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最強の力を隠したいのに、Sランク生徒会長(ストーカー気質)のせいでちっとも平穏じゃない!  作者: 鷲尾秋水


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第25話:深淵のバグ 〜恐怖の報告と、誕生せし新たなる邪神〜

暗く冷たい地下深く。

世界を滅ぼす災厄を信奉するテロ組織【深淵の教団】の本部では、重苦しい沈黙が落ちていた。


「——申し訳ありません……。王立魔法学園には、我々の理解を絶する『理外の化け物』が潜んでおりました……!」


SSランク幹部であるモルゴスが、血まみれの包帯姿で床に平伏し、震える声で報告を終えた。

円卓を囲む他の幹部たちは、冷ややかな視線を彼に向ける。


「Sランクの小娘やAランクのガキ共に後れを取った言い訳としては、少々見苦しいな、モルゴス」


「学園に化け物だと? 我々の調査では、Sランクはアリシアとヴィンセントの二名のみのはずだ」


幹部たちが嘲笑を浮かべた、まさにその時。

教団の魔力観測班の魔導士が、血相を変えて円卓の間に転がり込んできた。


「き、緊急事態です!! 先ほどから、世界中の地下霊脈の魔力が、信じられない速度で『一点』に向かって吸い込まれています!!」


「なに!?」


円卓の奥で顔を隠していた教団のトップ——【教首】が身を乗り出した。


「我々の『魔力枯渇の儀式』はまだ準備段階のはずだぞ!? 一体、どこに星の魔力が吸い込まれているというのだ!!」


「そ、それが……王立魔法学園です! より正確には、学園の生徒会室にある……『ソファ付近の座標』に向かって、ダイソンのような猛烈な勢いで魔力が消えていきます!!」


「ソファだと……?」


(※レイがちょうどその頃、フェンを枕にして深い深呼吸(昼寝)をしていただけである)


その報告を聞いたモルゴスが、「ヒッ!」と悲鳴を上げてガタガタと震え出した。


「だ、だから言ったでしょう! あそこにはバケモノがいると! 奴は息をするだけで世界を終わらせる気だ!!」


しかし、パニックになるモルゴスとは対照的に、教首をはじめとする他の幹部たちの顔つきが、突如として『宗教的な恍惚』へと変わっていった。


「……おお……おおお……!」


教首が、歓喜のあまり震える両手を天へと掲げた。


「座して呼吸をするだけで星の魔力を喰らい尽くす、絶対的なプレッシャーを持つ存在……。間違いない。それこそ、我々が復活を目指して何百年も待ちわびた『真の邪神様』そのものではないか!!」


「「「な、なんと……!!」」」


「我々がチマチマと要石などを使わずとも、邪神様はすでに学園で覚醒し、静かに星を喰らっておられたのだ!!」


凄まじい論理の飛躍。完全なるすれ違い。

だが、世界中の魔力がソファの一点に吸い込まれているという「事実」が、狂信者たちに一切の疑いを抱かせなかった。


「作戦変更だ!! 学園への破壊工作は直ちに全面中止!!」


教首の声が、教団本部に響き渡る。


「現在、あの学園は邪神様がまどろむ『至高の聖地』である! 邪神様の御眠りを妨げる愚か者がいれば、我々教団が命に代えても全力で排除(警護)するのだ!!」


「「「おおおおおっ!! 邪神様(学園)に栄光あれ!!」」」


こうして、世界を脅かす最悪のテロ組織は、その目的を「学園の破壊」から「学園で昼寝するFランクの極秘警護」へと完全にバグらせてしまったのである。

一方その頃、王立魔法学園。


「なんか最近、外の気配も静かだし、めちゃくちゃよく眠れるなー」


「ええ、レイ様。王の安眠は、我々が命を賭して守り抜いておりますから」


のんきに欠伸をするレイと、うっとり微笑むアリシア。

ただ一人、世界の魔力枯渇の真実を知ってしまったヴィンセントだけが、部屋の隅で「胃が……痛え……」と胃薬を噛み砕いていた。

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