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番外34 ダラム戦争2(BC)

 

 ダラムのとある建物の地下に新興闇組織「虹蠅」の拠点があった。


 その拠点には7人の幹部が顔をそろえていた。


「赤よ、我々はパルラの夜に潜み、あの町から湧き上がる富を吸い上げるはずなのに、何時まで経ってもこんな町で足止めをされていては、我々の目的が達成できませんぞ」

「その通り、我々の組織の設立目的を忘れたのか?」


 橙の発言に、黄が同意した。


「まあ、そう熱くなるな、橙よ。パルラには我々の下心を見抜く魔眼使いがいるのは知っているだろう? 何度潜入を試みても、あの魔眼で視られた途端、文字通り門前払いにされるのだ。これではあの町の闇に潜む事は出来ないのだ」

「黄よ、何呑気な事を言っているのだ。あの町では毎日沢山の人々が賭場や闘技場で大金を使っているのだぞ。そんな美味しい場所なら当然我々のような組織がその上前を撥ねるのが普通だろう」


 橙が言い返すと、今度は藍が渋い顔になった。


「全てはあの忌々しい雌獣人のせいだ。あの雌のせいで我々はあの町に入れないのだ」

「だが、何時までもここで手をこまねいている訳にもいくまい。赤よ、当然その対策は考えているのだろうな?」

「ああ、勿論だ」


 赤は橙の質問を肯定した。


「既に闇の募集広告を出した」


 赤のその声に、他の6人が目を見開いた。


「それは、闇組織の間で出回るというあの募集広告か?」

「ああ、そうだ。近いうちに募集に応募した暗殺者共がやって来るだろう」

「ほう、それは楽しみだな」



 そして募集広告に関する面接の日がやってきた。


 虹蠅の幹部7人は面接室の会場でテーブルの向こう側に並び、やって来る応募者を待ち構えていた。


 そして最初に1人がやって来た。


 そいつは突然現れると、集まっていた幹部達に軽く一礼した。


 隙が無い男は、頭から足先まですっぽりと包む黒い服を纏っていた。


「暗器使いだ。募集広告を見て来た。1人仕留めるだけで、2百万ルシアというのは本当なのだな?」


 男に頷いた赤が口を開いた。


「ああ、その通りだ。依頼内容はパルラにいる魔眼持ちの狐獣人の暗殺だ。こいつの魔眼は下心がある者を簡単に見分けるんだ。実に忌々しい奴だが、お前なら可能なんだろうな?」

「ああ、問題ない。いくらでも潜入する方法はあるし、入ってしまえば楽な仕事だ」


 そう言うと暗器使いは契約書を受け取ると、現れた時と同じようにふっと消えた。


 応募者が消えた後、橙が赤に質問した。


「なあ、確かにやってくれそうだったが、1人で大丈夫なのか?」

「ふふふ、そんな訳無いだろう。あの雌獣人の後ろにはあの魔女が居るんだぞ。念には念を入れるのは当然だ」


 その会話が終わると、扉が開き顔色の悪い出っ歯の小男が入って来た。


「わしは虫使いだ。どんな奴でも仕留めてやるぜ」

「暗殺を頼みたい相手は、相手の裏の顔を見破る魔眼使いだ。出来るか?」

「けひひひ、相手が魔眼を持っていようと直接見られなければ問題ない。わしが扱う虫ならどんな相手だろうと簡単さ」


 そう言うと、いつの間にか小男の手には大森林蜂がいた。


 あの蜂は2種類の毒針を持っていて非常に厄介なはずだが、こいつはそんな蜂も簡単に手懐けるのか。


 男はあの気持ち悪い笑い声を残しながら、契約書を手に部屋を出て行った。


「ほう、確かに2人居れば成功率も上がるな」


 黄がそう言うと赤が首を横に振った。


「違うぞ。魔女には護衛役のオートマタも居るんだ。そいつらは絶対あの雌獣人も護衛対象にしている筈だ。もっと念を入れる必要がある」

「確かにそうだな」


 そして待っていると、痩せ型で背が高い顔が整った男が入って来た。


「俺は言葉使いだ。相手が異性であれば誰だろうが落としてみせるぜ」


 こいつは自分の事を言葉使いと呼ぶが、いわゆる女たらしだ。


「念の為聞くが、相手は下心を見抜く魔眼持ちだが、そんな相手でも騙せるのか?」


 赤がそう質問すると、男は人差し指を立ててそれを左右に振った。


「チッ、チッ、チッ、そんな事は関係ないんだ。女なんてちょっと危険そうな男に魅力を感じるんだよ。それにこの甘いマスクと甘い声があれば、女なんか簡単に落ちるのさ」


 そう言って色男は自信満々に契約書を受け取って出て行った。


「これで最後か?」

「いや、もう1人いるぞ」


 そして入って来た男もフードで顔を隠し、盛り上がったローブの中に何を潜ませているか分からないところがあった。


「俺は罠使いだ。募集広告をみてやって来た」

「お前に依頼したいのは、パルラで魔眼を持つ雌獣人を暗殺する事だが、可能か?」

「俺のやり方は相手の行動を観察し、最も有効と思われる場所に罠を仕掛けるのだ。成功は約束されたものさ」

「ほう、それは面白いな。それでは頼んだぞ」


 男に契約書を差し出すと、じっとそれを読んでいた男は一つ頷いた。


「分かった」


 男はそれだけ言うと、部屋を出て行った。


 部屋に残った7人は、自然と4人の評価を口にし出した。


「頼りになりそうなのは、最初の暗器使いくらいか?」

「いや、最後の罠使いの方が期待が持てそうだぞ」


 虹蠅の幹部達は明るい未来を期待して、紫煙草の煙を楽しんでいた。


 +++++


 土蜘蛛の地下拠点で紫煙草を楽しんでいた幹部達がゆっくりと眠りに落ちる中、1つ目と8つ目はお互いアイコンタクトをすると、連れたって談話室から出て行った。


 給湯室に入った2人は湯を沸かして、2つのカップにお茶を注ぐとそれを口にした。


「なあ1つ目、魔女と虹蠅の戦いを黙ってみているだけじゃないよな?」

「ふふふ、気付いていたか。なに、俺達もどさくさに紛れてちょっと手を出してみるつもりだよ」

「やはりそうか。1つ目は祭りが好きだからな」


 8つ目がそう言うと1つ目はにやりと笑みを浮かべた。


「そろそろ来る頃だ。一緒に来るか?」

「ああ、分かった。付き合おう」


 2人は飲み干したお茶のカップを水洗いすると、会議室に入って行った。


 すると扉が開き1人の男が入って来た。


「俺は罠使いだ。俺を雇ったのはあんたらか?」

「ああ、そうだよ」

「依頼内容をもう一度頼む」

「暗殺を頼みたいのはパルラの町に居る狐獣人の雌だ。名前はジゼル。成功報酬は2百万ルシアだ」

「分かった」


 男はそう言うと、入って来た時と同じように音もなく出て行った。


 +++++


 パルラの領主館を出たジゼルは、何時もの通りトラバール達を助ける為南門に向かっていた。


 道を歩きながら顔見知りになった人達と笑顔で挨拶を交わしていた。


「やあ、ジゼルちゃん、おはよう」

「あ、おはようございます」

「今日は1人なの?」


 その言葉にジゼルは苦笑いを浮かべた。


「ユニスは領主の仕事をしているわ」

「へえ、偶には1人でのんびりするのもいいかもね」

「いいえ、これから南門で来訪者のチェックをするのよ」

「ふふふ、ジゼルちゃんにチェックしてもらえれば、私達も安心ね」


 ドーマー辺境伯時代では人間が1級人種で、獣人は2級いえ、劣等種扱いだったので、町の人間達とこのように笑顔で挨拶する事なんてありえない事だったけど、今はこの町の支配者が金髪エルフになってしまったから、人種的な差別がなくなったのよね。


 まあ、元々偏見を持っていた人達は、この町から出て行ったというのも理由なんだけどね。


 お陰でこの町での生活がとても心地よいものに変ったわ。


 さてと、いつまでも街中で油を売ってないで南門にいかなくちゃね。


 それにしてもムダに時間を潰す事をなんでユニスは油を売るって言うのかしら?


「やあ、そこのかわいい彼女」


 ハンター達がこの町に拠点を構えてからは、ああいう軽い連中も増えて来たんだったわ。


 町の若い女性達も大変よね。


「ねえ、そこの狐耳のカ・ノ・ジョ」


 そこで初めてこの軽い男が、私に声をかけているのに気が付いた。


 そう言えば最近は常にユニスと一緒に居るから、私に声をかけて来る男の人は居なかったわね。


 思わず心の中でくすりと笑うと、どこの軽薄男なのかと振り返った。


 そこには人間種の若い男が、自身満々な顔でポーズを決めていた。


「貴方、まさか獣人に興味があるの?」

「俺は魅力的な女性に興味があるのであって、人種なんて関係ないさ。君はとっても素敵な瞳をしているじゃないか。それにそのふさふさの尻尾も触ったらとても気持ちよさそうだよ」


 ジゼルは反射的に触られたくなかったので尻尾を両手で隠すと、軽薄男は慣れた手付きで私の肩に手をかけてきた。


 そして耳元に甘い声で囁いた。


「君の事をもっと知りたいんだ。ねえ、あそこでお茶でもしながらもっと君の事を教えてよ。何が好きなのかとか、どんな体位がいいのかとかね」


 軽薄男が指さした先には、最近開店したハンター達がよくたむろしている酒を出す店があった。


 あの店はハンターが多いので、パルラの人達はめったに寄り付かなかった。


 そんな危ない店に、こんな下心満々の男となんか行きませんよ。


 それに私には、これからやる事があるの。


 私は誘いを断ろうと軽薄男の目を見ると、何故か心臓が早鐘を打ち、男がとても魅力的に見えていた。


 あれ、何かおかしい。


 なんだが、意識がぼんやりしているような。


「ふふふ、それとも今すぐベッドに入って愛を語ろうか?」


 男の言葉に素直に従いたくなるこの気持ちは何? 


 ジゼルは自分の意思とは関係なく、男に誘われるように目的に店に近づいていた。


 されるがままになっていたジゼルは、そこではっとなってぼんやりする意識をなんとかはっきりさせて、魔眼を発動した。


 本来魔眼は相手の裏の顔を見るものだったが、魔力の塊のようなユニスの傍にいるせいか別の能力も身についていたのだ。


 魔眼に映るその男の顔は、下心満載でとても気持ち悪く、そして声をかけて来た時から状態異常を私に掛け続けている事に気が付いた。


 うえっ、気持ち悪っ、状態異常の解除っと。


 すると今まで魅力的に見えていた男の顔が女たらしの変態に変り、ぼんやりしていた頭の中もはっきりしてきた。


 どうやらこの男の声には、魅了の効果が含まれているようね。


 ジゼルは獣人の身体能力を生かして男の腕の中からするりと抜けると、距離をとった。


「私、これから仕事があるの。それから貴方はこの町にふさわしくないわ。警備に連絡しておくから大人しくこの町から出て行く事ね」

「な、おい、ちょっと」


 慌てて私を捕まえようと駆け寄って来る男の手を華麗に躱すと、一瞬で距離を開けた。


 そして町の清掃と治安を担当している猫獣人を見つけて声をかけた。


「ねえ、あそこにいる男、あれ危険だから町から追い出してほしいの」


 声をかけた猫獣人がジゼルの視線を追って男を確認した。


「あのチャラチャラ光物を身に着けている、いかにも軽薄そうな男ですか?」


 ジゼルは猫獣人が目を細めて嫌なものでも見るような視線を送っている姿を見て、思わず笑みを浮かべた。


「ええ、この町の女性にとって、とても危険な男よ」

「なんと、それではユニス様にも危険が及ぶかもしれませんね。分かりました。速やかに対処しておきます」

「男の声には相手を魅了する危険があるから気を付けてね。それじゃあ頼んだわよ」


 ジゼルは猫獣人に危険人物の情報を提供すると、寄り道で南門に行くのが遅れている事に気が付いて不機嫌になった。


 全くあの男のせいで、時間を取られてしまったわ。


 先を急いでいると、そこにチェチーリアさんの娘ファビアちゃんが、知らない男と手を繋いで歩いている姿を目撃した。


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