ホッコリする
翌朝、目が覚めた私は勢いよく起き上がる。
体が軽い。昨日の疲れが嘘のように無くなっていた。
ーーーレベル120の体“様々”だわ! いや、若さか!? これが若さか? 若いって素晴らしい!!
上機嫌でベットから飛び降り、洗面台で顔を洗う。
顔を洗いタオルで顔を拭いていると、部屋の扉が開いてエドモンドが入ってくる。
「おはようございます」
「おはよー!」
元気よく挨拶を返す。
前回も思ったが、どうやって起きたのを確認しているのか全くの謎だ。
「みなさん先に起きて、すでに下の食堂にいますよ」
「あいあい。すぐ行くから! 先に行って注文ちといてー! あ! 全部ね! 全部!」
「わかりました」
エドモンドが優雅にお辞儀をして、部屋を出て行く。
特に準備する事はないが、注文した後に料理が出てくるまで待つのが嫌いな私は、先に注文してもらって着いたと同時に食べれるようにする。という作戦を思いついたからだ。
私が部屋で何して待とうか考えていると、
「主人よ! 今のは誰だ?」
いつのまにか肩に乗っているフッ君が何故か怪訝そうな顔で聞いてくる。
「あー。あれはエドモンド! 仲間だよ!」
「何? 仲間なのか?」
「しょうだよー。あと4人いるよー」
「4人もいるのか?! まさか……主人に仲間がいるとはな!」
「ん? どーゆう意味?」
「いや……別に!」
フッ君が、急に目をそらす。
そんなフッ君をじーっと見ていると。
「……そ、そうだ! 主人よ! わしを紹介してくれ! わしも仲間に加わるわけだしな」
「……まぁいいけど」
「で、では! 早速行こうではないか!」
「……わかった」
若干だか誤魔化された気がしないでもないが、そろそろ料理も出て来る頃だろうと思いフッ君と食堂へと向かう。
…………
食堂に着くと、手前にある丸いテーブルを囲ってエドモンド達が座っており、タイミング良く料理もテーブルへと並べられているところだった。
昨日は朝食と菓子しか食べていなかった為か、とてつもなく腹を空かせていた私の目は料理しか見えなくなっていた。
「いただきまーしゅ!!」
イスに勢いよく座ると、同時に料理を食べ始める。
「あらあら〜相変わらず。お嬢ちゃんは朝から食欲旺盛ね〜」
シロが何か言っているが無視して食べる。
「……こ、この子供は! 『暴虐の赤子』じゃないか?! シャルル!」
「しー。ミッド! 聞こえるよ!」
誰か知らない声も聞こえたが無視して食べる。
兎に角、食べる。食べる。食べる。
小さな口なので、あまり一気にたくさん入らないが、レベル120の体は噛むスピードがとても速い。
側から見れば、“高速ビーバー”のように見えた事だろう。
あっという間に、テーブルの上にあった料理が殆どなくなる。
「ゲフ。予は満足じゃ」
丸く盛り上がった腹を撫でる。
ーーーなんだかんだ、この面子って落ち着くんだよなー。昨日、色々ありすぎたからかなー。
そんな事をしみじみと思いながら、みんなを見渡すと、
エドモンドは優雅に紅茶を飲んでいて、ソージは肉ばかり選んで食べている。
知らない少年は、どこか食べにくそうにゆっくりと肉を食べている。
シロは朝からワインを3本は空けていて、レオは……なんか食べている。
知らない少女は、目を輝かせとても美味しそうにスープを飲んでいて、ソフィアは食後のデザートを食べている。
ーーーうんうん。みんな、個性豊か……豊か過ぎだけど。ホッコリするわー。……みんな
…………みんな
「って! 誰だ?!」
同じテーブルを囲んでいた、知らない少年と少女に向かって叫ぶ。
「あ、すみません! ティミッドです」
「シャルルです!」
ティミッドとシャルルと名乗る少年少女が、お辞儀をしながら答える。
「あ、ども。セイラでしゅ」
自分も自己紹介をして、ペコっとお辞儀をする。
…………
ーーーって! だから誰だよ! おーーーい! 何故、当然の様に一緒に飯食ってるんだ?! おかしいだろ! いや……待て。この世界ではこれが普通なのか!? ありえる!
心の中でそう結論付け、一人うんうん。と頷き
「……しゃて! みんな! 昨日は、どうだったにょ? レベル上がった?」
とりあえず、二人の事は気にしない事に決めた。
「はい! こちらは大丈夫でしたよ。まぁ、俺がいたので当然ですね」
エドモンドが、キリッと音が付きそうな顔で答える。それに続くように
「疲れたけど。余裕だったよー」
「解放されし俺の力が……世界を「もう〜森は虫がいるから〜もう嫌よ〜」
「も、もっともっと! や、殺りたいです」
全員が口々に答える。
どうやら皆きちんとレベル上げをしたらしく、エドモンドとレオが18、ソージが17、シロが15まで上がっていた。
驚きなのが、ソフィアが20まで上がっていた事だった。
ーーーおぉー! みんな……ちゃんと頑張ってくれてたんだなー。てか、ソフィアは何故に一人だけそんなに上がってるんだ?
と思いながら、椅子の上に立ち人差し指を立てて腕を突き上げる。
「よち! じゃあ、ご褒美に今日は一日お休みねー。明日は、いよいよ! スケルトンキングだよー」
「わかりました。今日は、お伴します!」
「やったー! ねぇ、観光しようよ!」
「いいわね〜ついでに〜お買い物しましょ〜」
「新なる世界へ俺も足を踏み入れよう」
「わ、私は、休みはいらないです。も、もっと殺りたいです」
どうやら、みんな喜んで賛成のようだ。最後に物騒かつ反対意見が聞こえた事は無視しておこう。
「それで、ですね。こちらにいるのが昨日森で出会った二人です」
エドモンドが、ティミッドとシャルルを手のひらで優雅に差し紹介してくる。
すると、二人は私に再度お辞儀をしてきた。
ーーーん? 何? 知り合いだったの? ……危なかった! いくらこの世界でも知らない人のテーブルで勝手に人の飯を食べる風習は無いってことか! セーフ! 危うく、やる所だったぜ! 嵌められるとこだったぜ!!
「しょっか! ……しょれで?」
「実はですね、彼の「待って下さい! エドモンドさん!」
ティミッドがエドモンドの言葉を割って止める。
「自分の事ですし、俺に言わせて下さい!」
強い意志を持った目とはこの事だろうと思わせるほどの目でエドモンドを見つめるティミッド。
エドモンドは、含みがかっているような謎の笑みを浮かべ無言で頷く。
すると、それを見たティミッドが意を決したように、ゆっくりと口を開く。
「あの、実は昨日森で《プラム》に襲われ……右腕を無くしてしまったのです」
「そうにゃんだ」
「それで、あの……」
ティミッドが言葉を詰まらせる。
「ミッド! 頑張って!」
横からシャルルが、ティミッドの肩を優しく叩く。
なんだか、寸劇を見せられてる気分になったがここは黙っておく事にしよう。
「あの……あなたは腕を治す事が出来ると聞いたのですが……もし、できるなら! 俺の腕を元に戻して下さい。もちろん御礼もします! だから、お願いします!」
「お願いします!」
ティミッドとシャルルが立ち上がって、深々とお辞儀をする。
「ん。 ヒール」
私がヒールを唱えるとティミッドの体が淡く光り腕がみるみる生えてくる。
「な、! 本当に腕が! シャルル見ろ! 腕が!」
「見てるよミッド! 凄い! 信じられない!」
二人は目に涙を浮かべ、抱き合い喜んでいる。
「ミッド。良かったね! 本当に良かった」
「あぁ。これで冒険者が続けられる! 俺の夢はまだ終わってない!」
二人は手を取り合い、奇跡だ。夢のようだ。と喜び合っている。
ーーー王袈裟だな。それに何故か見てて、痒くなってくる。しかし、この世界には《ヒーラー》が少ないのか? たかが《ヒール》ごときで……ごときで……やはり、私の……最強伝説が始まる予感しかしない!
グフフ。これからの事を考え堪え切れずに笑ってしまう。
………………
「腕も治った事ですし、そろそろ、その見てて痒い……見てて恥ずかしくなる寸劇は終わりにしませんか? そして、セイラ様も現実に戻って来て下さい。話が進みません」
エドモンドの残念な子を見る目と声によって私は現実世界へと戻ってきた。
ーーーこ、こいつ! 私と同じく、痒くなる派か!! ていうか、ストレート過ぎだろ! もうオブラートに包むの辞めたの? 曝け出してるの?! そんな仲良しになったの?
特技の脳内ツッコミを炸裂させていると
「「す、すみません!」」
ティミッドとシャルルは体をビクッとさせたかと思うと、声を重ねて凄い勢いで謝っている。
なんで怯え気味なの? と思ったが、また何か言われそうだと思い黙っておく事にした。
すると、ティミッドがこちらに向き直りまっすぐ私の目を見て
「あの! 本当に! ありがとうございました! この御恩は一生忘れません!」
と、深々とお辞儀をしてくる。
「いいよー。また、腕がとれたらいちゅでも来にゃ!」
私は仁王立ちポーズで答える。
「いえ、もう取れない用、俺は強くなります! 立派な冒険者になります!」
「しょっか。頑張れー」
「はい! ありがとうございます! 本当に、本当に、ありがとうございます!」
「……あ、うん。」
ーーーなんだろう? この子……何か……変だ。絡みにくい……というかなんというか。
私がうーん。と首を捻り考えていると、
「あの、どうかしましたか?」
ティミッドが不安そうな顔で私に聞いてくる。
「ん、……にゃんでもないよ! 」
「そうですか……それでですね。御礼なんですが……今、俺。金がなくて! それ以外だったら! 俺なんでもします!」
「ん? 別に御礼とかいーよ。それに、金なら腐るほど持ってりゅからにゃ! フハハハ! ハハハハハハ! ハハハハハハ!」
“悪代官”再び。またもや仁王立ちポーズで笑っていると、
「いいんですか? 腕を治してもらったのに? ……なんて寛大なんだ!」
…………
「……うん。私は寛大だよー」
すぐに調子に乗れる私だが、何故かいまいち調子に乗れずに棒読みで答える。
すると、
「ハハハハ。セイラちゃん! その気持ちわかるよ! 実は……ティミッド君はね……」
今まで黙っていたソージが突然笑いながら頭の後ろで手を組み、もったいぶる。
「にゃに?! ソージには……わかりゅの?」
ソージがゆっくりと頷く。
どうやらソージには、私が先程から引っかかっている何かモヤモヤしたものの正体がわかるようだ。
「ティミッド君は……」
答えを待って息を飲む。
…………
そして、ソージは笑顔から一転、急に真顔になると
「彼はね。……普通なんだよ! これが! 普通なんだ! そう! FUTSU Uの人間なんだよ!」
ドン!
とテーブルをグーで叩き私に向かって言う。
ーーーな、なん……だと! これが普通……いや! FUTSUU! なのか?
「FUーTSUー U!!」
グハァ。と謎のダメージをくらい打ち拉がれていると
「ハー。いい加減にして下さい」
エドモンドの鉄拳が、私とソージに落とされる。
私が頭を抑えながらエドモンドを見上げていると
「ハー。二人ともふざけるのも程々にして下さい。ふつ……ティミッド君を見てください。今にも泣きそうな情け無い顔で、可愛そうではないですか」
「そ、そうですよ。普通のティミッド君が可愛そうです! 彼だって頑張って、い、生きているんです!」
二人の方が、酷い気がしないでもないが、また黙っておく。
ティミッドを見れば本当に茹で蛸の様に真っ赤になって、怒っているのか、泣いているのかはわからないが体を小刻みに震えさせ下を向いていた。
どんまい! と心の中でティミッドに向けてエールを送っていると
「あ、あの! セイラさん」
シャルルが、申し訳なさそうに私に声をかけて来た。
「ん? にゃに?」
私が返事をすると、シャルルは真面目な顔でこちらを見たかと思うと、突然、膝をつき頭を下げる。
地面に頭が付きそうな勢いだ。
これは日本でいう所の土下座だろう。
この世界にもあるんだな。と思いながら見ていると、
「先程の回復魔法、感動しました! どうか、どうか! 私を弟子にして下さい! ……師匠!」
「フッ。よかろう! 君を弟子にちよう!」
「え? 本当ですか? あ、ありがとうございます! 師匠!」
師匠と呼ばれて、すぐに調子に乗った私は腕を組み格好つけて即答した。
そして、この日私の《弟子第一号》が誕生したのだった。
携帯の調子悪くて、更新できませんでした。すみません。次回は明日の予定です。修理から返ってこれば早く出します。




