7-12. 【閑話】心配性
「じゃぁ、行ってくるよ」
組分け通りに、メフィストがファウストと共に別の場所へ向かおうとする。グレーテルは咄嗟に袖を掴んだ。
「気をつけてね」
弱々しくも、名残惜しそうに引き留める力に、メフィストは思わず口角を上げた。
「どちらかと言えば、それは俺の台詞かな」
「私の方には、一応、ディートリヒさんがいるから……」
「余計に心配だね」
隣に立っていたディートリヒは目をつり上げると、無言でメフィストを睨めつける。ファウストが「ディート」と名前を呼んで諌めた。
「そうだ」
メフィストは何かを思いついたように、そう呟き、指をパチンと鳴らす。
途端に、ファウストとディートリヒの視界からグレーテルが影も形も無く消え去った。
「!?」
「ちょっと、グレーテルに何したの?」
一方、自分自身に何が起きたか分からないグレーテルは、メフィストに詰め寄る二人を慌てて止める。
「待って待って! 私なら、ここにいるよ!」
「えっ?! あー……メフィストの魔法か」
「存在を認知しづらくなるようにしたよ。大きな声で喋ったり、素早く動き回らなければ、身を潜めていられるからね」
メフィストの手が、グレーテルの頭を軽く撫でる。冷たくてひんやりした心地に、グレーテルは思わず頬を緩めた。
「ありがとう、メフィスト」
「どういたしまして」




