魚釣りの話 運も実力の内、つまりは力業(ちからわざ)
商店街を7人で歩けば目を引く。しかも、真ん中に女性二人を挟んで5人の男。内三人は、男女問わずに見惚れるイケメンっぷりだ。真ん中を歩くななみさん、はるかさんは恐縮しているような、けれど特別感を感じているような、複雑な表情だ。「大丈夫っす。心配ないっすよ。」二人に声をかけて緊張をほぐすのも、下っ端の役目だ。「…マジ、杉本、お前、やべぇな…。」「やべぇのは、谷さんの語彙力っす。死んでますよ。」「いや…。けど、おぉ。」死んでるなぁ。「まぁ幸君だからね。」「普通、通常、一般とは違うからね。」「規格に適合してないからね。」なんか、ディスられてる。
喫茶店を出て、堂々と道の真ん中を歩くのは(買い物客の邪魔にならないように。)「相手を煽るのよん。」だそうだ。「自分より格下だと思ってる彼女達が、イケメン引き連れて歩いてごらんなさいよ。相手からしたら、屈辱でしかないじゃない。」物の例えだからね。お嬢ちゃん達は、ちゃんと可愛いわよ。と、じんさんがフォローを入れている。遣り手社長風味でオネエ言葉って、胸焼けがするなぁ。「道を歩けば、相手の仲間なり本人が知る事になるしね。目立つから。」「多分、相手から何か言われると思うけど、素っ気なく返すのよ。」「「はい。」」「で、谷君。あんた、友達連れてこの子達と役員しなさい。」「っへぇ?」すっとんきょうな声を上げる谷さん。「別にゼミが違っても出来るでしょ?」「ま、まぁ。そっすね。」訳の判らない顔の谷さんに、「つまり、第三のグループを作るんだよ。」たくやさんが説明する。一行は大学近くのカラオケチェーン店に入る。店員も、大学生がバイトしてたりするので顔を覚えさせるのだ。部屋に入ると、みっちゃんが早速歌を入れて歌い出す。他の6人はテーブルを囲んで作戦会議だ。たくやさんが、「単純に、“素敵な街人”って企画を二分するグループが、今いるだろ?」と、話し始める。片方は、元々の趣旨に則って若者を取材し、企画を続けたい。片方は、ミスコン、ミスターコンの形式にした上で美男美女を紹介、斡旋して儲けたい。「で、第三のグループは、“企画もろともぶっ壊す”が、狙い。」「「「ええっ!」」」谷さんにと女性二人が同時に叫ぶ。「一回、更地にしたらいいんだよ。まずは。」「け、けど、過去の先輩方が繋いだ街の人達との交流や信頼は」「んーなもん、端から無いわよ。」じんさんが、デンモクを操作しながら話す。「あんた達大学生の何割が地元民よ。」「え?」「地元出身なら最初から交流も多少の信頼もあるのよ。ないのは他府県から来た子。」「…。」「その子達のうち何割の子が、この街に住み着くのよ。骨、埋めにきてないでしょ?」「そ、それは…。」「いいのよ、別に。他府県で勤めてる、通学してるなんてのはごまんといるし。」じんさんは、デンモクを手放しマイクを持つ。「要は一過性の関係って訳。あんた達が“地元住民”って一括りするように、あたし達、街の人間も“大学生”としか認識してないの。」言うだけ言って、歌い出す。「きゃー!じん、かっこいいわー!」みっちゃんがタンバリン鳴らしてはしゃいでる。ななみさんとはるかさんは、考えこんでいるみたいだ。谷さんにとっちゃ、分けわからん話だな。「谷君さ。」「は、はいっ!」たくやさんに声をかけられ、谷さんは飛び上がる。「幸君の写真撮ってた子って、この二人のグループ?」「い、いや、違います。なあ、しのはらって、同じゼミ?」「あ、同じじゃないけど、“素敵な街人”の企画したもう1つのゼミです。」「その、しのはらさんと、かがわ先輩が言い始めたんです。」「言い出した?」たくやさんが聞き返す。「『若い人の方が良い。見た目が良いと企画も盛り上がる。』って。」「ふぅーん?」元々、この企画は小さな小冊子に写真とちょっとした本人のコメントを載せたりして、『街中の店や、地域が力を入れているスポーツ等を人を介して知って貰う』事を目的としていた、地元紙みたいなもんだ。「学祭に来て頂いた方も、自分の店の商品を模擬店へ卸してピーアールしたり、特技を披露して知名度を上げる事で、互いに利益があったんです。」大学側は観光ビジネスや地域再生など、実戦形式に体験出来る。「ただ、何年も続けていく内にマンネリ化して、新しい“街人”を探すのも一苦労で。」そりゃそうだ。「…やっぱり、潮時なんだよ。俺、“企画を壊す”に賛成。」谷さんが女性二人の顔をみて言った。「企画が無くなっても、単位に響かないでしょ。ブラッシュアップするにしても、今あるものを壊す必要あるし。」「…そっか。」「そうだね。」「それに、ゼミ生じゃない俺が動いた結果企画が潰れたんなら、あんた達が他のゼミ生に睨まれる事、ないんじゃない?」お、谷さんが格好いい事言ってる。後ろで、音楽に合わせてじんさんが上着脱ぎ出してるけど。あ、あかん、ベルトに手、かけ出した。ストーップ!じんさん、ストーップっ!
なんだか、沢山の方が読んで下さったみたいで、有難いやら恥ずかしいやら。大丈夫かな、不愉快な表現してないかなってヒヤヒヤしながら書いてたりします。なので、出来る限り生暖かい眼で読んで下さるようお願い致します。空○アワーを聞く位の心の余裕を持って読む、が理想かと思います。宿直っ!




