ボッチ
私とマオは、城にいる人間を殺りまくって♪国から追われた。
追っ手も殺りまくって♪やがて、世界中から追われる様になった。
そして、その世界中の追っ手も殺りまくって♪楽しく暮らしましたとさ。
…………
「めでたち。めでたち♪ ……って! ちがーーーーーう!」
ある意味、『伝説になる』未来が見えた自分自身に激しい乗り突っ込みを入れる。
マオは、私の突然の奇行に驚いたのか目を丸くしている。
ーーー危ない! 危ない! 危うく流される所だったぜ! 子供だからと侮っていた。……この餓鬼、やりおる!
ゆっくりと、深呼吸をして荒くなった息を整える。
「よち! 違う遊びをちよう! 子供らちい遊びを! そう! 子供らちい! そう! 無邪気な遊びを!」
私は『子供らしい』と『無邪気』という言葉を強調させて言う。
「えー、子供らしい遊びって何? 僕、よくわからないや」
マオは本当にわからないと言った様子で、考え込む。
私も答えようとするが、実年齢32歳の私に最近の子供が何して遊んでるのかなんて、わかるはずもない。
一緒になって考え込む。
「うーん。あ! ほら。普段は? 友達と何ちて遊んでるの?」
「え? 友達? そんなの僕には、いないよー」
…………
ーーーえっ? この子、常ボッチなの? 一人ボッチなの? 「たくさん殺した方の勝ちね」なんて変な事を言い出す子だけど。危ない子だけど。本当に変な子だけど! ボッチは悲しいぜ! ……仕方ない。
涙を堪え、マオに優しく笑いかける。
「ちょ! 何? その哀れむ様な目は? 何か勘違いしてない?」
マオは、ボッチがバレたのが恥ずかしいのか、慌てて誤魔化そうとしている様に見えた。
私は熱くなった目頭を押さえ、マオの肩にそっと手を置く。
「ねえ! 何でそんな泣きそうなの? そして、なんで《何も言うな感》出してるの?」
マオは、更に慌てたのか必死に明るく見せようと突っ込みを入れてくる。
私はその様子を見て、更に泣きそうになる。いや、すでに涙がちょちょぎれていた。
「安心ちろ。私が、一緒に遊んでやる」
「いや、なんで泣いてるの? そして、なんで、そんな上からなの?」
私は涙を拭いて笑顔でマオに向けてサムズアップする。
「いやいや、だから! ……ハァー。……もう、いいや」
マオはようやく諦め、自分自身の事を認めたのか、何も言わず私の為すがままに身を任せていた。
それからどれくらいの時間が経っただろうか《実際には五分くらい》マオが疲れた様子で声をかけてきた。
「で、何して遊ぶの? もっちーは、いつも何して遊んでるの?」
ーーーんー。遊ぶって言ったら、ゲームだったしなー。んー。私が子供の頃は、何してたかなー
記憶を遡る。
「んー。ママゴトとか、鬼ゴッコかにゃー」
「ママゴトって何?」
「え? ママゴトを知らにゃいの?」
「うん! おにごっこ? って奴もしらない」
………………
私の涙腺は緩くなってしまったのかもしれない、マオの言葉を聞いてまた涙が溢れてきた。
ーーーそうだった。この子は友達がいないのだ、ボッチなのだ、遊びを知らないのも無理ない。……知らないのか? だなんて、酷な事を聞いてしまったぜ!
私は再び涙を流しながら、マオの肩に手を乗せ首を横に振る。
マオはそんな私を見て、ハー。っとまた大きな溜息をつき
「うん、それは本当、もういいから。……じゃあ、そのママゴトって奴やろうよ」
マオの顔は、世の中を知り尽くしたような、どこか現実を知り夢を諦めてしまった大人の様で、子供に見えない哀愁を感じさせた。
「いいよ!」
私は再び満面の笑みでサムズアップする。
ーーーママゴトなんて久々だな。仕方ない、本当に子供に戻ったつもりで、遊んでやるか!
そう心に決める。
「じゃあ……マオが嫁で、私が旦那ねー」
「え? 僕達、結婚するの? 結婚してくれるの ? 突然だね! てか、僕が嫁なの?」
「ん? そだよー。にゃに? 嫌にゃの?」
「いや! 嫌じゃないよ! でも本当に……本当に、いいの?」
マオの顔は最初に出会った時のようなキラキラと輝く笑顔に戻っていた。
ーーー相当、遊べるのが嬉しいんだな。二人とも女だから姉妹設定とかでもよかったが、やはり夫婦設定の方が一般的なママゴトだろう。……そして私は大人だ、あえて男役をやってやろう! フッ。所詮は子供、嬉しそうに笑いやがって。
なぜか心の中で、子供に勝ち誇る私。
「もちろん! いいよ、私が旦那で。ちにゃみに私はね、“ザ☆亭主関白”の仕事と嫁一筋な旦那で、飯に、特に米の炊き加減に! うるたい旦那だよー。マオは?」
「え?! 僕? 僕は……退屈が一番嫌いで、滅多に怒らないけど怒ると我を忘れて暴れてしまうんだ。……ぼ、僕も旦那一筋の、よ、嫁になるよ!」
マオは、照れているのか頬を真っ赤に染め意を決したように力強く、私に向かって言ってきた。
「ハイハイ。じゃあ始めりゅよー? よーい……『あ! ちょっと待って!』
私がスタートと言うのを遮るようにマオが慌てて止めてきた。
なんだ? と様子を伺うと、何やらポケットの中に手を入れ、ゴソゴソと何かをポケットから取り出そうとしている。
「はい、これ! 夫婦になったんだし、これ付けなきゃね!」
そういって、シンプルなシルバーに輝くブレスレットを取り出して私の手を掴み腕に通す。
だが、ブレスレットは大人用なのか大きすぎてスカスカだ、このまま歩けば一瞬で落とすだろう。
ーーーなんだこれ?
不思議に思い、まじまじとブレスレットを見つめていると、突然、黒く禍々しいオーラの様なものを激しく放出しだす。
「うわ! にゃ、何?」
私が慌ててブレスレットを腕を下げ落下させて外そうとすると、
「フフフ。大丈夫だよ! 落ち着いて」
と腕を掴まれ、上げられる。
どうやら、外させてはくれないようだ。
やがて黒いオーラの様な物が薄れて行くと共に、ブレスレットが見る見るうちに縮んでいき、やがて私の腕のサイズにピッタリになる。
ピッタリすぎて、むしろ外せる気がしないほど腕と密着していた。
不思議に思い、ブレスレットを見る。
シンプルなシルバーのブレスレットと思っていたが、真ん中の辺りに薄っすらと何か黒い文字の様なものが見える。
目を凝らして見ると、そこには『呪』という文字が見えた。
「……ん?」
見間違いか? と思いブレスレットの文字を二度見する、が、やはりそこには『呪』という文字があった。
「……これ、にゃに?」
私は背筋に寒気のようなものを感じ、恐る恐る尋ねる。
するとマオは笑みを深め、光を失った死んだ魚のような目になると
「それはね、僕の家で、代々伝わるものなんだ! 夫婦になった相手に着けてあげるんだ。これを着けるとね、相手の居場所がすぐわかるんだよ! 凄いでしょ! ねぇ、嬉しい?」
…………
ーーーいやいや! こえーよ! なんだよ! 居場所がわかるって、GPS的なものか? ってか代々、結婚相手を呪ってんの? 重いわ! ってか遊びで付けんなよ! わかった! こんなの軽々しく遊びで着けるから、この子はボッチなんだ! なるほどな。
一人納得をして、とりあえずブレスレットを外そうと試みる。
フーン! 思いっきり力を込めて外そうとするが、呪いのせいなのか、ピッタリすぎるからなのかはわからないが全く外れる気配がしない。
レベル120の岩の壁も指で貫通させる私が、全力を出しても外せないとは思いもしなかった。
徐々に、取り乱すように慌てる。
私がブレスレットと格闘していると、マオが、ハハ。と乾いた声で笑ったと思えば
「無理だよ。それは僕が外すか、僕が死なない限り外れないようになってるんだ」
どこか自慢気に楽しそうに話すマオ。
ーーー……な、なんだと! この子“ヤバイ子”だとは思ってたが、やっぱり、とんでもなく、ぶっ飛んだ“ヤバイ子”だったーーー!
「このまま……呪い殺されるにょか私!? 」
ガク。と膝をつき放心状態になる。
ーーー斯くなる上は、殺られる前に殺るしかない! さらば、私の道徳心! ブレスレット外した後で、蘇生魔法かけてやるから安心しな!
道徳心と別れを告げ、腹をくくり立ち上がり、ゆっくりお決まりのファイティングポーズをとる。
「苦ちまないように、一撃で逝かせてやる」
どんなに混乱しようと、自分の中のカッコいい台詞は忘れない。
だがマオは、こちらを見てはいるが、なんの反応も見せない。
…………
「……ねぇ、さっきから何言ってるの? もしかして、もっちーって馬鹿なの? 僕が自分の旦那さんを殺すわけないじゃないか、退屈になっちゃうだろ」
しばらくの間を置いて、心底呆れた顔でマオが、やれやれと両手を上げ首を振る。
「……え? そーにゃの?」
「そうだよ。だからとりあえず、落ち着こうか」
小さな子供を諭すように、優しくマオが話しかけてくる。
私は少しずつ理性を取り戻し、構えていたファイティングポーズを解く。
「……凄い殺気だったな。やはり僕の見込んだ通りだ。……今の僕じゃ。簡単に殺られちゃうだろうね」
マオがこちらを見てボソボソと何か呟いているが、あまりにま小さすぎて聞き取れなかった。
「にゃに?」
「ううん。なんでもないよ!」
マオはそう言って笑うと、ブレスレットの事を教えてくれた。
この『呪』は、付けた本人しか外せないというだけのものらしく、特に身体に害や死ぬ事は、ないそうだ。
ーーーまあ、身体に害がないならいいか。……きっとあれだな。あまりにも友達が出来なくて、初めて出来た友達に歪んだ友情をぶつけてしまったんだろう。
本当いいのか? と少し思ったが、まあ、ママゴトが終わればお別れだ、外してくれるだろう。
それに、子供は飽きやすいと聞いた事がある。その内に飽きて外してくれるだろ。
ウンウン。と一人頷き納得していると、
「それで、僕の旦那さんはこの後どーするのかな?」
今度はキラキラした瞳と笑顔でマオが聞いてくる。
ーーーうーん。どうしたものか……鬼ごっこでもするか? いや、全力で走ったら捕まらないし、鬼になってもすぐ捕まえれる自信がある。全然楽しくなさそうだ。それに、さっさと遊び終わって探索もしたいしな。……探索……そうだ!
閃いた、とばかりに手をポンと鳴らす。
「よち! 城の探索ちよ!」
「えー。何それ? 嫌だよ。退屈そー」
大反発をくらう。
が、しかし! 私は引き下がらない!
「おい! 嫁! 何言ってる? 忘れたにょか? 私は亭主関白だと! 嫁とはにゃ、旦那の言う事に、黙って従って着いてくるものにゃのだ!」
腰に手を当て仁王立ちポーズは忘れない。
そう、これが私の『亭主関白』理論だ!
すると、マオは目を丸くして驚きを隠せない様子で言う。
「そ、そうなんだ! それは知らなかった」
「しょうだよ! さぁ! 行くぜ! 嫁!」
着いてこいと言わんばかりに、堂々とした足取りで歩き出す。
「ハハ。わかったよ! 本当、男らしい旦那さんだ」
と言って後ろを着いてきたと思えば、私の体が急に、宙に浮く。
どうやら、マオが私の両脇の下から腕を通し前を向かせたまま抱っこをした状態になったようだ。
これでは自由に動けない。
「……降ろちてくれ! 嫁よ! 自分で歩ける!」
「ハハハ。ダメだよ。旦那さんを自分で歩かせるなんて、失礼だろ? 」
「しょ、しょうなのか?」
「そうだよ。で、まずはどこへ行くの?」
なんだか『亭主関白』理論返しを食らった気分になったが、まぁいい! 私はいつだって流されやすいのだ!
それに自分で動けはしないが、どうやら嫁は私の行きたい所に向かってくれるらしい。
ーーーまぁ。探索できるぽいし、このままでいっか。……しかし、子供に向かって『嫁』と連呼する32歳の私……激しく、激激しく痛いな! ほんとに、この世界は私への精神攻撃が凄い。
自分自身への精神攻撃に打ちひしがれていると
「ねぇ! ねぇってば! どこ行くの?」
マオの声で我に帰る。
ーーーはっ! 落ち込んでても仕方ないか。これはもう慣れるしかないんだろうな。せっかく探索できるんだし、楽しもう! ……よし!
「とりあえず、王様と王子を覗きに行くぜ!嫁!」
「え? 覗くの? 会うんじゃなくて?」
「え? 何で会うにょ? 別にチラッと見るだけでいいよ。こっしょりね! バレたら面倒臭いちね」
「ハハハ。僕の旦那さんは本当変わってるね。退屈しなそうだ。いいよー。僕が連れて行ってあげる」
そうして、抱き抱えられたまま城の中をこっそりと進んで行くのだった。
次回は明日か明後日です。自分で何度か読み返すと後から後から、誤字脱字や書き足りない所をたくさん発見しました。
年末に時間があれば、書き直しと誤字脱字の修正ができたらなと思ってます。




