1章 プロローグ
昔から病弱で入院生活を送っていた少年は、15歳という短い人生を家族に見守られ……るようなこともなく孤独に終えた。
……はずだったのだが。どういうわけか吸血鬼と獣人の血を引いたお姫様、ノーラ・ルワールに転生したのである。
女の子になったことに最初こそ困惑していたが、今となっては些細なことであった。
なぜかというと……。
「見たか!? ノーラが俺を見て喜んだぞ!」
「違いますよ父上。 ノーラは僕を見て喜んだのです。ですよね~?」
この通り。父ユリウスと兄ノエルから溺愛されているからだ。前世ではこんなに愛情を注がれることがなかったため身に染みる。
とうさまは綺麗な金髪に澄んだ緋色の眼をしていて一見クールな顔立ちだが、私の前ではこの親ばかっぷりな残念なイケメン……いや世の中の女性にはこういう人のほうが好まれるのだろうか。
対してにーさまの髪色と眼の色は父譲りだが、優しい顔立ちをしている。何より違う部分は獣耳と尻尾が生えているという点。フワフワモフモフで触り心地の良さそうな耳がピコピコと動いている。
今はまだ鏡で自分の姿を見れないが、私にも同じように獣耳と尻尾が生えているのだろう。
「絶対俺だ!」
「いーや、僕です!」
「あう~(ふふっ、どっちもですよ。とうさまにーさま)」
だから喧嘩しないで~……。
二人が私を前に喧嘩しているとドアが開いて、母エリナが「あらあら」と苦笑しながら入ってきた。
かあさまは白い長髪に藍色の瞳をしていてにーさまのように獣耳と尻尾が生えている。一見すると子供にしか見えないが数百年は生きているという立派な大人だ。
「せっかく料理長が気合を入れて作ってくれたのに二人とも全然来てくれないんだから。ノーラちゃんが可愛いのはわかるけど、ご飯はしっかり食べよう。ね?」
「くっ、仕方がない。ここは引き分けにしておこう」
「むぅ、不服ですがそうしときましょう。それじゃあ、ノーラは兄様と一緒にいきましょうね~」
「あ、こらまて! 抱っこされるなら父様のほうがいいよな~?」
わぁぁ、収まったと思ったらすぐこれ!?
「あうー、やっ(喧嘩するなら二人とも嫌です)!」
「ほら、喧嘩する二人は嫌って言ってるよ。ノーラちゃん、聞き分けの悪い人たちは放っておいてお母さんと一緒にご飯いきましょう~」
「あいっ」
「「俺(僕)が悪かったです!」」
騒がしくも暖かいルワール家の日常。新しい家族は今日も仲良しです。




