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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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42 リアお婆さんの話

 食事が終わりリアお婆さんが心配なので寝つくまで側にいることにした。


「ライちゃん、薬師のお師匠さんのお名前知ってる?」

「薬師のお婆としか知らない。

私がヨロンの街でお世話になった商人のボブさんなら、時々お婆のとこに来ていたから知っているかも。お婆は元は良い所のお嬢さんじゃないかって言っていた。色々な本を持っていたし調剤道具も良い物だって。庶民の薬師にはそろえられないと言ってた」


「髪は私みたいな茶色かし・・・でももう白髪が混じって分からないわね。私にはアリーシアという双子の姉がいるの」

リアおばあさんの話はゆっくり始まった。


「中流貴族の双子として生まれたの。

最近は双子を昔ほど忌み嫌わないけど、お祖母様の時代はまだまだ忌み嫌われていた。両親は分け隔てなく育ててくれた。


祝福の儀で私が錬金術を、姉のアリーシアが薬師のスキルを得たことから始まった。昔気質のお祖母様が双子で生まれたことも気に入らない。

そのうえ魔力が少ない姉を庶民の薬師のスキルが御似合いだ。うちの孫じゃない。どこかに養子に出せ。事あるごとに責めたの。


 当然生んだ母にも当てつけの様に妹の私とあとから生まれた弟を可愛がった。父が幾ら注意してもお祖母様は変わることは無かったわ。

 姉は責められ心の弱った母を心配して父の知り合いの薬師に弟子入りして家を出てしまった。父は姉が不憫だったんだと思う。


 元々頭が良く手先も器用な姉はすぐに師匠の一番弟子になった。師匠に連れられて薬草を求めながらあちこちの村や町に出かけ薬を作って売っていたらしいわ。後から父から聞いた話だけど。


 私はまだ子供だったから姉に捨てられたと思って少し意地の悪い子になっていたの。私にあんなに優しいお祖母様が、姉を追い出したなんて思っていなかったから。今から考えればいくらでも気づけたのに。


 父はお祖母様に隠れて姉にいろいろ支援していたようだけど、薬師の師匠が亡くなって姉の行方がわからなくなったみたい。

きっと姉が自ら連絡を絶ったのだと思う。


 わたしが15歳ごろお祖母様が亡くなった。

 そのとき、両親が姉に何もしてやれなかったと泣いているのを、私と弟は見てしまったの。

弟は姉の事をほとんど覚えていない。


 わたしはこの時、姉が出ていった理由を知った。そしてこの小瓶と同じきれいな薄紫の魔力ポーションを手紙と共に手渡された。

手紙には錬金術にはまって魔力切れ起こさないように。

師匠から錬金術の魔力ポーションの方が効果が高いが作れるようになるには時間がかかると聞いた。


ほんのりラベンダーの香り付きはリアのために作った。もし魔力が少なくなったらこれを飲んでと書かれていた。この小瓶のポーションは姉が作った物で間違いないわ」


「薬師のお婆が私に託した木箱です。領主様に届けられたら届けてほしい。無理しないでいいと言われていました」

ライはポーチから薬師のお婆から預かった木箱を差し出した。


「そうよね、庶民がそうそう領主に会えるわけないわね。この木箱には特別な魔法がかけられているわね。魔力を流すとほらここに家紋が、開けるわよ」


 木箱には特別な魔法がかけられているのかライやボブさんには開けることが出来なかった。グレイは血縁魔法だと言っていた。

リアおばあさんは何の力も入れずに木箱の蓋を開けた。そこにはきれいな石が付いた髪飾りと薬師の認可書が入っていた。


「これ・・・お父様が贈ってくれた成人の祝いの髪飾り。ここに家の紋章と名前が入っているの。防御の付与がされた特別な物だった。

あぁ、、お揃いだったのね。


家の紋章が入っているから勝手に売り買いは出来ない。姉は自分の死期を悟って家に帰そうとしたのね。こんなものばらばらにして売ればもう少し楽に暮らせただろうに。


 ライちゃん私はね、錬金術のスキルがあっても錬金術を学ぼうとしなかった。だって貴族の娘は仕事なんてせずに良い家柄の人と結婚して子を産めばいいとお祖母様に言われて育った。


 でも姉の魔力ポーションを受け取って初めて気が付いたの。自分に出来る事があるのに何もしてこなかったことに。

それからはお祖母様が亡くなったこともあるけど錬金術にのめりこんだの。時には姉の魔力ポーションを飲むこともあった。


そして夫と出会って結婚したの。二人とも跡取りでなかったし、自由に錬金術をしたくて庶民になった。実家とは今も行き来はしている。ライちゃん、母はまだ生きているの。これを母に手渡していいかしら」


「はい、お願いします。正直領主様のとこにどうやって行こうか悩んでいたんです。薬師のお婆は本当に貴族のお嬢様だったんですね。

だからマナーに厳しかったし刺繍や縫物も上手だった。魔力の使い方や生活魔法の手ほどきが出来たんだ」


 夜遅くまで薬師のお婆の話をしながら時を過ごした。

翌日ヒヤリン草で作った薬は女の子の家に届けられ数か月かけて火傷の痕をきれいに消してしまった。

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

良き年をお迎えください


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― 新着の感想 ―
[一言] そこでつながるのかあ。つまりライちゃんの師匠は双子姉妹だったのね
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