61 ダイアナの失恋?と決意 兄は妹が可愛い
フォルテスの浮気!こんな衝撃は、今までなかった。
フォルテスはダイアナとは幼馴染。子供の頃から仲が良かった。婚約しても仲たがいなどしたことがない。いつも優しく甘えん坊な弟のような彼だった。
学院に入って彼は、行動的で勉強もできる。リーダーシップが取れる頼もしい彼になった。
背が高く、可愛げのないダイアナは少し内気な女の子になった。それでもフォルテスはダイアナを婚約者として、大切にしてくれた。
学院を卒業したらフォルテスは王都でしばらく働く。ダイアナは花嫁修業と男爵夫人の仕事を覚えるためにエドワード家に通う。
そして17歳で結婚の予定だった。
そんな夢を見ていたのにフォルテスが変わった。学院2年の終わり。男の付き合いがあるからとデートの回数が減った。
同級生の仲間と楽しげにしている彼をよく見るようになった。ついついフォルテスを目で追ってしまう。目が合えば手を振ってくれる。それが嬉しい。
彼を目で追う癖が付いた。3年になると彼は、生徒会役員になった。凄い。
忙しい彼を手伝うのまでに時間はかからなかった。宿題の手伝いやレポートの代行。テスト前の勉強会。
もともとダイアナは優秀だった。兄のシャープと一緒に家庭教師について学んでいた。学院の勉強は復習に近い。貴族ならほとんど入学前に家庭教師の指導を受ける。
ある日フォルテスにテスト結果が良すぎると言われた。
フォルテスは生徒会の会計になった。最初は統計の間違いを確認することを頼まれた。そのうちどんどん仕事が増えていった。他の役員の仕事までフォルテスが
請け負ってダイアナに回すようになった。
「これは、私の字じゃまずいのでは?」
「ああ、大丈夫だ。外に出す書類じゃないから。ダイアナに手伝ってもらえて
本当に助かる。君が婚約者で良かった」
「・・・・・・」
不安な思いを持ちつつも、断る勇気もなく日々は過ぎた。
今日は、ダイアナの誕生日。久しぶりのデート。まさかそこでフォルテスの浮気を知るとは思わなかった。ただただ驚いた。カフェの前で笑顔で別れた。ダイアナの負け惜しみ。
でも・・・良かった。ライとグレイに出会えたから。
涙が溢れて止まらない。化粧はぐちゃぐちゃだ。侍女もつれていないしどうしようか・・・・。そんな時、小さな女の子に助けられた。そのまま女の子の家について行った。あとで知らない人について行ってはダメだと叱られた。そんなことわかってる。
女の子の名はライ。中性的で可愛い子。弟にしたい。
たどり着いた家。可愛い!子供の頃読み聞かされた妖精の家のようだった。
小石の石畳の小道。その周りに色とりどりの小花。池には見たことないきれいな魚?驚きと喜びで涙は止まった。
さらに猫がしゃべる!ありえないがありえた。しゃべる猫⁉
猫のグレイの説教が素晴らしい。言い返せない。また的確に私の胸をえぐる。曇っていた私の目は、霧が晴れて本当の自分に気が付いた。
それも大事だけど。ライの操る生活魔法?が凄い!見る間にくすんだ私の髪が輝く。化粧を落とし薄く粉をはたいて目じりにラインを入れた。
ライちゃんは化粧してない。それなのに今までとまるっきり違うのにすごく素敵。
借りたドレスが今まで着たことがないほどフリルが少ない。すっきりした形。さらりとした紺色の絹。これ手作りだって、驚いた。この変身が目をつぶっている間に出来上がっている。鏡の向こうに凛とした母に似た私が映っていた。
お昼の食事が最高!食べそこなったパンケーキも食べることができた。
年下なのに薬師として生計を立て、この家を維持している。悪い奴をやっつける頼もしさ。料理人のように美味しい食事。魔法を操る指。
どれもダイアナにはない。ただ学業の成績が良いだけ。悪い事と思いながらも流された。好かれるために自分を偽った。きっといつかはフォルテスとの関係は破綻した。1年後か5年後か・・・・
グレイの小言に胸をえぐられ、ライちゃんに救われた。まずは兄に助けを求めた。
兄に助けられた馬車の中
「ダイアナは、なにが悪かったかわかる?」
「自分を見失ったこと。闇雲にフォルテスに従ったこと」
「今はどう思う」
「自分を偽っていた。良くない事と分かっていたのにフォルテスを助けた」
「どうしたらいい?」
「自分を取り戻し、フォルテスと婚約解消。自分を偽って生きて行きたくない」
「決意がしっかりしているなら兄として手助けするよ。まずは情報を集めてから。最後に父に交渉だ」
兄は人知れず情報を集めた。
ダイアナがフォルテスに殴られそうになった時も知り合いの教師に会っていたらしい。
ダイアナは日常に戻る。フォルテスが全然気にならない。彼も声をかけてこない。友人たちと過ごす日々がとても楽しい。彼に取られた時間を有意義に使えた。
成績が上がる。クールな雰囲気に輝く髪、もともとスタイルの良かったダイアナに声をかける者が増えた。自信が生まれた。
シャープはカール男爵の長子。いずれは当主になり領主になる。
父は普段とても家族思いで優しい。母の方が厳しいくらいだ。妹二人もおてんばだが可愛い。すぐ下の妹、ダイアナが婚約者のフォルテスに殴られそうになった。
「あれはいつから・・・変わったんだ?」
「・・・・」
「ダイアナ。学院の成績は良いのに。頭悪い」
「やっぱり。この間グレイにも言われた」
「グレイ?」
「あっ、この間助けてくれたライさんの家の人」
「とにかく。あれはダメだ。きっと後継にもなれない」
「どうして?」
「悪すぎる。生徒会の金を横領してた」
「えっ!そんな・・・」
「それに、弟の出来がいい。時間を作っては、領地にも父親と出向いている。
どちらが有望かわかるだろう」
シャープは調べたことを全部ダイアナに話した。ダイアナの決意が変わっていないことを確認した。
シャープは妹を連れて両親の待つ執務室に向かった。
手渡された報告書を父が読み母に手渡す。
「お父様。申し訳ありません。フォルテスとの婚約を解消したいです」
「うむ」
「あなたはそれでいいの?」
母の気遣う声。
「ぜひ婚約解消してください。お父様、お母様には失望されてもフォルテスとの結婚は考えられません」
「仕方ないな。こんな報告書を見たら、大事な娘を渡せないな。あとはこちらで話をする。学院卒業後の計画が変わったんだから、よく考えなさい」
あっけなく両親の承諾が取れた。
「あの、外で働いてみたいです。
今以上に学業を頑張ります。視野の狭さが今回のことを生んだと思います。自分で考える力を持ちたいです」
「自分をしっかり持つのに男も女もない。時間は与える。好きにしなさい」
「母さんは今のダイアナのほうが良いわ。自分を知るのは、難しいけど
素晴らしいことよ」
母に抱きしめられたダイアナは涙を流した。その後ダイアナを部屋に戻した。
「男爵は知っているのか?」
「学院から報告がいっています。今なら婚約解消の話ができると思います」
「良く調べたな」
「可愛い妹の初めてのお願いです。張り切って調べました。フォルテスは嫌いでしたから」
「お前とはそりが合わなかったな」
「真面目そうな演技が嫌だった」
「あとのことは領主同士で話をつける。婚約解消は必ずする。心配するな」
「破棄ではダイアナに傷がつく。・・・仕方ないですね」
「隣同士の領地だからこそ正義だけを振りかざしてはだめだ。それを上手くやるのが当主の仕事だ」
「ところでダイアナを変えたのは誰だ?」
「わかりません。ただ街であった女の子の家の人らしいです」
街で出会った女の子の家の人?が、猫だとは永遠にわからない。
ダイアナは夕飯を美味しく食べて、ぐっすりと眠った。
4年の総合成績は学年で3位。思わずにんまりとした。残りの1年を有効に。
まずは、ライさんに魔法を教わろう。あの不思議な魔法を。
あの暖かい風!一声できれいになる魔法!泣きはらした目を癒すあたたかな風!美味しい食事!しゃべる猫!
不思議いっぱいのあの家にもう一度行きたい。
ダイアナは、ライの家に行くための計画を何日もかけて練った。
まずは先ぶれを出す。頑張るぞ!
ダイアナの心にフォルテスはもういない。
誤字脱字報告ありがとうございます。
ライをダイアナの一つ上15歳と書きましたが修正しています。
ダイアナは14歳 ライは独り立ちが12歳、今は12歳後半です
内容に変更はありません。
誤字脱字報告ありがとうございます。




