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最悪の魔女と誤解された男  作者: サンショウオ
第4章 ロヴァル騒動
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4-21 出発準備

 

 檄文を読み上げている間、侯爵は片膝ついて頭を垂れて聞いていた。


 そして読み終えた檄文を封筒に入れて侯爵に差し出した。


「それでは受け取ってください」

「父上、それを受け取ってはフェルダが陥落してしまいます」


 その言葉を裏付けるように「ズズ~ン」という腹に響く低音が轟き、それに合わせて振動が伝わってきた。


「もしや、苦戦しているのですか?」

「現在我が軍は勝利に向けて鋭意努力中である」

「父上、ここで公女殿下のために兵力を割いては、フェルダは確実に陥落します」


 侯爵が役人のような返答をすると、すかさず息子が訂正してきた。


 ここで侯爵が敗れるのは拙いな。


「分かりました。それでは私も手伝いしましょう」

「ちょっと待ってくれ、使者殿にどのような能力があるのか分からないが、たった1人で何が出来るというのです? それよりも公女殿下にお力添えが出来ない事を報告して貰いたい」


 俺が助力を申し出たのだが直ぐに息子の方がそう言うと、侯爵の方は出しゃばった息子に渋い顔をしているが発言を否定しなかった。


 俺は受け取って貰えない封書を持ったままだった。


 このままでは埒が明かないので、少しきつい言い方をしてみた。


「それでは公女殿下からの要請は受けられない。フェルダ防衛への助力も要らないという事でよろしいですか?」


 それを聞いた侯爵は恥ずかしそうに下を向き、息子は顔を真っ赤にして怒りだした。


「ここが落ちるのは時間の問題なんだ。助けが欲しいのは俺達の方だ」

「なら、何故私に助けを請わないのですか?」

「そ、それは・・・」

「失礼だが、ガーネット殿はエルフですかな?」

「ええ、そうです」

「何故エルフが人間に肩入れするのだ?」


 そうか、そこに引っ掛かっていたのか。


 だが本当の事は言えないし、貴族が信じる理由となると。


「ドーマー辺境伯領のとある町を貰う事を条件に手伝っております」

「ほう、成程な。それなら私からもこの町の防衛への力添えを願いしたい。報酬は土地が良いか?」


 やはり、貴族は働きに応じた見返りがあると理解して貰えるようだ。


 まあ、今考えた適当な理由なんだけどね。


「それなら小麦等の穀物類でお願いします」

「あい分かった。それでどうやってアレを撃退するのだ?」

「ああ、簡単ですよ」


 そう言うと上空に舞い上がり城壁に着地すると、そこに居た守備兵が驚いた顔で後ずさりした。


 城壁からルフラント軍を見ると、魔物が次の突撃に備えて後ろに下がったところだった。


 メタルムーブの弱点は電撃で、ベルヒニアというエルフから丁度電撃系の黄色魔法を教わっていたのだ。


 俺の前には体を覆い隠すほど大きな黄色の魔法陣が現れた。


 その魔法陣を見た領兵から「無詠唱で黄色魔法だと?」と言うお決まりのセルフが聞こえたような気がした。


「電離気体」


 目の前に眩しい閃光が爆発するとそこから沢山のプラズマが走り金属板に覆われたメタルムーブに次々と落雷となって襲い掛かった。


 着弾したメタルムーブは一瞬眩しく輝くと直ぐに白い煙が上がり、焦げたような匂いが周りに立ち込めた。


 落雷が収まると全てのメタルムーブが白煙を上げて動きを止めると、魔物を操っていたフルラント兵は慌てて逃げて行った。


 敵陣では最初何の動きも無かったが、魔物が全滅し操っていた兵が逃げ戻ると慌てて陣を引き払い始めた。


 その動きを監視していると、城壁を登って来た侯爵親子が俺の隣にやって来た。


「これは・・・」

「ガーネット殿は高位魔法使いだったのか。もしかしてアイテールやバルギットの連中も?」

「そちらは公女殿下が赤色魔法で追い返しましたよ。私は魔法が発動するまでの間、敵軍を足止めしただけです」


 赤色魔法はジュビエーヌが獅子の慟哭を使って撃ったという設定だから、それに話を合わせないとな。


 ルフラント軍に視線を向けると既に撤退を始めていた。


「これで公女殿下の檄文を受け取ってもらえますね?」

「ああ、分かった。公太女殿下は何時エリアルに向けて出発するのだ?」


 ああそうか、檄文で既に公太女と名乗っていたな。


「公太女殿下は2日後にはドーマー辺境伯領パルラから出発してエリアル北街道をまっすぐエリアルまで攻め上ります。進軍途中での賊徒共の抵抗にもよりますが、30日程度でエリアルに到着するでしょう」


 侯爵はその説明に納得し俺の手から檄文を受け取った。


「承りました。必ず我らもお力添えをいたしましょう」


 +++++


 侯爵親子はエルフが上空に飛び去るのをじっと見送っていた。


「父上、私はエルフを初めて見ました」

「おお、私もだぞ」

「体内魔力量が多い種族と言うのは本当なのですね」

「そうだな。飛行魔法や黄色魔法を体内魔力だけで使えているようだしな」

「妖精種はとても美しいと聞いていましたが噂以上でしたね。その、目のやり場に困りました」

「なんだ、初々しいな。そんな事では女で身を滅ぼすぞ。私はがっつり見たぞ」

「エルフというのは、ああいった体の線が出る服を好むのでしょうか?」

「いいではないか。見て欲しいと言っているのだ。見てやらないとな」

「父上、母上に言いつけますよ」

「う、ううむ」


 +++++


 フェルダから戻った俺は、ジゼルからパメラ・アリブランディが消えた事を知らされた。


 まあ、あの女性は攻めてきた両軍のうちどちらかの間者だったのだから仕方ないだろう。


 それからエリアルに行くため、サソリもどきを修理する事にした。


 ダラムの町は城門を閉じて徹底抗戦をするのは火を見るよりも明らかなので、時間を掛けずに落とすためだ。


 ゴーレム戦で破壊した足を修復し、動力源となる魔宝石を何個も取り付けた。


 そして操縦室の後ろにある貨物室に公太女殿下と公子殿下の個室を作り、寛ぐためのサロンも作った。


 最初は馬車を用意しようかと思ったのだが、馬車だと移動中や野営時に奇襲を掛けられる危険もあるので、最も安全な場所を考えたらサソリもどきの中になったのだ。


 サソリもどきはその足の多さで移動中の振動がそれ程大きくないので馬車での移動と比べてもそれ程差は無いだろう。


 護衛のツィツィに聞いたところエリアル迄の距離はこの世界の単位で132リーグ、普通の人々は1日6時間歩くので22日で到着するそうだ。


 シュレンドルフ侯爵には30日後と言っておいたが、エリアルまでの行程にはダラム等の確実に戦闘が起こる拠点があるのでほぼ予想通りだろう。



 そして出来上がった大公軍は攻城用ゴーレム1体、戦闘用ゴーレム50体、食料や飲料の輸送用ゴーレム10体、竈とキッチンを備えた給仕用ゴーレム1体それに偵察用のゴーレム10体だ。


 ゴーレムにはあおいちゃんが持ち込んだ王家の紋章を付けて大公軍に箔を付けたが、 どう考えても今回の騒動を予め予期していたという疑念が湧いてきた。


 そこであおいちゃんにそれとなく聞いてみると、やっぱり自分が居なくなったら混乱が起きるだろうと思っていたようだ。


 なんだか掌の上で踊らされているような気がしたが、自分でも余計な事をした事実があるので素直に踊らされる事にした。


 運搬用ゴーレムには魔素水と白ビール、食料を積み込み冷凍用のゴーレムには生肉を、冷蔵用ゴーレムには野菜等を積み込んだ。


 そして1体には、ドーマー辺境伯の倉庫から見つけた高級酒と甘い菓子を用意した。


 これはエリアルに向かう途上で味方になった貴族達を持て成すためだ。


 準備が整ったところで、公女と公子に自分達が乗ることになるゴーレムのお披露目をした。


 最初2人は引き攣った顔で苦笑いしていたが、サソリもどきの内部に自分達の部屋とサロンがあるのを見て驚いていた。


 それから2人は公都を脱出した時着の身着のままだったらしく殆ど私物を持っていなかったので、リーズ服飾店に連れて行った。


 店で待っていたルーチェ・ミナーリは公女と公子の来訪にとても緊張していたが、服の話になると水を得た魚のごとく営業トークを披露していた。


 そして慣れてきたミナーリは、ジュビエーヌにとんでもない事を言い出した。


「せっかくですから、ユニス様御用達の下着もいかがですか?」


 そう言って連れて行かされた下着コーナーでは現代日本ではお馴染みの光景が広がっており、それを見たジュビエーヌは目を丸くしていた。


 ああ、これが俺の趣味だと思われてしまったな。


 そして顔を真っ赤にしたクレメントがそっと逃げて行った。


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