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第21話③ ドロップ適性測定器


==杏耶莉(あやり)=マクリルロ宅・リビング==


「ついに完成した!」

「?」


 私が朝食の準備をしていると、マークの研究室からそんな大声が聞こえる。


「マーク、どうかしたの?」


 研究室の扉を開くと、彼は室内のモニターとそれに接続されている、リストバンド型の機械を指さす。


「ついに、ドロップの適性検査をする機械が完成したんだよ!」

「適性検査……」


 以前ドロップの適性を調べる術を普及させるのが先決だと話していた。


「それって、以前私のを調べてたから出来てたんじゃないの?」

「原始的な方法でなら可能だったね」


 彼は容器を一つ取り出す。そのの中は液体で満たされ、ドロップが一つ落とされている。


「この水溶液にはキミから貰った遺伝子情報を複製して充満させている。 多様な細胞が混ざった体液みたいなものだね」

「なにそれ、気持ち悪い……」


 生物色の強い科学実験を直接聞いて、寒気がする。


「ドロップが人の細胞に反応する以上、それを調べるのは当たり前だろう? それで、この水溶液内でドロップを破壊……ディートと表現した方が正しいかな? それをすると、一瞬だけ発光するんだよ」


 マークはその様子を見せるべく、実演してみせる。注意して見ていると、確かに彼の言葉通りに瞬間的に光った様にも見える。


「一応、光って見えた気がする……」

「これは、キミの適性が高い剣のドロップだったから肉眼でも確認できたけど、実際は録画して機器判定させないと確認できない程度なんだ」


 どうでも良いが、私の口内でドロップをディートする毎に、僅かに発光しているらしい。


「これまでも、この方法で調べることは可能だった。 それを機械制御で一瞬で判断できるようにしたんだ。 これはキミ達が遺伝子提供をしてくれたお陰だね」


 現在、マークの研究には私とカティとが携わっている。手伝いらしい手伝いはしていないが、それでもマーク的には満足らしい。


「それで、ただ機械で調べれるようになったって()()の話なの?」

()()とは酷い言いぐさだね。 今までなら細胞の提供からそれの増殖をさせる手間。 そして、調べる際に毎回ドロップを消費して、なおかつ、肉眼でははっきりしない確認方法だったんだ。 それをこのバンドを装着するだけで可能になった。 素晴らしいことじゃないかな?」

「は、はいっ!」


 ものすごい剣幕で言い寄られて、私は思わず返事をする。その言い分を聞けば、彼のいう通り凄いことなのかもしれない。


「ドロップの能力が発現するメカニズムは解明できていないけど、反応をデータに落とし込めれるだけでも十二分な進歩といえるね!」

「……ねぇ、マーク。 これ使ってみて良い?」


 そこまで言われてしまえば否応でも気になるもので、私は彼にそう聞いていた。


「構わないよ。 寧ろ、調整が正しかったかテストしてもらおうと思っていたところだったんだ」

「そっかー。 それで、これを付ければいいの?」


 リストバンドを手に持って質問すると、彼は頷く。


「そうだね。 あとは不用意に動かさない様に腕をそこの机にでも掛けてじっとしてもらえるかな」

「りょーかい」


 私はこのリストバンドを手首に装着して、腕を固定して待つ。


「……痛っ!」


 すると、針で刺された様な痛みが手首に走る。


「当然だよ。 採血しなければ遺伝子情報が調べられないだろう?」

「先に言ってよ……」


 幸い痛みは大したことがないらしく、刺された瞬間のみ僅かな痛みが生じただけだった。


「それは外してもらって構わないよ」

「もういいんだ」


 リストバンドを差すマークに従い、私は取り外した。


「少しして調査結果が……、うん。 おおむね想定通りの結果になったね」


 モニターに映し出されたものは、ドロップの種類と思われる単語と、その横に数値、それが数十種類だった。


「これが適性?」

「そうだね。 数字が零の場合は適性無し。 一以上は適性ありだね。 わかると思うけど、数字が大きければその適性が強いといえるかな」

「数字に置き換えるのは意味があるの?」

「研究の基本は定義づけだよ? 何においても数字か何かに定義しないと判断出来ないからね」


 殆どの項目に零と表示されている。才能無しと宣言されているみたいで気持ちよくはない。だが、その中で一番大きい数字である剣の文字を見つける。


「一番適性がある剣で四って……。 これ、微妙じゃない?」

「そうでもないよ。 数字の最大値は九だけど、測定不可にならない様に上限をかなり高めに設定してるんだ。 推定だけど、この世界に住民の大半が二に届かない。 かなり優秀なら三という数字を想定して設定しているね」

「そうなんだ」

「だから、剣に限ればキミは至って優秀だよ? 誇りを持っていいね」

「そっか……」


 再度モニターを眺めると、見慣れない単語にも適性があった。


「マインゴーシュ? これって何のドロップ?」

「あぁ、それはドレンディアで入手したドロップだね。 産出の大半がノーヴィスディアだから一部が流れて来たんじゃないかな」

「そういう意味じゃなくて、何ができるドロップなの?」

「そっちの意味か。 ……一言で言えば左手用の短剣かな」

「また刃物……」


 火や氷、雷といった一部を除いて、結局私は剣の適性に偏っているらしい。


「……もういいや。 それで、これはどれぐらいしたら普及するの?」

「それは未定だね」

「え……」

「当然だよ。 あくまでここの機器で実現できただけで、この世界で普及させるならこの世界の技術で機械作れるようにしないといけないからね」

「それもそうか……」

「当然だよ。 ドロップ製品もこの世界基準に合わせて旧時代的な構造で制作するまではすんなりできたけど、それをここの技術力で生産可能にするまでに一番時間が掛かったんだ。 この測定機であれば、あと五六年(一二周期)は掛かる想定かな」

「そんなに!?」


 先の長い話に、面食らう。


「……でも、取り敢えずはおめでとう、マーク」

「ありがとう」

「それで、朝食が出来てるんだけど――」

「ボクは徹夜明けで眠いからこれから寝るよ。 キミ一人で取って貰って構わないからね」

「えぇ……」


 マークは呆れる私を残して、自らの寝室へと入って行った。


今日はちょっとした話をもう一話投稿します。

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