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アンジュ・ス・バートル  作者: Jyona3
ー第2章ー カースス王国編
21/55

あんたが神か

遅い時間になりました。

 


《デスペラーティオ城》王都の最奥にあるこの城は、小高い丘の上に建っており、深い堀に囲まれていて、その内側に高い城壁がある。城壁内にはいくつもの塔が聳え立っていて中央に一番大きな宮殿がある。要所要所に張り出し陣があり、跳ね橋のある城門は一箇所だけで城が要塞の機能を兼ね備えていた。



 私は現在、城門前の近くの木の茂みに隠れて様子を伺っていた。


 城門には左右門を挟んで2人の警備兵らしき男が、鎧を着て長い槍を片手に立っていて、近くを通る者などを警戒するように見張っていた。



 ーーーどうしたものか……



 と考えていると、



「ハァハァ……あなた速すぎるわよ……」



 息を切らしたエフが、後ろから声をかけてくる。



「え?……今きちゃの?」



 私は浮かれていて、かなりのスピードで飛ばしてきた為に、エフが遅れている事に気付いていなかった。



「な! 遅いとでも言うのか……これでも“駿足のエフ”と呼ばれた私を……確かにまったく追いつけなかったが……クッ」



 また小声で何か言っているようだ、



 ーーーなんだろ、置いてかれたのそんなにショックだったのか? ブツブツ言って落ち込むのが癖なのか? この子やっぱちょっと暗いな!



「ごめん! ごめん! 今度は、ゆっくり行くよー」



 私はとりあえず両手を合わせ謝っておく。



「ッつ! バカにするな!」



 すると今度は、大声で怒鳴ってきた。



 ーーーおぉ、これが噂の“キレる若者”か!! 怖いな! ワカモノコワイ!



 なんて思いながら、私は自分の口に人差し指を当て



「しーーー」



 という。


 隠れてるとはいえ、こんな大声では警備兵に気付かれてしまう。



「す、すまない」



 どうやらエフも自分の軽忽な行動に気づいたのか慌てて小声で謝ってきた。



「いいよ。……ところで、どうちようか?」



 と言い警備兵を指差す。



「それなら大丈夫だ、少しここで待っててくれ」



 そう言い残し、エフは足早に駆けて行った。


 恐らく一般人なら目で追えない早い動きだが今の私には、はっきりと見えていた為、普通に走り出しただけに見えた。




 〜五分後〜



 私は木の上で腕に頭を乗せ寝転がっていた。



「おちょいなー」



 エフはまだ戻って来ていなかった。



 ーーー遅すぎる! まさか! 先に中に入ったのか? ……裏切り者め! こうなったら!



 木から静かに飛び降り城門に向かって歩きだす。



 私は現実世界でも待つのが苦手だった。



 待ち合わせに遅れてきた友人に「ごめん〜混んでて!」と言われると「うん、1時間くらいまった気がする」「え? 10分しか過ぎてないよ?」というくらいに待つ時間ぎ長く感じるのだ。



 待っている間に他の事ができると考えるタイプで、行列のできる店なんて以ての外だ。誘ってくれた友人にも「待つくらいならその辺のコンビニ飯でいい」と言うくらいだった。



 ーーーうーん……こういうのは案外、堂々と行けば通れるかも! 普通に、普通に、私は城の関係者、私は城の関係者……



 と、自分に暗示をかけながら城門へと歩く。



「お疲れっしゅ〜」



 警備兵の前で軽く敬礼する



「あ、お疲れ様です」



 門の右側に立つ若そうな警備兵に、ぎこちなく敬礼を返される。



 …………



 2人の間を通る。



 ……が、急に体が宙に浮く。



「いやいやいや! 待て待て!」



 どうやら左側の男に首根っこ捕まれたようだ。



 ーーーなんでだろう。この世界に来てから首根っこ捕まえられる状態が多いな……野良猫にでもなった気分だぜ!



 なんて考えていると、



「おいおい、どこの嬢ちゃんだ? 変な格好して、ここはな子供が遊びに入るような所じゃねーぞ」



 左側の男が小さな子供に言い聞かせるように言ってくる。



「お前もお前だ! 何のために見張ってると思ってんだよ」



 言いながら右側の男を小突く。



「あ、いて! すみません」



 どうやら左側の男は右側の男の先輩なのだろう。



 右側の男が小突かれた頭を抑えながら私をジッと見てくる。


 目が合ったと思ったら突然、破格に顔を綻ばせ近づいてくる。そして左側の男から奪うように私を掻っさらい両手で持ち上げ



「ありゃ〜どうたてたんでぇちゅか〜迷子でちゅか〜」



「ひぃー!」



 突然の豹変ぶりと赤ちゃん言葉に私は、悲鳴をあげる。体が勝手に小刻みに震えだす。



「ありゃ〜。怖いおじたんに怒られて怖かったでちゅね〜でも、もう大丈夫でちゅよ〜。お兄さんが守ってあげまちゅからね〜」



 何を勘違いしてるのかギュッと抱擁され、ほっぺをスリスリされる。私は恐怖で何も考えられず、もう……やられ放題だ。



 この世界に来て子供扱いには少し慣れてきてはいたが、ここまで露骨なのは初めてだったので頭と体が対応しきれなかったのだ。



 しばらく放心状態で固まっていると



「辞めろ! 見てられねぇよ!」



 左側にいた男が、また右の男を小突いて私を地面に解放してくれた。



 ーーーありがとう! あんたは命の恩人だ……いや……神か? あんた! 神様だったんだな!



「おぉ……神よ」


 私は思考もおかしくなっていた。

 左側にいた男に片膝をつき手を合わせ拝む。



「な、なんだ? ……辞めろ! 拝むな!」



 私も小突かれ正気に戻る。



 ーーー自分に向けられた赤ちゃん言葉がこれほどとは! なんか変なプレイしてた気分だ……まさか入り口でこんな精神攻撃を受けるとは!



 左側にいた男……元神様が、右側にいた変態を指差し



「ほら、こんな危ねぇ奴もいるんだ。さっさと帰れ」



 手首を振り、動物を追い払うように私に向かってシッシッとやってくる。


 どうやら中にはいれてくれないようだ。



 ーーー仕方ない。また、あれを使うか……



 私は、ゆっくり地面に寝転がる、



「えー! 中にいれてよー! ちょっと王様とか王子ちょか姫ちょか見て帰るだけだからーお願いーお願いー」



 秘技!駄々っ子、再びだ。



 ……チラッと、元神様を見る。

 だが、またもや冷たい視線で見られていた。



 ーーーこの世界の人間は精神攻撃の体制が強いのか?!



 と思ったが、

 チラッと右の変態の顔を観ると変態の向こう側にいってしまってる顔をしていたので、どうやら人それぞれだとわかった。



 危険を感じ、すぐ立ち上がる。



「何がちょっと見るだけだ! 変なガキだな……無理に決まってんだろ! おら、帰れ」



 右の変態を抑え込みながら、またもや左の元神様がシッシッとしてくる。



「あい」



 これ以上続けても無駄だと思い、城門から離れゆっくり城壁伝いに歩く。警備兵2人はまだこちらを見ているようだった。



 ーーー見られてるな。飛び越えて入るのは無理かー。せめて中を見たいな、覗けないかな……



 2メートルくらい歩いたあたりで止まり、城壁を見つめる。



 …………



「えい!」



 城壁に向かって思いっきり人差し指を突き刺してみる。


 するとツォン! と音がしたと思ったら、ハンドドリルでも使ったかのように指の大きさに綺麗に穴が空いた。


 そして、ドン!とまた重たい物が地面に落ちる音が聞こえた。



 ーーーおぉ! 覗き穴できた! 私の指筋(ゆびきん)すげぇ!



 興奮気味で穴から中を覗く、だが壁の内側には堀があり、その内側にも壁しかなく城の中など見えるはずなかった。



 しばらく覗いていると、警備兵の2人が焦ったように走って近づいてくる。



「おい! 今! 何した! ……って、壁に穴空いてんんじゃねぇか! まさか、指で開けたのか?! いや、それはねぇなこの壁は厚さ1メートル以上はある! ここだけ劣化してたのか?! こんなことあるのか?! おい!」



 元神様は大変、混乱していらっしゃるようだった。変態の胸ぐらを掴みまくし立てるように騒いでいる。



「落ち着いて下さい! そんなの俺にもわからないっすよー!」



 2人がわめき合って騒いでいると、



「おい! どうした。何かあったのか?」



 背後からこちらに話しかける声が聞こえてきた。



 振り返るとそこには、白馬に乗り真っ白なプレートアーマーを着て背中に大きな剣を背負った男がいて、その周りには4人の女が立っていた。



 ーーー誰だこいつ?



 と思って見ていると。



「これは、サエウム様! 騒いでしまい申し訳ありません」



 元変態が突然、畏まって深々とお辞儀をする。



「サエウム様! 壁が! 指で! 穴が! 子供が!」



 元神様は壁の穴を指差して、まだ、だいぶ混乱されていらっしゃるようだ、うまく喋れていない。



「落ち着け、……なんだ、奇妙な穴が開いているな。まるで何かでくり抜いたようだ」



 サエウムと呼ばれていた男が優雅に馬から飛び降りる。


 サエウムは青く長い髪を後ろで束ねており、髪と同じ色の瞳で切れ長の目はまるで鷹のようだ。常に口元には薄っすらと笑みがこぼれており、人を小馬鹿にしているようだった。

 私の第一印象は、胡散臭そうな男前だ。



 サエウムが馬から飛び降りると周りにいた女達から


「キャー! 馬からお降りになられたわ」

「キャー! 素敵!」

「キャー! たまらないー!」

「キャー! 目がやられたー!」


 黄色い声が発せられる。

 どうやら女達はサエウムの取り巻きらしい。



 それが聞こえているのか、いないのかは、わからないがサエウムが、ゆっくり穴に近づいて腰を曲げ穴と私を交互に見てくる。



「へぇー、この子供がこの穴をね」



 第六感というのか、薄っすらと笑みを浮かべる顔を見ていると、なんだか嫌な事が起こりそうな気がしてきた。



「ハハ! たまたま壁のここが劣化ちてたんだね! ハハ! ビックリちたー」



 私は全力で誤魔化す事にした。



「へぇー、ここだけね……こんなピンポイントでね……凄いね」



「ハハ! 凄いねぇー」



 どうやらサエウムは、私を疑っているようだ。

 すると、突然ニヤリと今までより笑ったかと思うと



「この子供を牢に入れておけ、後で、俺が直々に聴取してやろう! あと、技師を呼んで穴を塞いでおけ!」



 サエウムが警備兵に指示を出す。


「キャー! 指示を出されてるわ〜」

「キャー! 的確だわー」

「キャー! カッコいい!」

「キャー! 目がやられたー!」



 ーーーおい! さっきから目がやられてる奴いるぞ! 眼科いけ! ……じゃない! まずい、このままでは、城には入れるけど牢屋行きだ! なんとかせねば!



 ……考えるが、いい方法が見つからない。



「こ、こんな子供をですか? いちよう親も呼び出しますか?」



 正気に戻られた元神様がサエウムに聞く。



 ーーー神様! 優しい! さすが私の見込んだ男だ! ……親……親か!



 私はニヤリと笑う、元神様のお陰で名案を思いついた。

 深呼吸して、大きく息を吸い込み、



「ごめんなちゃい!…………パパ!」



 大声で言いながら、サエウムに飛びつく。



「突然何をする! 気でも触れたか!」



 必死に剥がそうとするサエウム、だが私の力の方が強く剥がれなかった。



「パパ! パパ!」



 とにかく連呼する。すると……



「キャー! サエウム様に隠し子がー!」

「キャー! 今は剣技いがいは興味ないって言ってたのにー!」

「キャー! 最低だわ! 不潔よー嘘つき!」

「キャー! 目がやられたー!」



 女達が喚き騒ぐ。



「ま、待て! これは違うのだ! 勘違いだ!」



 サエウムが慌てて必死に言い訳をしている。その隙を突いて、私は猛ダッシュで逃げたのだった。



「サエウム様! こ、子供が一瞬で消えました!」



 後ろで元神様達が私が逃げたのに気づき慌てているのが聞こえる。



 ーーーすまん元神様! この恩はいつか必ず!



 感謝の気持ちを胸に忘れないように刻み、木の茂みに戻る。



「あ、あんた……何してんのよ」



 エルが戻ってきていた。どうやら、ここから先程のやりとりを見ていたようで呆れ果てた顔をしていた。



「ふん! 甘いにゃ……あれも作成の内だ!」



 と言って誤魔化してみる。



「そ、そうなのか? よくわからんが何のために?」



「ふん! しょんな事もわからにゃいの? 自分で考えろ!」



 更に誤魔化してみる。



「くっ! ……たしかに聞くのは簡単だ。自分で考える事に意味があると言う訳か! こんな子供に教えられるとはな……私もまだまだだな」



 またボソボソと何か言っているようだ。



 ーーーブレないなー。 なんとか誤魔化せそうだ。



 と思っていると、



「王族の避難用の隠し通路を発見した。サジェス様が睨んでいた通りの場所にあった。やはり、あの方は凄い! そこから中に行こう!」



 どうやら中に入れるようだ。



 ーーー不法侵入じゃないか! 忍者ゴッコもここまでやるとは……本気だな! よし!私もとことん付き合おうじゃないか!



 私は頷き、指でOKを作る。


「わかた! 案内たにょむ!」



 別に面白くなってきたなんて思ってはいない! 付き合いだ! 人間、付き合いは大事だからな! それに、これからもたまに忍者ゴッコしたいからだ!



 そして私は隠し通路を目指して、エフの後を追いかける様に走り出したのだった。



次回は、明日か明後日になります。

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