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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第4章 ロヴァル騒動
100/422

4-22 出陣

 

 エリアルへの出発準備が整ったので、俺はジュビエーヌとクレメント護衛2人を迎えに行った。


 一緒に付いてきたのはジゼルとトラバール、オーバンそれと食事当番としてチェチーリアさんにも来てもらう事にした。


 だが、たった5人の姿を見て2人の護衛が不満を口にした。


「まさかこの人数でエリアルに行くんじゃないだろうな?」

「南門を出れば分かりますよ」


 公太女と公子にはサソリもどきを事前に見せていたが、護衛2人には見せていなかったのだ。


 そして南門を出るとそこには集結しているゴーレム軍団が居て、全ての個体にロヴァル公国の国旗である赤色の蝶が描かれていた。


 そのあまりの威容に、2人の護衛は声が出ないようだ。


 俺達はそのままサソリもどきまで歩いて行くと、腹のハッチを開き梯子を下ろした。


 最初に俺が中に入り、その後ハッカルと続き内部の安全を確認してからジュビエーヌとクレメントが乗り込んできた。


 4人をサロンに残し俺達4人はそのまま操縦席まで進み、誰が指示したという訳でもないのに自然とオーバンがアーム操縦手席にトラバールが操縦手席そしてジゼルが調整士席に座っていた。


 そして俺もまた当たり前のように車長席に座った。


「トラバール、何故操縦手席に座っているのですか?」

「おう、姐さん、任せておけ」


 何だろう、言いようのない不安が込み上げてくるんだが。


「オーバンと席を代わった方がいいのではないですか?」

「大丈夫だ。任せろ」


 そう言うと俺にサムズアップをしてきた。


 それはもしかしてあおいちゃんから教わったのか?


 仕方がない、暫く様子を見よう。


 偵察用ゴーレムが先発すると、次に30体の戦闘用ゴーレムが続き、その後がサソリもどきになる。


「出発準備」


 俺がそう言うと、ジゼルが魔宝石からの動力をサソリもどきの足に伝達する。


「トラバール前進よ」

「おう、分かった」


 そう言って操縦席のペダルを踏むと車体が急発進したので、首が後ろにガクンと揺れた。


 そして今度は上下に揺れる振動が発生した。


 それは今ではもう経験も出来ない、あのマニュアル車のギヤが合わない時に発生する振動に似ていた。


 俺は上下に揺れる車内で、舌を噛みそうになりながら何とか声を出した。


「ちょ、ちょ、ちょっと、トラバールぅぅぅ、もっ、と優しく、動かしてよぉぉぉ」

「お、おぉぉ、ま、任せとけぇぇぇ」


 後ろではジゼルが悲鳴に近い声を出していた。


「ユ、ユニスぅぅぅ、この子、8本の足、で、じたばた、しているわよぉぉぉ」

「ト、ラバール、ペダルから、足を、は、放してぇぇ」


 トラバールが指示に従いペダルから足を放すと、ようやく振動が止んだ。


 俺は操縦手席の後ろに立って、トラバールに教育的指導を行う事にした。


「いい、足のペダルは魔宝石のエネルギーを8本の足に伝達するのよ。女性のお尻だと思って優しく踏むのよ」

「お、おう、そうだな。姐さんの尻なら優しくしないとな」


 何だかトラバールの顔が赤くなったが、気にしない事にした。


 そして視線に気づいて振り向くと、ジゼルがこちらをジト目で見ながら首を横に振っていた。


 それは、その説明はちょっとと言っているようだった。


 乱暴な発進が収まった後は、今度は尻を左右に振られるような感じになっていた。


 どうやらサソリもどきの動きが、そうなっているようだった。


 これでは後ろにいるお客様達も具合が悪くなっているのではないか?


「トラバール、ハンドル動かし過ぎよ」

「お、おう」


 左右への腰振りが収まって来たと思ったら、今度は先を進んでいるゴーレムの列に突っ込んだ。


 突然の停止に体が浮いたが、何とか椅子を掴んで体が放り出されるのを防いだ。


 周りを見るとオーバンは無事のようだ。


 後ろのジゼルも椅子に掴まって何とか耐えていた。


 だが、サソリもどきに追突された戦闘用ゴーレムは半壊しており、直ぐに魔宝石の修復機能で自動修復を行っていた。


「トラバール、貴方、まさかとは思うけど運転が初めてでは無いの?」

「はっはっはっ、何事も初めてはあるもんだ」


 俺は頭を抱えたが、このままでは何時まで経ってもダラムに行けないので、隣で操縦方法を教える事にした。


 そんなこんなで何とかコツを掴んでくれてサソリもどきを動かせるようになった頃には、俺は精神的にかなり疲れていた。


 免許取得に自動車教習所に行った時、やたら教官が怖かったのは今俺が味わった状況を毎日味わっているからだろうか?


 後ろのサロンでの惨状を思うと、暫くは顔を出さない方が良さそうだな。


 ようやく制御できるようになったサソリもどきは、戦闘用ゴーレムの後に続きダラムへの道を移動していった。


 ダラムに向けて進軍していると、途中でドーマー辺境伯がパルラを封鎖するための封鎖線がある。


 偵察に向かっていたゴーレムから報告が入り、そこに百人程の一団が居るようだ。


 戦闘用ゴーレムに敵を包囲するよう命じてからサソリもどきを封鎖線まで進めると、武器を手に円陣を組んだ敵兵を30体の戦闘用ゴーレムが包囲している光景があった。


 敵兵は、後ろから巨大なサソリもどきが現れたのを見て、それまで何とか維持していた戦意を急速に失いかけているようだった。


 それを見たジゼルが俺にそっと耳打ちしてきた。


「あの人達は悪い人達じゃないわよ」


 どうやらジゼルの魔眼にはそう映っているようだ。


 それならと敵兵に降伏を勧告してみる事にした。


 サソリもどきの操縦室の天井には、外に出られるハッチがあった。


 そこからゴーレムの頭の上に姿を現すと、下に居る敵兵が一斉にこちらを見上げてきた。


 その顔は驚いているようで、口をあんぐりと開けていた。


 俺はメガホンを手に取り、アホ面を晒している男達に声をかけた。


「私達はロヴァル公国公太女ジュビエーヌ・ブランヴィル・サン・ロヴァル殿下の軍である。我が軍に歯向かうつもりなら賊軍として討伐する。恭順の意を示すなら道端に避けひれ伏しなさい」


 俺がそう言うと固まっていた兵士達が一斉に動き出し、道端に避けると跪いて頭を垂れていた。


 どうやら降伏するようだ。


 ゴーレムから降りて領兵達の傍まで行くと、指揮官と思しき男が話しかけてきた。


「なあ、あんたは公太女殿下の部下なのか?」

「ええ、そうね。そんな感じかしら」

「そうか・・・なあ、俺達はドーマー辺境伯に徴兵された農民だが、このままだと反乱軍として処罰されるのか?」

「今回の首謀者はドーマー辺境伯です。大公軍がエリアルを奪回したらそうなりますね。罰がどの位重いかは公太女殿下の匙加減です」


 それを聞いた兵士達は、動揺を隠せないようだった。


 どうしたらいいのか分からないといった感じなので、選択肢を与えてやる事にした。


「もし貴方達が大公軍に加わって功績を上げたら、公太女殿下も感激して罰どころか褒美が貰えるかもしれないわね」


 その一言で彼らの迷いが吹き飛んだようで、皆一斉に頭を下げてきた。


「分かった。俺達もあんたらについて行く。これからよろしく頼む」


 うん、ちょろいな、君達。


 何はともあれ、彼らが最初の味方になってくれたようだ。


 俺は早速この事実をジュビエーヌに伝える事にした。


「公太女殿下、味方に加わりたいという兵士達がおります。加わる許可を頂けますか」


 俺がそう声を掛けると、サソリもどきの中からジュビエーヌが出てきた。


「ユニス、味方になりたいという兵士達とは、この者達の事ですか?」


 ジュビエーヌは、俺の後ろに控えている元ドーマー辺境伯軍の兵士を見ながら聞いてきた。


「はい、そうです。貴方達、公太女殿下に騎士の礼をなさい」


 俺がそう言うと、皆立ち上がると直立不動に姿勢から騎士の礼を行った。


 ジゼルの魔眼で反意が無い事は分かっていたが、念の為空間障壁の魔法を展開したが杞憂に終わったようだ。


「分かりました。それでは許可します」


 ジュビエーヌがそう言うと、旧ドーマー辺境伯兵は大公軍の兵士になったのだ。


「そう言えば貴方、名前は?」

「は、俺・・・私はアメデオと言います」

「そう、私はユニスよ。それではアメデオは部下を率いて最後尾から付いてくる事」


 そう言うと再びゴーレムを出発させると、道路脇に控えていた兵士達は最後尾のゴーレムの後ろに付いてきた。


 ゴーレムばかりの行列に兵士が加わった事で、ようやく人間の軍隊といった体裁が整ったようだ。


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