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アンジュ・ス・バートル  作者: Jyona3
ー第2章ー カースス王国編
36/55

ボクっ娘

 遅くなりました。

 


 ふぁあぁあー。



 大きな欠伸をしながら、クレアの少し後ろを歩く。



 ーーーほんと、クールな子だな。眠い! ……暇だなぁ



 クレアは一切、後ろを振り返る事もなく、話しかけてくる事もない。


 ただただ、道案内のため一緒に歩いてるに過ぎないと言う雰囲気だ。



 最近の私の周りには騒がしい人達が常にいたので、短い時間だが、今のこの状況に少し物足りなさを感じていた。




 歩きながら、キョロキョロとお城の中を観察する。




 ーーーなんか、パッとしないなー。




 私の勝手なイメージで城とは、とても煌びやかな場所で、金や銀の飾りやらシャンデリアがあり、廊下には高級な絨毯が敷かれている海外のセレブが住んでいそうなゴージャスな所だった。




 だが実際のお城の中は質素な物で、廊下には高そうではあるが派手さのない花瓶に花が生けてあるのをたまに見るくらいだし、シャンデリアもない。



 シャンデリアどころか電球もないのか、松明を入れるような物が間隔を置いて壁にあるくらいだ、恐らく火をつけなければ夜は真っ暗であるだろうことは、容易に考えられた。



 廊下も絨毯など敷かれておらず、随分と昔に造られたのか、城の外観そのままの石で出来ている廊下は所々、石と石の繋ぎ目がくっきり見えている。



 この城より、《リュミエール教会》の方が確実に、金がかかっているであろう。



 ガッカリするには充分だった。




 だが城は、お姫様の言っていた通りとても広く、長い廊下が続いていて、その間たくさんの扉があった。



 もし本当に一人でトイレに行っていたなら、高確率で迷子になっていただろうと思えたほどに広かった。




 ーーートイレまで、どんだけ距離あるんだよ……間に合ってるのか? みんな、どんだけ強靭な膀胱だよ!




 と、思いながら黙って着いて行く。




 …………




 はたと、気付く。



 静かに、立ち止まってみる。



 ……クレアは先をどんどん進んでいく。



 クレアの後ろ姿を眺める。



 ……クレアは振り返る事もせず、どんどん進んでいく。




 …………




 ……クレアの姿は小さくなり、やがて角を曲がり見えなくなった。





 ーーーフッ。やはり! この世界の奴は、ちょろかった!




 思惑通りにクレアを撒けた? 事に、喜悦の感情がフツフツと湧き上がる。




 湧き上がる感情を抑えられず、両手を上げて叫ぶ。




「自由だーーーーーーー!!」




 だが、叫んだ途端に我に返り慌てて自分の口を両手で隠し柱の後ろに隠れる。




 ーーー危ない。危ない。大声出したら誰か来てしまうじゃないか! しかし、うまく行ったな。




 これで探索中に、もし誰かに見つかったとしても、クレアに置いてかれて道に迷ってしまったと言えばいい訳がつく。




 自分のナイスアイデアに、また自分で自分を褒めてやりたい気分になった。




 これ以上、変な宗教《サジェス教》や城の内情《主にサエウムの話》に巻き込まれたくないというのが私の本音だ。




 巻き込まれたくないなら、このまま城を出ればいいとは思うが、この湧き上がる探究心を抑え込む事ができなかった。




 とりあえず、このまま誰にも見つからず探索を終え城を出るのを目標と決める。




 ーーーさてさて、いよいよ城探索だー! まずは、王様とか王子でも見に行こうかな。宝物庫とかもあれば見てみたいな。あ、あと無駄に長い食卓とか本当にあんのかな? あ、訓練所的なのもやっぱあんのかな?




「ねぇねぇ。」




 服をクイクイと引っ張られる。




「静かにちて。今、考え事ちてるの!」




 ーーーだけど、思ってた城とは違うんだよなー。全然ゴージャス感がない。……だが! しかし! こういう古い城には、古くから眠る貴重な秘宝とかあるかもしれない!




「ムフフ。希望しかない!」




 勝手に頬の筋肉が上がる。




「ねぇ……ねぇてば!」




 またもや服を引っ張られる。




「もう、さっきから、うるちゃいな! 誰だよ!?」




 ーーーなんなんだ! また私の邪魔か? 誰かに見つかったらどうすんだ!? 誰かに……見つかったら……誰かに……






 額から滝のような汗が噴き出す。




 慌てず。ゆっくりと。服が引っ張られた方を振り返る……





 するとそこには、肩まで伸びた黒髪、黒目の5歳くらいの女の子が笑顔でたっていた。



 クリッとした大きな目にスッとした鼻、子供特有の少し丸い輪郭、その顔はとても愛らしく、将来美形になるだろう事が容易に想像できるような顔で、

 白いシャツにサスペンダー付きの黒いズボンを履いており、知り合いの結婚式に来た子供のような正装だった。




 ーーーなんだ子供か。



 フー。と胸を撫で下ろす。




「にゃに? 何かよう?」



「付き添いで来たんだけど、退屈なんだ。一緒に遊ぼう!」




 私の素っ気ない返事にも関わらず、キラキラした瞳に屈託のない笑顔で話しかけてくる。




 ーーーグハァ。ま、眩しい! ……これがピュアスマイル!



 謎の精神攻撃をくらった私だったが、




「無理無理。お姉たんは、今、忙ちいの!」



 シッシと追い払うかのように手を動かす。


 私は、子供だからといって優しくしたり甘やかしたりはしないのだ。


 そう、老若男女問わず平等なのだ!

  


 が、しかし、



「えー遊ぼうよー! 遊ぼうよー! 退屈だよー!」



 女の子は私の服を引っ張り、大声で駄々をこね出す。



 慌てて女の子の口を塞ぎ、人差し指を自分の口に当てる。




「しー。わかった。わかった。遊んでやるから! 静かにちて!」




 すると女の子はキラキラした笑顔で頷く、




 ーーーまた、変なのに絡まれた! どんだけ探索の邪魔が入るんだよ!




 ハー。と大きな溜息をつく。



 実のところ私は、子供が苦手だ。


 苦手というか、現実世界でも子供がいたわけでもなく親戚づきあいもそれ程なかった上に、兄弟もいない。


 そう、周りに子供が全くいない環境なのだ。



 なので子供への接し方がいまいち……いや、全くわからない。




 女の子を見れば、まだこちらをキラキラと輝く笑顔でこちらを見ている。




 ハー。私はまた一つ大きな溜息をつく。




「僕はマオだよ! 君は?」




 私が観念したのがわかったのか、女の子はとても嬉しそうに自己紹介をしてきた。




 ーーーしかも、ボクっ娘かよ! 確かに服装も男の子ぽいけど!




 何がしかもかわからないが、この世界にもボクっ娘がいるんだなと思いながらも軽くペコッとお辞儀して




「私は、もっちーだよ。で、何ちて遊ぶの?」



「うーんとね。……




 女の子がゆっくりと口を開く。




 それと同時に、笑みが深まっていったと思えば、それに反し、キラキラしていた目が曇っていくように光が失われていき、やがて感情のない人形のような目になっていく。




 その様子は少し狂気じみていて、背中に一瞬だが寒気のようなものを感じた。




 私がその様子をまじまじと見ていると、




「じゃあ……この城にいる人間を殺して遊ぼう! そうだなぁ……たくさん殺した方の勝ちでどう? 楽しいよ! 君は競いがいが、ありそうだし。これで僕も退屈じゃなくなる」




 女の子は、いい事を思いついたでしょ。とでも言うかの様な顔をしていた。




 …………




 私達のいる場所だけ、空気が一気に冷えた様に感じる。




 ーーーな、なんだと! それ、遊びなのか? この世界の子供は皆んなそんな事して遊んでるのか? この世界は子供まで変なのか? いや、これが“近頃の子供”ってやつなのか? この子の将来……いやこの世界の将来が心配だぜ!



「フッ。 ()っちゃう?」



 一杯いっとく? でも言うかの軽いノリで答えてしまう私。



 突拍子も無い女の子の言葉に、私の脳みそは《プチパニック》を起こしていたのだった。


 次回は、明日か明後日です。

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