60 俺は、何を間違えた (3)
フォルテスは父に問い詰められてから数日間、波風立てぬように過ごした。
あれだけ付き纏っていたマリアーナは、今は嘘のように側にいない。
時折目ですがるような様子が見られたが、行動を起こさなかった。
バカをやった友達が一人抜け二人抜ける。賭け事に参加しなくなり、パーティーを開くだけの人も集まらなくなった。フォルテスは今まで手を抜いていた学業や生徒会の仕事に忙殺されるようになった。
4年の最後の総合テストの結果が発表された。いつものようにフォルテスは
10位以内だろうと思いつつ掲示板を見た。
20位・・・・嘘だ!唖然としているところに
悪友のザンタックが現れた。ザンタックの順位を見れば俺よりも良い。
「フォルテス、どうしたんだ?今回は随分順位落としたな。4年の成績は就職に影響を与えるのは知っていただろう。4年総合と5年前期、5年の総合そして卒業時の最終評価。みんな目の色変えて頑張ってる」
俺は爵位を継げばいい。
「俺は家督を受け継ぐわけでもない。さらに三男だ。スペアでもない。でもこの間父が領地のとび地を任せてくれると言ってくれたんだ。
お前に比べたら小さいが俺なりに盛り立てていこうと思っている」
あの投げやりな悪ガキだったザンタックが真顔だった。
「じゃあな。俺、領地経営追加したんだ。これからは遊べないけどお前は長子だから安心だな」
そう言ってザンタックは離れていった。
くすぶっていた頃から見ればいつの間にか背が伸びた。顔つきが変わって好青年に見える。女生徒が彼を目で追う。
ああ・・もうお遊びの期間が終わった。今でも遊んでいる奴らは、卒業後も
金に困らないか本当の高位貴族だ。
俺だけ残された。今までダイアナの手助けでどうにかなっていた。これが俺の実力なのか。そんなはずはない。
フォルテスは4年の前期の成績が良かった。4年総合の成績に自信があった。
「フォルテス。昨日学院に呼び出された。
君は生徒会のお金を着服したのか?」
学年休暇が始まった朝、父に呼び出された。突然の話に意味が分からない。
「そんなことはしていません。僕はまじめに仕事していました」
「ほぉ、ならこの会計報告の文字は誰の字だ。生徒会の仕事は部外者に任せてよい仕事はないはずだ。今は下請けに出すことは許されるのか?
監査委員が10金貨ほどの不正な金の動きに気が付いて学院に報告し、調査が行われた。不正なお金の出費は君が原因だった。色々問題が判明した。
金は大した額ではないが横領することが問題だ」
フォルテスが生徒会のお金を借りたのは、賭けの胴元として急に金が必要になった時だ。生徒会の会計に入った初めの時、預かった金から少し借りた。
返すつもりだった。
ただ誰にも気づかれなかったことでそのうち忘れてた。金額は多くはないが数回借りた。父に言われて思い出した。
「それだけでなく学園で賭け事をしたり不適切なパーティーを開く。中には
大人顔負けに娼婦まで招いていたらしいな。それもお前が主催だと言われた」
「娼婦が来てるなんて知らなかった。みんなが楽しく社交できるように場を
設けただけだ。俺にはダイアナがいるのに、そんなことはしていない」
誰だ!娼婦を連れてきたのは。
「フォルテスがそこまで落ちていないのは分かっている。だが、パーティーの主催者はパーティーのすべてに責任がある。
お前の母が出向いている社交にも、細かな取り決めがある。
それを守らなければ、貴族としての失点になる。
社交界では生きていけない。
まあそういうことは女性のほうが多く学び夫を助けてくれる。だからこそ
私達を含む貴族は、十分気を付けている」
「最後に、ダイアナとの婚約は解消になった。
本来なら婚約破棄でも仕方ない。カール男爵がまだ若い二人に傷は残したくないと言ってくれた。だが当主としては、婚約破棄だと思っている。
女性に手を上げるなど情けない。
まして女性を子供を産む道具のように扱うとは・・・
私は妻にそんな思いを持ったことはない。
家督は弟が継ぐことになると思ってくれ。
残りの一年、頑張って自分の身を立てろ」
レポートを代行させたこともばれていて4年の総合成績は悪かった。
ありえない。どうして婚約解消・・・婚約破棄・・・・
「ダイアナは・・・?」
「カール男爵はダイアナのたっての希望だと言っていた。
仕方ないだろう。これだけの事を向こうは調べ上げていたんだ。
随分前から準備していたようだ。
とりあえず共同事業には影響が出ないようカール男爵が気を使ってくれた。
ダイアナに縋りつくなよ。彼女は4年総合で3位だそうだ。婚約の問い合わせが来てるようだ」
「どうして? 俺と婚約していたのに」
「パーティーにエスコートもしない。二人で出かけることもない。婚約者が
いるなんて思わない。逃がした魚は大きいな。この失態を糧にしもう一度
自分を立て直せ」
気が付けば自分の部屋にいた。どう歩いてきたかも思い出せない。
5年時の生徒会名簿に自分の名前はない。さすがに貴族中心の学院だけあって、フォルテスのことは公にされなかった。
知っている者は知っている。少し遠巻きにされた。
素知らぬ顔をするしかなかった。
マリアーナは、大きな商会の男子生徒と婚約したと噂が流れた。ダイアナは
変わらず令嬢達と談笑している。輝く薄紅色の髪が窓から差し込む光に反射して輝いていた。こんなにきれいな女性だと今更気が付いた。
学院の4年をほとんどまじめに勉強しなかったフォルテスにとって5年の成績はもちろん振るうことはなかった。
俺は、いつ何を間違えた。
誤字脱字報告ありがとうございます。感謝しています。




