41 ヒヤリン草と火傷の薬
夕方リアおばあさんにヒヤリン草を届けるとすごく喜んでくれた。すぐに調剤を始めるらしい。ライは初めての錬金薬作りを見てみたいとお願いした。
「ライは魔力はある方かい?」
「庶民にしては多いと思います。初級の魔法は使えます」
「おお、結構あるね。誰かに魔法を習ったのかい?」
「わたしを育ててくれた村の薬師のお婆・・さんが手ほどきしてくれました」
「薬師のお婆さんから薬草や薬の作り方を教わったのかい?」
喋りながらも必要な薬草を細かく切って小皿に並べていく。
「ええ、わたし孤児なんです。独り立ちの助けになればとお婆さんから色々教えてもらいました」
「その人は元貴族のお嬢さんかな?ライの身のこなしや話し方、食事の仕方は孤児とは思えないね」
刻んだ薬草を錬金窯に入れてゆっくり煮詰める。
「う〜ん?お婆さんがどこの誰だかわからないけどいいとこの娘だったと思う。このポーチはお婆さんから貰った薬師鞄です。もう村から出ないからと村を出る時、薬やポーション、食料や調剤道具を入れて持たせてくれました」
ぐつぐつ音がしない。沸騰させない。
「ライちゃんは良い人に出会えたのね。さあ、ここからは集中するわよ。もし魔力が足りなかったら手伝って。
以前は夫と二人で作ったから少し魔力的に心配なの」
空気が一変する。
流れるように薬草を順に入れ聖水を追加する。ゆっくり金属棒で掻き混ぜながら細く長く魔力を流していく。
最初の量から半分になったころヒヤリン草の葉を追加してさらに魔力を流す。静かに時間が過ぎていく。
リアおばあさんの息が上がってきた。額に汗がにじんでいるのに錬金釜の中はとても冷たく凍ってしまいそうだ。
「ライちゃん最後にヒヤリン草の花を入れて頂戴」
ライは最後に残った花の入った小鉢を手に取り師匠に確認を取りながら錬金釜の中にそっと入れた。その瞬間ライの手を凍った手が掴む。
「ライちゃん、掻き混ぜながら一気に魔力を注いで・・・・」
リアおばあさんの白い息、冷たい体がすぐ後ろのソファーに倒れこんだ。
「ライ、金属棒を握って一気に魔力を込めて。ここ大事なの」
ライは師匠を一度振り返り金属棒をしっかり握る。
一気に魔力を流し込んだ。時としては一瞬だったかもしれないがライにとっては長い時間だった。
錬金釜の底から白い塊が浮いてきた。それをお玉ですくって用意してあった薬壺に入れてしっかり蓋をした。
錬金窯からの凍るような冷気は嘘のように無くなった。慌ててソファーに倒れこんだリアおばあさんを寝かせて布団を掛ける。
「グレイ、お婆さんの懐に潜り込んで温めてあげて。わたし温かい飲み物用意するから」
「えっ俺が・・・・・」
台所に走って冷蔵庫からミルクを出して砂糖を入れる。
お婆に持たされた中に魔力ポーションがあった。薬師だから魔力の回復にはそれほど力がないけど緊急時にはないよりましだと言っていた。
紫の小瓶を取り出し師匠の側により声を掛けながらクッションを背中に当てて半身を起す。魔力切れと冷気にやられたらしい。
意識はかろうじて保たれていた。
「リアおばあさん、お薬できたと思う。壺に詰めたわ。雪のように真っ白だった。だから今はこのミルクをゆっくり飲んで」
震える手を包むようにしてコップを持たせその冷たい手をライの温かな手で包み込む。少しずつミルクを飲み込む。
「薬師のお婆さんが作った魔力ポーションだけど少しは魔力回復するから飲んでください」
小さな瓶に入った薄紫のポーションをゆっくり口に運ぶ。
一口飲んだ後、リアおばあさんは目を見開いて小瓶を眺め残りをゆっくり味わうように飲み干していった。
顔色はみるみる良くなり体の震えが収まった。
「やっぱり一人では魔力が足りなかったわね。年かしら。ライちゃんがいてくれてよかったわ。薬は明日届けに行くわ。
ライちゃん、今日は夕飯お願いしてもいいかしら?」
「任せてください。体が温まる物作ります」
今日はミルク入りの優しいシチューを作ることにした。グレイはリアおばあさんの膝の上でまったりしている。
デザートはプリンを作る。グレイが大好きだから。
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