魔法特訓!
とある日の昼下がり。
かあさまに抱えられて外へ出ると、とうさまとにーさまが剣の稽古をしていた。
「はっ!」
「遅い! マナをもっと上手く集中させろ。その程度では身体強化できているとは言えん!」
十分速い動きのように思ったが、とうさまからすればまだまだのようだ。
ちなみにマナというのは魔法を使うときに必要なエネルギーのようなものらしい。
「今は訓練だ、慌てなくていい。まずは脚にマナを集中させてみろ」
「はいっ。こう、でしょうか」
ぱっと見変わってないように見える……? いや、何か暖かいものがにーさまの脚に集まっている感じがする。あれがマナ?
「よし、そのままあの木に向かって走ってみろ」
「はい! って、うわっ速!?」
とうさまに言われてにーさまが走り出すと、100mほど先にあった木まで5秒足らずで移動してしまった。
「まだ改善の余地はあるが、お前の年なら上出来だろう。同じように腕にも強化をかけて打ち込んで来い!」
「はい、お願いします父上!」
にーさまがとうさまに打ち込みを再開する。先ほどとは比べ物にならないほど素早くなっているが、とうさまが身体強化をしている様子はない。
最低限の動きでにーさまの剣をさばいており、汗一つかいていなかった。
そんな二人のやりとりをみていたら私も強化魔法を試してみたくなってきた。
「あうー」
「あら、ノーラちゃんも真似したくなっちゃったの?」
「あいっ」
「う~ん、強化魔法はまだ早いかな……。簡単なものだけお母さんと練習しよっか」
そう言うとかあさまは空に手をかざして見せた。
「よーく見ててね? こうやって手の先にマナを集中させて、身体の外へ出すイメージをするの。そうすると……」
ふわりと光の球がかあさまの手から放たれた。
「あうー?(触っても大丈夫です?)」
「ん? あぁ、これに触りたいのかな? うん、怪我はしないからいいよ」
じゃあお言葉に甘えて……。おぉ、物理的に触ることはできないけど手がポカポカして気持ちいい。
よし、私もやってみよう。まずは身体の中のマナを感じて……
「うー、あいっ(こうやって、こう!)」
手の先から何か放たれる感覚とともに、弱弱しい光の球が出現した。なるほど、これがマナを使う感覚ですか。
「あうあー! (できた!)」
「思った通り飲み込み早いねノーラちゃん! でも今はまだ身体の中のマナも少ないから、練習のしすぎはメっだからね?」
「あいっ!」
「なんだ、何か楽しそうな様子だったが……。おぉ、これノーラが出したのか!?」
「わぁ、もうマナを扱うコツを掴んでるなんて……! これは兄として負けてられません!」
いつの間にか特訓を終えていたとおさまとにーさまがやってきていた。
「今日はお祝いだ! 料理長ー! 豪華なもの作ってくれ!」
とうさまいくらなんでも大げさでは……とうさまーーー!
その日の夕食はいつも以上に豪勢な食卓となったのだった