昔の話と選ぶ者
ある家族の昔のお話。
だいぶ短いです。
薄暗い部屋の中に、それは居た。
それは壁一面の本棚から分厚い本を取り出し、パラパラとめくった。
「次の子はこの子、かな?」
それが発した小さな声は、誰の耳にも届かず消えた。
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昔々、あるところに、幸せな家族がいました。父と母、姉と妹の四人家族で、いつも笑顔に包まれていました。賢く、優しい姉と、愛嬌のある妹。誰もがその一家を『幸せ』だと言いました。
しかし、幸せは永遠には続きません。ある日突然、姉が行方不明になってしまったのです。一家は必死になって姉を捜しましたが、いつまで経っても姉が見つかることはありません。
父と母は元気がなくなり、妹にはどうすることもできません。そこにはもう、『幸せな家族』の見る影もありませんでした。
妹は必死に考えました。
姉を見つける方法を。父と母を元気付ける方法を。
そして、思ったのです。自分が姉になれば良いと。
妹は姉になろうとしました。
姉と同じような服を着て、姉と同じ髪型をして、姉が大好きだった本を読んで。
それを見た父と母は、元通り、元気になりました。
しかし、妹が姉の代わりとなったことで、『妹』という存在が消えてしまったのです。しかし、妹はそれでも良いと考えました。
姉は、賢さと優しさを持っていた。
妹は、愛嬌があった。
逆に言えば、『妹は、愛嬌しかない』。
愛嬌だけでは生きていけない。
妹は思いました。
「賢く優しい姉になりたい」と。
そうして、妹は姉に成り代わりました。
一家はそのうち、姉を捜さなくなりました。
あたかも、もともと三人家族だったかのように暮らしました。
姉が行方不明になり、『妹』という立場の存在が消えました。
それでも一家は笑顔でした。
妹はそれで満足でした。
しかし、彼らを『幸せな家族』だと言う人はもうどこにもいませんでした。
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「…うん。やっぱりこの子がいい。こちら側に誘いにいこう。」
本を閉じて、それは言った。
その顔に薄く笑みを浮かべて、暗い部屋を後にした。
不思議の国に導かれる人を選ぶ者。
さて、誰でしょう。
次回、女王になるまでのお話。




