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第21.5話 褒賞伝達式後の会談


==ディンデルギナ=エルリーン城・第一王子執務室==


 褒賞伝達式を終えて数刻後、今回の式を執り行うに当たり、裏側で動いていた者達で集まっていた。


「兄上。 式での立ち回り、お疲れ様です」

「止せ、ラングリッド。 労いの言葉は我でなく、ギャラーノ侯爵に送るべきだろう」

「わたしはすべきことをしたまでです。 殿下にそこまで言われる事はしておりません」


 世辞の矛先をギャラーノへと移す。

 ギャラーノ侯爵は民衆に対する造詣が深い人物だ。今回の式であえて敵対行動を取ることで、他の貴族の牽制をすることが可能だった。


「いや、憎まれ役を買って出た事は感謝している」

「兄上のおっしゃる通りです。 表面上は取り繕えても腹では何を考えているかわからない貴族連中に、王族の言葉を聞かせることが出来ました。 これで、ランケットへ容喙する者も減りましょう」

「殿下お二人に褒められる程のことはしておりません。 あくまで理想的な国の為。 その為ならば、自ら礎となりましょう」

「……貴族が其方の様な者ばかりであればどれだけ良かったか」

「勿体ないお言葉です……」


 これ以上褒めちぎると、案外小心者な此奴は腹を壊しかねない。話題を別の者に変更することとした。


「して、ラングリッド。 其方の首尾は如何だった?」

「……申し訳ないことに、第一目標は失敗しました」

「うむ、そうであったか」


 ラングリッドは式の間、かの異世界人であるアヤリを引き留める役を買って出ていた。

 支離滅裂なアドルノートと違い、あの少女にはまだ利用価値が存在する……というのは方便で、実態はそう頼まれたからであった。


「……そうなる気がしていたよ。 彼女は意外と強情な部分があるからね」


 そう話したこの男、マクリルロにである。


「其方がそこまであの少女に拘る理由がわからぬが、期待にそぐえず申し訳ない」

「構わないよ。 多くを期待していたわけじゃないからね」


 マクリルロはそう言い放つと、残りの紅茶を飲み干して立ち上がる。


「ボクはそろそろ帰るよ。 あまり家を空けると怪しまれる可能性があるしね」

「うむ、そうか……」


 マクリルロは、護衛も立てずに一人で室外へと出て行った。彼の出自は一部にしか知らされていないが、城内の者には奇人として扱われているので問題ないだろう。


「ラングリッド。 話を戻すが、先程の言い分から察するに、第二目標は……」

「はい、第二目標は成功と見てます。 彼女はチェチェや騎士以外の貴族と関わりがなく、警戒心が薄かった。 だからこそ、苦手意識を植え付けられたと判断しています」


 この第二目標は、実は彼女に近寄ろうとしている、ある貴族が現れたのが原因だった。

 どうしても単身活動することが多い彼女を護衛する訳にもいかず、悩みぬいた末の妥協案である。

 彼女に危害を加えない様管理するのは、マクリルロとの取引に含まれている。今後も手は抜けないだろう。


「そうか。 だが、良かったのか? 其方を城外で見かける可能性もあるであろう?」


 ラングリッドの姿は城の者でもごく一部しか知らない。それは彼の活動に影響があるからこそだった。


「それは構いません。 どうやら彼女はランケットの利用している酒場に近寄らない理由が何かあるらしいですので、現在の活動に支障はないと考えてます」

「うむ……」


 それにしても、未だに彼が外部で活動している想像が出来ない。あれだけ人嫌いであった此奴が、町の力自慢に囲まれているのだから……。


「……素朴な疑問だが、お前はランケットでもその口調なのか?」

「それはあり得ませんよ。 例えばですが…………、オイラはこんな感じの口調で喋ってたりするな~。 こういうのも、イカすだろ~」

「その姿でその口調は、頭が痛くなるな……」


 弟の知らない姿に脳が混乱する。


「だが、唐突とはいえ、かの勇者には悪いことをしたな。 敏い少年であったから、その場で機転を聞かせてくれたから良いものを……」

「だから申したではありませんか。 カーティスはそれだけの知能は有してます。 ワタシの提供した情報も役立ちましたでしょう?」

「うむ。 大陸外とはいえ、元王族という立場を知れば、貴族連中も迂闊に手が出せぬだろう」


 今回の式で、多くの意味を見出す事が出来た。本来の意味であるランケットへの権力付与もその内に含まれる。


「これで当分は、問題が起こらねば良いのだが……」

「それは無理でしょう。 次期国王の兄上が労してください」

「……まだ、お前も継承権は破棄していないだろう。 其方が継げ」

「謹んで遠慮させていただきますよ、兄上」


 そう言い放つと、ラングリッドは逃げるように執務室を後にした。


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