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一、ゲームスタート

 気がついたら、彼は机に突っ伏して寝ていたようだ。

「ん・・・・やべ・・」

 確か五限目の科学の時間だったはずだ。昼食後のこの時間は眠気が一番襲ってくるので警戒していたようだが無駄だったのだろう。今日は先生の指名で課題を答える予定だったので、彼は焦って顔を上げた。

「あれ?」

 顔を上げると知らない人物が八人いた。

 しかしまず違和感を感じたのはそこではない。なんとここは教室ではない。見える景色は青空、目下に見えるのは・・・

「高っ!! なんだこれ!?」

 地上何階なんだろうか、明らかに落ちたら死ぬ場所に席がある。

 まず、何故授業中の教室からこんな場所にいるのか。周りに座っている八人も気になったが、あまりの急展開に思考が追いつかない。

 会議のような座り方と言えばわかるだろうか、長机三つを「コの字」に配置した状態で、机一つにつき三つ席があり、計九つの席がある。彼は「コ」の一つめの机の真ん中の席にいる。

 床はガラス張りでかなり大きい。四隅には鉄骨があり、その鉄の足は地上まで伸びている。

 そして、空中にいる九人の手足は椅子に固定されていた。

「やっと最後の一人が目覚めたみたいだな」

 突然右隣の男が話しだした。

「随分冷静だけどこの状況なんなんすか?」

 彼はパニックになりつつ尋ねる

「俺も詳しいことはわからないが、お前が寝ている間に全員に話を聞いたところ、ここにいるのは全員違う高校の生徒らしい。お前はどこの高校だ?」

「え、第二高だけど・・・」

「やはり全員違うみたいだな」

「そんな分析じゃなくてさ、この状況についてなんもわかんないんすか?」

「わからんな。全員授業中眠ってしまった後気づいたらここにいたようだ。」

「で、なんでみんなこんなに冷静なんすか」

「お前は今起きたからわからんだろうがもうここに来てかなり時間が経っている。全員一通りパニックになる時間は終わってるんだよ。」

 右隣の男の発言を聞き、彼は辺りを見渡した。

 確か寝たのは五限目なので、まだ昼過ぎだったはずだが辺りは少し日が暮れかけていた。

「そういえば名前を聞いていなかったな」

 右隣の男は思い出したように問いかける。

「俺は前田 柊二しゅうじ。あんたは?」

「俺は後藤 玄だ。第一高の生徒。お前が第二高だったことを考えると「コ」の書き順に従い第一高から第九高までの生徒が一人ずつ座らされているようだ。」

「なるほど。しかしそこまでは理解できたけど状況が全く飲み込めねぇな・・・」

「全員そうさ。最初は騒いでいたがどうすることも出来ないままこんな時間になっちまった。もう黙るしか選択肢がなくなったんだよ」

「しっかし手足が全くうごけねぇな・・・とれねぇのかこれ・・・っ・・・くそっ」

 柊二は強引に手の固定を外そうとした。


 その時・・・


『はいはーい皆さん!!お待たせいたしました!やっと全員起きたようですね~待ちくたびれましたよ~やっっっっっとメインイベントが始められるみたいですねぇ~』

 突如ガラス張りの床の中央辺りからかなり大きな音で声が聞こえた。どうやらこの部分だけスピーカーになっているようだ。

『さぁさぁわくわくしますね~一体誰が最後まで残るんでしょうねぇ』

 突然すぎる声の登場に宙に固定された九人はざわつく。

 そんな中、玄が冷静に話し始める。

「最後まで残る?一体何をしようとしているんだ。お前は何者だ?」

 スピーカーから笑い声が聞こえた後、説明が始まった。

『私の正体などどうでもいいでしょう。最後にでも教えてあげますよ。これから皆さんに行っていただくのは簡単なゲームです。』

「ゲーム?」

『ええ、ただし負けたらその場から落ちますけどね。』

「!!?」

「えぇ!? なんだよそれ!!?」

『そして敗者が失うのは一つの命だけではありません』

「どういうことだ・・・」

『敗者にはその場から落下してもらいますが、それと同時に各校で教室に拘束されているあなた方のクラスメイトも全員死にます。落下と同時に教室に毒ガスが流れますので。』

「なんだよそれ!!?」

「・・・・」

「な!?」

「お、おかしいですよそんなの・・・」

「どういうことよ!」

「めんどくせえなぁ・・・」

「どうすれば・・・」

「一体何が目的?」

「うわあああああああ」

『まぁまぁ皆さん一斉に喋らないで下さいうっとうしい。単純な話でしょう。ゲームに勝てばクラスごと助かる。負けたらクラスごと全員死ぬ。以上。』

 淡々とスピーカーから放たれる言葉に先程までざわついていた一同は言葉を失う。

『じゃ、文句がないなら皆さん参加ということで始めますね。』

「うわあああああ!!ま、待てよおおぉ!!俺死にたくねぇよ!!!なんなんだよお前!!!」

 先ほど一番騒いでいた一人が急にパニックになり出す。

「遠くから調子のってんじゃねぇよおおおお!!顔出せよこのやろォ!!」


 ガコンッ 


 彼が叫ぶと同時に、彼の椅子の下のガラス張りの床が抜けた。


「え!??」

「おい!!」

「まさか・・・」


「ぎゃああああああああああああああああああああ」


 ガッシャアアアァァァンという轟音が鳴り響いた。

 残った全員が恐る恐る下を見るとなにか下の方で赤く染まった点が見える。

 ”あれは何なのか?”全員が同じ答えを予測は出来たが、信じることはできなかった。信じたくもなかった。


『”文句がないなら皆さん参加”と言いましたよね?文句がある方は不参加ということで舞台から外しましたがどうですか皆さん。まだ不参加の方がいるなら受け付けますが。』


 あまりにも強引なやり方に誰も口を出せなくなり、全員うつむいて黙ってしまう。

(なんなんだこれは・・・いきなり目の前で人が落下して・・・多分この高さだから・・・死んじまってるのか?無理やりすぎるだろ・・・)

 柊二は一連の展開についていけず困惑する。

『誰も文句はないようですね・・・それでは皆さん、ゲームを始めましょう。ゲームといっても簡単ですよ?ただの討論です。トークテーマも簡単。それは、”この場で誰が要らないか”です。』

「それを討論していって誰が落ちるかを決めるってのか?」

 玄は少し声を荒げて尋ねる。

『最終的には決まりますよ。ただ”あなたたち”が決めることではない。わかりますかねぇ?まぁやっていけばわかりますけどねぇ~』

「思わせぶりばっかり言ってんじゃないわよ!」

 第三高の位置にいるミニスカートの少女、渡辺 りんが急に叫ぶ。

『おっと、まだ文句を言う不参加者がいましたか?』

「っ!?」

『どうしますか?まだ間に合いますが』

「わかったわよ!やればいいんでしょ!」

 鈴は歯を噛み締める。

『それでは、最初は五分間にしましょうか。自由に討論して下さい。別に私の文句を言ってもらっても構いませんよ~?はい、スタート。』

 ブツッ という音が鳴り、スピーカーの音は途絶えた。


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