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神の落とし子  作者: ちゅらちゅら
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40 ノームモスとの出会い (2)

 ライは泉の周りで丁寧にヒヤリン草を探した。

気がつけばお日様が真上を過ぎていた。朝も早かったのでお腹が急に空いてきた。今日のお昼はサンドイッチだ。


泉の近くにシートを敷いて腰を下ろしグレイを呼んだ。いつもならあっという間に現れるのに現れない。もしかして魔物に襲われている?心配になってきた。

魔力を体に循環させ魔力を薄くして気配を探る。ライの周りから離れたところに小物の魔物がいるのがわかる。グレイの気配がない。


 食べ物を探して森の奥に入ったのだろうとゆっくりと気配を探りながら森に入っていく。背負い籠に入っていた白い小石を歩いた後に残していく。

迷いの森ではないが安全のためだ。

 お婆に森歩きを教わっておいてよかった。音を立てず目を凝らし気配を探って歩く。まだグレイは見えない。


 果物の木が丸坊主だ。グレイはここを通った。ラズベリーの実が刈り取られている。ジャム好きなグレイらしい。うっそうと茂った木々を抜けると小さな陽だまりが出来ていた。そこにグレイが倒れている。慌てて駆け寄る。


「おっ、びっくりした。慌ててどうした?」

グレイは呑気にライの方を見る。グレイの前には黄色い帽子をかぶった小人が泣いていた。泣いているのに可愛い。


「お昼なのにグレイが帰ってこないから・・・・この小人さんは?」

「この子はノーム、土の精霊なんだ。

花の香りに誘われて森に入ったら出られなくなったんだって。まだ子供だから仕方ないけど危機管理ないね。

今説教していたんだ」


「ノームの事言えないよ。お昼過ぎてライの声が聞こえていないのは誰?」


 ノームはグレイが注意されているのが嬉しかったのかライの足元にちょこちょこ歩み寄り手を伸ばした。

ライはしゃがんで手を差しだした。ノームは指を捕まえるとその指に口付けをした。ライとノームが光った。


「あ~ぁ精霊と契約しちゃった」

「えっ精霊と契約って?グレイみたいな事?」

黄色い帽子の小人はライの指からよじ登って手のひらに寝転んだ。

呑気な小人だ。黄色の帽子がずれてるよ。


「ちょっと俺とは違うけど。もう名前をつけてあげて。家の庭でも、畑でも世話してもらえばいいよ」

何とも投げやりな言い方だ。肝心のノームは手のひらでニコニコしながらライを見つめている。可愛い。


「名前ね 本当にいい?・・・ゲノーモス。地中にいる人という意味でモスでいいかしら」

手のひらでノームのモスは激しく首を縦に振り両手を上げて踊りだした。


リアおばあちゃんが承諾してくれたら畑を任せたいと伝えた。少しがっかりしていたようだが先ほどの泉に連れていくと大喜びしていた。

清浄な魔力の満ちた土地と泉が嬉しいらしい。迎えに来るまでここの管理をお願いした。モスを交えて遅くなったお昼とグレイの収穫した果物も食べた。


「ライ、モスがお礼に欲しいものがないかって」

「今欲しいのはヒヤリン草だね。でもここにない」

モスが自分のポケットからヒヤリン草を取り出した。


「あっヒヤリン草・・・貰っていいの?」


 グレイが言うには森の中でヒヤリン草は珍しいので見つけたそばから土ごと採取して良い場所に植えようと保管していた。

契約出来て、美味しい食事がもらえたのでどうぞと差し出した。


 森の大きな葉に包むとライのポケットに入れろと言っている。お礼にライの蜂蜜飴を袋に入れて手渡した。ノームには大きいが大丈夫らしい。

ノームは両手で飴の入った袋を抱えたら自分のポケットにしまい込んだ。グレイが迎えに来るからと約束してライは街に向かった。


「グレイ、森の入り口に数人冒険者かな?人がいる」

「ああ、俺たちが森に入る前からつけてきた奴らだ」

「やっぱり。最近後をつけられてると思ったんだ。家を探したりしてたからかな?」

「商業ギルドから情報が流れたかな・・・以前もあったけど困ったものだ」

嫌なことを思い出した。


「どうしよう?捕まるのもやだし・・・・森に誘い込む?迷いの森じゃないから自力で出てこられるよね」

ライとグレイは森の入口の大木の陰に隠れて様子を伺った。5人組の若い冒険者だった。


「まだ出てこないのかよ。お前本当にあいつは金を持っているのか?」

「前の街で金を持ってるって商業ギルドの姉ちゃんが言ってたから間違いない」

「でもどう見ても金持ちそうにないぞ。宿に住んでほぼ毎日薬草取りしてるし」

「でも・・・・そう言ってたもの。脅して金さえ奪ったら他の街で装備揃えて出直そうぜ」

「俺・・・やらない方がいいと思うよ・・・」

「何言ってるんだよ。ここまで来たら子供の一人たいしたことない」

「だから、子供が大金持っているというのが・・・・・信じられない」

あらら、言い争いになってしまった。悪い人ばかりじゃないんだ。


「盗賊さん!」

「盗賊じゃない」

「だって私のはした金取ろうとしてるんでしょ?」

「どこにいる」

「どこだ」

「出てこい」

泡泡しだした5人の冒険者。


「以前よその街で商業ギルドの受付嬢に難癖を付けられた。お金持ちという話は誤報だから。ギルドの受付嬢は捕まったからね。

今私に手を出したら犯罪者だよ。せっかくパーティー組んでる仲間を犯罪者にするのはどうかと思うよ」

「うるせぇ!顔出せ!」


「襲われるとわかっているのに顔出すわけないじゃない。どうしても捕まえたかったら森に入ってくればいい。森に入ってきた人は犯罪者としてギルドに申告するけどいいよね」


「黙れ!」

叫びながら闇雲に森に飛び込むリーダーらしき男を隣にいた男が腕をつかみ留める。


「お前が捕まってもいいけど俺らはパーティーだ。俺らを道連れにするな。何焦ってる。

子供が持ってるお金を奪って先を閉ざしたくない。皆が止められないのはお前に悪いと思っているからだ。リーダーが悪いわけじゃない・・・。


 前は薬草取りながらでも細々やれたじゃないか。出直せばいい。犯罪に手を染めたらあとは落ちるだけだ。

森にいる子供。悪い事した。俺たちはこのまま帰る。君は気をつけて帰ってくれ」

「うう・・・」

「泣くな。俺たちが甘かったんだ。村から出てきて順調にランクを上げてきた。調子に乗り過ぎて馬鹿をしただけだ。もう一度やり直そう」


 成人して数年だろう。Cランクになると一応冒険者一人前と言われ酒や女を覚える。ここから上に行ける者下に下がる者上がれず腐る者、冒険者の分かれ道だ。


 怪我が多いのもこのランクだ。自分の力を過信して依頼を受け未達成で違約金が払えず借金奴隷に落ちる者もいる。

 ライは他に目的があったからランクに焦りも縛られることも無い。街に向かって帰っていく冒険者の背中をしばらく見つめた。

誤字脱字報告ありがとうございます

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