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流離う世界に私は  作者: 眠井ネタイ
第二章『スティグマ』篇
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43.作戦会議


「クロードは間違いなくカーディス邸別荘とされている建物にいます。違法魔導具が大量に格納されているという理由以外にも、王都外で少数が恒久的に拠点として扱うことができるのもここだけですし、内装の記録をクロードに抹消されているので相対的に守りやすくなってもいます」


革命派を気取る者たちのほうが数は少ない。

これは兵力に限った話だけではなく世界中に住む一般人を含む表現であるため、市民からの告発という危険が常にある中の活動拠点というのはそうそう見つかるものではない。

その上で兵力以外にも武器などの物資を運搬するなり、移動用の馬車(この場合は同じ役割を可能とする魔物)の管理をするなり、情報を伝達するなりで求められる人員の数は膨れ上がる。

思い当たる限りの理由を他に挙げていくとキリがないが、とにかく最低でも一軍規模を収容可能な敷居が必ず四つか五つは保有していると見る。


「だがそれだけじゃ根拠が薄くないか?むしろ守りやすく場所を他の奴に譲ってる可能性もあるだろ」


テオが思い当たることをそのまま口に出す。

ハッキリ言って絶対の補償がないと動きづらいというのが現状となっている。基づく根拠が無ければ首を縦に振ることは難しい。


「ここ最近の物流を調べ上げた結果、飼い慣らされた魔物がこの辺一体に極端に多く集まっている上に戸籍に疑惑が生じさせている人間もこの周囲に偏ってきてるんです」

「おそらくあちら側も既に持久力の殆どを失っているのだろうな。一撃必殺とはいかずとも何かしらで大打撃を与え、強奪しなければ食料も次第に不足する」

「あっちはあっちで大攻勢の準備ってわけか」


考えることは同じ。ということらしい。


「実際、魔物って飼い慣らすといっても数はそういないんだろう?魔物は大昔に『奈落』に落とされてから繁殖もそこでしか広がってないようだし」


これは今知り得る中で生じた疑問だ。

一般に魔物というのは強靭だ。単純な魔力の保有量が人間よりも多いために身体能力も再生力も高い。

その代わりに比較的知能レベルが低くはあるのだが、種族によっては賢く狡猾なものもいる。


「御し易い魔物は一定数捕獲したあとで地上まで引っ張ることがある。庭園や拘束具などの環境体制を整えられるなら飛蜥蜴(ワイバーン)を蓄えることも可能だ。もっとも乗りこなせる者など稀有だがな」

「飛蜥蜴(ワイバーン)の頭数が十体超えてたら俺が相手するしかないか」


テオのやつ、完全にクロードの方はこっちに押し付けてきやがった。

それ自体、俺は構わないのだがもう一つ気にしておきたいことがある。


「ローテ・ノーブルって乃亜くらいの背丈でサイドテール、加えて本人の身長と同じくらいの杖を持ってるやつで合ってるか?」


口頭では抽象的になりすぎると考え、手の高さで具体的にサイズを伝える。

エレナの話的に、社交界とかそういうのに出席するくらいの地位だ。つまりこの中の殆どがそれぞれ面識をもっていることになる。


「髪型がサイドテールというのは日による可変要素は置いておくとして、背丈などの特徴は確かに一致してるが……」


やはり確定させるには根拠が薄いか。

俺に絵の才能があればここでそっくりの似顔絵を描くことも可能だったのだが。

なお髪の色は分からない。俺の空間魔法の感知の見え方はサーモグラフィーのように白黒で映されるため色の判別は不可能なのだ。

何気に曉圏ならばフルカラーで見ることが出来る。

話をもどして、ローテに関する身体的な特徴はこれ以上パッとしない。となると同行している人ならどうだろうか。


「じゃあ遠くを見ることに長けた者と一緒にいたとかならどうだ?俺くらいの身長の」

「ノイラですね。そういう権能(フォルトゥーナ)を持っていると本人に聞いたことがあります。ローテの友人のようでわたしが面会する時に彼女必ず一緒にいますし」


……やっべぇ。

殺しちゃったよ。

戦後に協力関係に落とし込まなければならない俺の立場として、キレられるどころの話では済まない。


(とはいえ、ああいう支援型の影響力は半端ないからな。俺はともかく他の面々だと認識範囲外から一方的に攻撃が飛んでくるわけだし)


至近距離、大体百メートル程度の距離ならばいざ知らず、数キロメートルにまでなると魔法の軌道は重力の影響を受けて大きく山なりになる。

その際に正確な距離の測定は必須なので感知範囲は射程に直結しているのだ。


「何で急にローテの名前を挙げたかというと、先日の迫撃射撃の後にそのローテと思わしき人物もそのカーディス邸別荘って方向に退いている」

「根拠がないだろ」

「適当なこと言うなら邪魔だから外に出てろ」


まわりの他の隊の代表者の面々から不満の声が上がる。

いくら俺が感知系統の魔法を使うということを、この面々だけには明かしているとはいえその有効範囲から虚言だろうと決めつけられている。

俺にしか見えていない景色なので、こればかりは証明のしようが無いのだから仕方がない。

先程この部屋を情報機関の奴らに占拠されていたからその時にみんながどのように拘束されていたのかを暗唱してもいいが、これくらいの距離の話ではおそらくローテの件の信憑性を上げるには足りない。

感覚共有に近い能力を持つ者が居れば、とも考えるが空間魔法で取り入れる莫大な情報量で脳がはち切れるため棄却。

一発勝負というこの作戦に支障をきたすくらいであれば、空間魔法の詳細をある程度公開させておくべきかと判断した。ところで、ルワンダからの助太刀をいただいた。


「朕は幾度もジェスの感知能力の高さを目にしている。よって仮定としてローテもクロードの下に居るとして適所対応するよう講じる」


王太子らしい威厳をちゃんと含んだ物言いに全員が頷いた。

凄い。ノスタジルで王様としてもてはやされて威厳さの欠片もませられていない俺こそがまさしく見習わなければならない姿だった。


「そういうことでテオ。相対する相手はその場で見定めてくれ」

「分かってる。さすがにさっきのは半分冗談だ」


半分本気だったようであるテオを制し、エレナがその前の前提となる話に繋げる。話す相手はこれを本題として集めているであろう他隊の代表者たち。


「それに、特筆しているのがクロードとローテとはいえ相手取るべきなのは他にも多数います。その辺りは──引き受けていただいて宜しいでしょうか?」

「当然、承ります」

「決着の場に力添え出来ないのは残念でしょうが」

「勝ったうえでのさばっているだけの貴族が葬り去ってくれるのであれば依存無しです」


この戦争の佳境を越えれば、この後に勃発することになるであろう政権争いに立役者に仕立て上げたルワンダを据えれば勝ちは確実。そうなったとき情報機関のようなおかしな組織を消失させることだって難しくはないだろう。

正しい人のもとで真っ当に伸びをして生きられる生をみんなが得られるのならと、この面々は団結している。


話を現在に戻そう。


「戦闘だけを問題にしてるが、まだ大きく二つは問題があるだろ」

「一番難しいのが移動方法だな。使える飛蜥蜴を総動員しても軍規模には当然足りない」


事実上この中で最高権力者のルワンダがこう言うのだから本当に徒歩しかない。


「お師匠様が風で飛ばせばいいのでは?」

「無茶言うな。安全保障付きなら三百人が限界だ」

「お前は化け物じみたことを言っている自覚はあるのか?」


奏波が何となく発言したものに素っ気なく返すとルワンダに横からつっこまれた。

普通に考えて三百人の隊規模が空を翔んでくれば脅威となるが今回はそうもいかない。


「そのクロード邸別荘とやらに籠城されると先行して攻めに行ってもジリ貧だから、結局は足並みを揃えたほうが確実だ」

「内部構造が分からないから中がどうなってるのか分からないしな」

「空間魔法でも持ってる奴があればなぁ」

「無理あるさ。少数派(マイナー)にも程がある」


テオが奏波の提案を否決すると、乗じるように他の人たちが付け足すように問題と解決策の提示と否決を連続で行う。

それと俺の隣にいる乃亜が声を小さくして訊ねてくる。


「空間魔法だとなにか特別な効果があるの?」

「これといってメリットがあるわけじゃないが、今言ってたようにマイナーな魔法であるから隙につけ込みやすいくらいで──」

「空間魔法なんて変態な犯罪者以外使わないだろぉ!」


いつの間にか悪ふざけといえるくらいの声量になって話を繋げている。


(不味い)


「はいはい!空間魔法の使い手なんているわけないんだからちゃんと移動方法の話に戻そう!な、エレナ?」

「……ええ、そうですね。ジェスが先日の件で作ってくれた時間も短い限りです」


多分察してくれたエレナが危機感を煽る発言で話を戻してくれた。

マジで、何としてでも、乃亜と奏波だけには知られるわけにはいかない。


「とにかく四千人規模で動いて可能な限り発見を遅らせるような立ち回りが必要です。よって百人前後で各町に散らばり取り決めた時間に集合するよに──」

「あ、エレナ待って。監視がいても一キロ手前の地点くらいまでは俺だけで充分対処し切れるから全員で行こう。予定通りこの辺一帯から情報が漏れなければなんとでもなるから」


索敵範囲では確実に勝っているため、敵の斥候に見つからないように躱すくらいならその都度で対応をとる方が複雑化しなくていい。

だがやはり困りごとは


「エレナ様。やっぱりこのガキども外に引っ張り出しますよ」


信用が無いことだ。

過去に実績が無い者が適当な作戦を言えばこうもなる。

とはいえ超広範囲の空間魔法を扱うと明言してしまうのも考えものだ。色々と俺の尊厳が喪われる。


「はいはい分かったよ。じゃあみんなはエレナの指示通りに動いててくれ。斥候らしきものは俺が単独で動いて仕留めて行くから」


元々、世界を渡る前からこのような状態になるのは容易に想像できていた。

だから俺が単独行動を取りやすくするために奏波を乃亜に付かせておきたかったわけだが、先の件をみるとどうにも不安ではある。こうなれば普通に単独行動するだけじゃなく、向かってくる敵を各個撃破していくしかない。


「俺の顔が知れてるわけがないしな。大きく動いても大丈夫だろ」


加えて機動力だけならこの面々にも分かる程度にルワンダとテオが伝えているはずだ。これなら文句は出まい。


「……正直なところ、迷いますね。なにぶんこの世界に訪れたらばかりなので数日は土地勘や情報不足に悩まされるかと思いますが……」

「あー、大丈夫。数日くらいなんも食わなくていいし町に顔を出すこともない。土地勘は知らんけど大体はみんなの少し前を移動するくらいだし」


ぶっちゃけ、デメリットが付いてこない想定なのであっさりと了承をもらいたい。

もし俺が斥候狩りの役割を十二分に出来ればそれで良し。出来なかろうと当初の予定通り。


「条件がある。乃亜と奏波も連れて行け」

「は?断る」


ルワンダが俺の機動力を完全に潰す条件を提示してきた。

決して好き嫌いとかではなく、一人飛び回ることが出来なくなると苦しいのだが。


「ハッキリ言うが、奏波を戦力として数えるにしても今のままでは対人に弱過ぎて力量の割に使えん。どうせ直線距離にして三百キロ近く進まなければならないから数日は時間が生まれる」


ようはその間に奏波を戦える状態にまで育てろということだ。

うむ。悪くはない。対クロードとローテに重点的に戦力を掛けなければならないが生半可では意味がない。現状簡単に伸び代を発揮されることを期待できるのが奏波だけでありこれを使わない手はないということ。

そもそも魔力量や出力だけを見ればルワンダやテオよりも奏波のほうが強いのに、いざ実践となると歴然の差が生まれているという不可思議具合。

乃亜に関しては奏波だけを持っていかれると扱いに困るからついでに連れて行けということだろう。


「でもなぁ……」

「まさかと思うが女と野宿するのが気不味いとか童貞みたいなこと言うなよ?」


(テオ、マジ後で覚えてろよ……!)


「奏波を強くしてやるにしてもこれ以上伸ばしてもお前たちの期待通りの強さはならないと思う」

「どういう意味なんです?」


純粋な奏波が疑問に思ったのか訊ねてきたが言いづらい。


「……やはりただの男の子(おのこ)だな」

「なんか言ったか?」

「何でもない。が、こうなったら本気で仕上げてもらわねば困るのも分かってくれ」


……あんまりそういう修行方法はしたくなくて避けていたのだが。


「分かったよ。こうなったら真面目に嫌われることにしてやる」

「だからどういう意味なんです?」


隠語を使ったような話に着いて来れていない奏波である。


「とにかくこの話はこれで終われ。あとは合流後の攻め方だな」

「やはり内部構造が全く分からないというのが難しいですよね」


内部の構造が分からない以上は手当たり次第に人を使い走らせるしかないが、生憎そんなことに大人数を割こうものなら今度は逆に俺たちが屋内に押し込まれ袋叩きにされる。

それは俺が空間魔法を使えば解決できるが空間魔法が得意だということだけはなんとしてでも言いたくない。

如何にしてこの一世一代の難題をクリアするか頭をフル回転させる。


「……やはり人海戦術であたるしかありませんね。可能な限り戦力を残しつつカーディス邸へ」

「あ、あの──」

「おいコラ待ちやがれ。開示しようとすんな」


乃亜がエレナを助けようとする代償に俺を殺そうとしてきやがった。こっちはこの会話(くだり)で勘づかれないか現在進行形でヒヤヒヤしているところなのだが。


「ジェスは、「だから待てって言ったんだろうが、っておい奏波邪魔すんな!」

「これはどう見ても黙っているお師匠様のほうが断然悪いです」

「分かった!何でも一つ言うこと聞いてやるからマジで止めてくれ!」

「ごめんねジェス。そういうのより、困ってる人を助ける方がずっと大事だと思うから」

「爽やかな笑顔で言うな!助けた後に新しい問題を作ってどうする!?」


このままだと師匠としての威厳どころか人として色々と失うかもしれない。

こうなったら羽交い締めしてくる奏波を力づくで振り払って強引に乃亜の口元絞めてやる。


「奏波。羽交い締めするならもっと頭と肩甲骨を沈める沈める感じでやった方がいいぞ」

「何余計なアドバイスしてやがんだテオ手前(てめぇ)!」


的確な指示によって下手くそな羽交い締めが補強される。


「ジェスは、」

「止めろぉーーー!!!」

「空間魔法が得意だそうです。それも精度と範囲は曉圏(ぎょうけん)以上だとか」


あ、終わった……。

稀に漫画であるお漏らしシーンのキャラとかこんな感情なのだろうか、などと心底どうでもいいことしか考えられない。


「ぁえ?マジで男の間で伝説にされてるあの?」

「現代の魔法術式において、使い手が居なさ過ぎるあまり一切対策が成されてなくて、」

「日常で微塵の対応もないせいでスカートの中覗き放題、女湯も覗き見し放題の空間魔法?」


項垂れる俺を処刑するかのような罪状を述べられる。

テオが爆笑しているのはまだいい。だが今後とも付き合いが長いであろう乃亜と奏波には追い打ちのよつに冷ややかな視線を浴びせられてちょっと泣いた。



*****



「おいお前らのせいだぞ。隅っこでぐずぐずしてるあいつを叩き起こさないと空間魔法を使った作戦を話し合えないだろ。何のための会議だ」

「最後に加担したテオが言えたことではないな」


ルワンダがテオにお仕置きのチャップを浴びせる。


「え、えぇっとジェス?その、ごめんね。私はそ、そんなにき、き、気にしてな、ないから」

「元凶のお前が一番後味悪そうではないか」

「うぐっ」


私もルワンダに言葉の刃で刺される。


「とはいえ流石に引きますよ。セクハラし放題じゃないですかこの能力」

「……わざとやったことないもん」


当事者はすっごくか細くボソッと反意を示している。

語尾が「もん」になっているから私たちが見えているもの以上にダメージを受けているのかもしれない。


「というか本気に空間魔法の対策って無いんですか?」

「存在しないとは言わんが、それよりも効率的と言われている基本技の曉圏(ぎょうけん)の使用率が魔力を扱う者の全てを占めていると言えるからな。極端に使用者がいないものに対応策を敷くのも馬鹿らしい」

「使用者の事例は先程みなさんが挙げられたような犯罪行為ばかりでして」

「それも歴代、ここ三千年程度遡っても十件に満たないだろうな」


テオ、エレナ、ルワンダがその真相を告げて行く。

あまりにも稀すぎる対象に力を割くのは非効率という考え方も理解できる。


「お前たちは本人から聞いたことがあるかもしれないが、空間魔法というのは曉圏に比べて圧倒的に負担が大きいんだ」

「俺も魔法書で見たことがある程度だがな、なんか余計な情報まで過不足なく取り込むせいで脳がキャパオーバーするらしい」

「それに代わって曉圏ならば習得は容易、ただの感覚器官の拡張だから見たいものだけを見れる無駄の無さ。加えて魔法への応用技術として基礎中の基礎。使用者がいないのは使い手を選ぶのではなく、より効率性を重視したことが原因だな」

「私はお師匠様から聞いたことありますね。その時乃亜は居合わせていませんでしたけれど」


私が居なくてジェスと奏波は一緒にいた時間?

思い当たるのは……確か奏波にイジメられて、


よし思い出すのはやめよう。


「とにかくこれで解決策は見つかりそうですね。ジェスの探知範囲であればある程度まで近づけば──」

「お師匠様の探知範囲は世界全域らしいですよ」

「……ちょっともう一回言ってもらっていいですか?」


私も探知範囲が世界全域というのは初耳だ。

どうやら通常の戦略的には色々破綻させるものがあるらしい。


「一対一の戦闘はともかく軍団規模なら最上位に欲しい能力だな」

「堅物のお前もついにそういう癖(へき)に目覚めてくれて安心したぜ」

「そうだな。盟友である其方(そなた)の所望であればいつでも生き埋めにしてやろう」

「ははは。冗談を使えるようになるとは成長しているみてぇだが目が笑っていないのが駄目だな」

「ははは。そうだな。冗談として受け取るかはテオの勝手だ」


なんか陰険な雰囲気になってきているが二人は旧知の友人らしいしそういうものなのだろう。

その間で奏波がジェスが自分で言っていた空間魔法について色々とエレナに説明していく。


「それはともかくとして、そうなるとまじでジェスを復活させないと話が進ないぞ」


とはいえ男としての様々な尊厳を失ったばかりである。そう簡単に払拭することは出来ない。


「おいジェス。お前って別の世界では王様やってるんだよな?配下たちは空間魔法を扱うこと知ってんのか」


テオはまず、日常的な会話からどうにか戻らせようとする。


「……知ってる。よほど遠くを見たいとき以外は曉圏を使えばいいだけの話だし、戦闘でもしてなければ空間魔法で壁を透過して見る理由もない」

「それで、女湯覗き疑惑は?」


なんで奏波は追撃ダメージを与えようとするのか。


「うちの師団長たちの実力なら見られていることに気付くからそのまま証人だ。帰ったら聴取でも何でもしてみろ俺に余罪はない絶対決して」


最後に念を入れるように同じ意味の言葉を繰り替えしているところを見るに必至さが尋常ではない。


「乃亜もなにか言ってあげてくださいよ。弱っている今こそつけ入るチャンスです」

「奏波は私を悪女に仕立て上げたいの?」


何もそこまでして気に入られたいとは思っていないのだ。私は慎重に回り道を選ぶ性格なので。


「ねぇジェス。私はそういうものが趣味だとしてもちゃんと受け入れるから」

「大前提俺が変態ということにして話進めてんじゃねぇ張っ倒すぞ」


卑下しない方向性に寄せたが怒らせてしまった。

すると奏波が私の横にしゃがみ込んでぼそりと、


「その『ちょっとアリかも』みたいな顔を早く隠さないと第二のスケベキャラになりますよ」

「だれが第一のスケベキャラだおいコラぁ!」


次第にますますジェスの怒りがヒートアップすることになってしまった。


その後色々と乱闘騒ぎになったが最後はみんな仲良くなって幕を閉じた。



補足;どのみちジェスに女湯を覗く度胸はありません。流石はヘタレ中のヘタレ。

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