第14.5話 失踪少女の友人は憂鬱
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「どこ行っちまったんだ。 杏耶莉……」
杏耶莉が失踪して三か月が経過した。彼女の特殊な状況から、大衆は本人の意思による失踪だと判断され、碌な捜索すら行われなかった。
中学に上がってからすぐの出来事だったこともあり、他の事に意識が向いたからだろう。同級生からその話題を聞くことはもうなくなっていた。
(あいつの性格から、わたしに何を言わずに去るとは考え難いだろ……)
「――おい、六笠! 授業中だぞ!」
「ちっ……、うっせーな……」
「お前、教師に向かって――」
どうでもいい数学教師の説教を聞き流して、窓の外に目を向けた。
……
「あ……」
下校途中に、気が付けば杏耶莉の家の前へと向かってしまっていた。
「……は?」
彼女の居ないはずの家の明かりが点いていた。それに驚きつつも、理由を確かめるべく玄関のインターホンを鳴らす。
『ピンポーン』
自然で聞くことのない電子音の後に、中年女性の声がインターホンから声が出る。
「どちら様?」
「えーっと……。 わたし、杏耶莉の友達の六笠 瑞紀って言います」
「まぁ瑞紀ちゃん? ちょっと待ってね」
『ブツッ』という音がして少し経ってから、玄関から中年女性が現れる。その姿は何度か見かけた記憶があった。
「あ、おばさんでしたか……」
「あら、ワタシの事覚えてるのね」
「一度だけ、会った事がありましたよね」
「そうね。 ワタシは印象深かったから覚えてるけど、若い子はやっぱり凄いわねぇ」
「……別に、普通っすよ」
一度だけ会った事がある以外接点がないので、ぎこちない会話になる。
「……仲が良かったみたいだものね。 杏耶莉ちゃんが居なくなって寂しいのは貴方じゃないかって思ってたのよ」
「……まぁ、そっすね」
彼女の口ぶりから、まだ杏耶莉は見つかっていないらしい。
「ワタシはたまーに、こうして様子を見に来てるのよ」
「そうだったんすか……」
どうにも、会話が長続きしない。
「立ち話もなんだし、良ければ中に入るかしら?」
「いや、なんとなく気になって来ただけなんで。 わたしは帰りますよ」
「そう……」
正直、落ち着いて長時間の会話をするのは勘弁願いたかった。
「じゃあ、わたしは……」
「えぇ、瑞紀ちゃんも気をつけてね……」
「あー……、はい」
何に気をつけろというのだろうか。
玄関のドアが閉められるのを確認して、家を端から端まで見渡すしてから、わたしは帰路に着いた。
……
「お帰りなさい、瑞紀ちゃん」
「ちゃんは止めろ」
「様の方が?」
「……ちゃんでいい」
自宅マンションの借りている一室へと帰宅すると、待ち構えたように赤野に出迎えられる。
「ご友人は見つかりましたか?」
「……毎日聞くな」
この三か月間、毎日繰り返されているやり取りにうんざりしながら返答する。
「でもお嬢様――」
「――お嬢様って呼ぶな」
「……瑞紀ちゃんの元気がないのは、ワタシも気にしてるのですよ」
「悪かったな……」
無駄に元気な赤野は、大きな鍋を持ち上げて、中身を見せてくる。
「……そんな瑞紀ちゃんが元気になるように、今日は大好きな肉じゃがにしましたよ?」
「わたし、肉じゃが好きって言ったことないが……」
「花嫁修業なら肉じゃがって言うじゃないですか」
「……関係ないし、それなら早く結婚しろ」
「酷いです、お嬢さ――」
「――だから、お嬢様って呼ぶな!」
わざとらしくため息をしてから、自室へと入る。
「反抗期ですか? 思春期ですか!?」
何故か嬉しそうに扉の向こうから叫ぶ彼女を無視して、PCの電源を点けた。




