっかけは“しのはらさん”かもしんないけど、その後の頑張りはあんたの力じゃない?」「毎日、探し回ってたんでしょ?不審者に思われないよう、わざわざスーツ着て。」「大丈夫よ、きっと。」「…。そうですかね…?」「それに、ななみちゃんとはるかちゃんのグループに入ったところで、最終的には同じでしょ?」「“素敵な街人”を探して紹介する。って事よ。」「…。そうですね。」「なら、違うグループから違うアプローチしてたら、違う格好いい人見つけて、しのはらさんに喜んで貰えるんじゃない?」「私、二人に連絡したげるわ。それに、協力者もいるのよ。」「協力?」「そのバイト仲間っていう大学生の子よ。」「!!」てな具合で、広川姉、オネエ二人にうまく丸め込まれて、「ありがとうございます!」なんて、お礼を言って帰ってった。
「姉ちゃん、なんだかスッキリした顔で帰ってきたから。ありがとうな。」「いえ、自分は何も。」広川少年が話してきた内容は、周りが見えなくなってる姉が迷惑かけているのでは、と言う事。アパートに自転車が置いてあったので、ピンポンを押したが留守だったと聞き、血の気が引いたそうだ。「姉ちゃん、真面目を通りこすっつうか。のめり込んだら周り見えてなくて。」「それは、ご心労が絶えませんね。」「…ははっ。」なんにせよ、一つ解決したようだ。「じゃあ、時間取らせてごめんな。」広川少年がその場を離れる前に質問をした。「ところで、あの手紙はお姉さんが書いたものですか?」純粋に疑問に思った。あの人物像からは想像出来ない文面や文字だったからだ。「いや、俺。」「…は。」「じゃ、ほんと、ごめんな。」広川少年は教室に戻っていった。予鈴が鳴る。自分の人を見る目は役に立たねぇ。
教室の空気は最悪だった。なにせ、生徒達が置いてきぼりになっている。意見を聞きながらも、最初から決まっている事をしれっと伝えてくるのだから、質が悪い。「あーし、文化祭、サボタージュしようかな。」「ボイコットか。」「労働組合に届け出しろよ。」今、“パートに分けて練習する時間”が進行されているのだが、このパートに分けてる面子も決まっていたのだ。「なんか、やる気おきなーい。やりたくなーい。」朋ちゃんは机の上につっぷして脱力感満載だ。「せめて、曲を選べるとか、アイデアを採用するとか、俺達を無視するような事がなけりゃなぁ。」リンダは、大きな手と指でピアニカの鍵盤がコピーされた紙に指を置き、練習しながらつぶやく。先生は職員室に所要で戻っている為、クラス委員の島崎さんともう一人の男子生徒で指示、指導しているのだが皆、やる気がないのが目に見えて練習にならない。「ちょっと、川田さん。真剣にやってよ。」島崎さんが朋ちゃんに注意した。「はぁ?なんで私?」「川田さんがだらけてると皆が真似するでしょ?!」「はあああ?!」その声にクラスがしんっと静まりかえる。「な、ん、で、わ、た、し?」再度、朋ちゃんは島崎さんに問う。「真似するってなに?私がみんなに号令かけてるって?さぼりましょう、だらけましょうって?」「っ川田さんはクラスのムードメーカーじゃない。だから、」「かんけーないでしょ!?今、クラスをまとめて練習させるのは“クラス委員”が任された仕事じゃん!」「!!」 は、白熱してるっ!
ちょっと、余談なんですが…。何故か、ショートで書いた完結話が定期的に読まれています。なんか、怖くなってきました。炎上とかってやつですかね?あの、もし、問題あるっぽいなら教えて下さい。




