怪しい人物
本日も遅い時間になりました。話しを区切るため短めです。
「んーーー」
私は、大きく伸びをする。
カーテンの隙間から光が差しこんで薄暗い部屋を照らしている。
ーーー朝だ。
私は、天蓋付きの大きなベットから飛び降り、カーテンを開ける。
朝日が眩しくて目を細める。
すると、タイミングを見計らったように、ゆっくりと扉が開きエドモンドが入ってくる。
「おはようございます」
「おはよー」
「皆さん、先に起きて下の食堂にいますよ。早く支度してください」
「はいはーい、エドモンドも先行っててー」
「わかりました」
と言って、エドモンドは部屋を出ていく。
私達は酒場でご飯を食べた後、マスターにこの街で一番豪華な宿屋を教えてもらい、そこに泊まっていた。
ここは貴族御用達の宿屋らしく、個室にはお風呂や洗面台、トイレまである。
普通の宿屋には風呂などなく外で水浴びらしい。しかもトイレは、ポットン!
そんなの現代日本で育った私には、絶対無理だ。ゲーム時にお金貯めといて本当に良かったと思った。
私は洗面台で顔を洗い、準備を整える。
準備といっても、アイテムBOXを持つくらいで他には特にない。
《ウサぐるみBOX》は、モフモフしていて気持ちいいので、寝る時もそのままだった。
パチン!
自分の両頬を叩き気合いを入れる。
ーーーよーし! いよいよだ!
そう、今日は朝ご飯を食べたら冒険者ギルドに行く予定なのだ。私の伝説が始まるのだ、気合いを入れるのも当然だ。
気持ちが高ぶり、勢いよく扉を開け部屋から飛び出し走りだす。
走った先には、下へ行くL字型階段がある。
ーーーめんどくさい! ショートカットだ!
そのままの勢いで2階から1階にジャンプする。
「とぉっ『きゃあぁ!』」
……どうやら下に人がいたようだ。
とっさに避けたので踏んではいないが、至近距離に降りたので、どうやら驚かしてしまったらしい。
腰を抜かしていた。
「ごめんなしゃい」
私は、起こそうと右手を差し出す。
その人は、全身を隠すように真っ黒なローブを着ていてフードを深く被っていた。
ジッと差し出した手を見つめている。
…………
「ハッ!」
私は気づいた。現在の私の身長は70センチ、相手は160センチくらいだろうか?どう考えても、私が手を掴んだとて起こせるわけがない。物理的に無理だ。ただの握手にしかならない。
ーーーやばい! この状況では、私は倒れてる人に握手を求める変な子だと思われてしまう!どうすれば!
言い訳を考えワタワタしていると、
「……大丈夫だ」
と言ってお尻を叩きながら立ち上がっていた。
「ごめんなしゃい」
私は、もう一度謝る。
けれど、相手は何も言わずに背を向け歩いていった。
ーーーなんだあの人? 見るからに怪しい人だったな……あんな格好じゃ、私は怪しい人です。って言いながら歩いてるようなもんだろ。
そんな事を思いながら、離れて行く後ろ姿を見ていた。
「おーい! セイラちゃん、何してんのー?もうみんなご飯食べてるよー」
と後ろから、ソージが声を張っているのが聞こえる。
「なんだとー! 誰が支払いしゅると思ってんだー! もっと、私をうやまいやがれーーー!」
と、声を荒げながら食堂へと向かったのだった。
朝からご飯をたくさん食べ宿屋を出る。
朝の街は昨日と打って変わって、とても賑わっていた。たくさんの露店が出ていて、お店の人達も客寄せに声をだし、大道芸人などもいる。
「お祭りみたいー!お店まわろー! まわろー」
現実世界で、小さい頃はよく近くの神社のお祭りなどに行っていたが、大人になってからは行かなくなっていた。懐かしい気持ちが蘇る。
私がキャッキャしていると、
「いいわね〜お買い物したいわ〜」
と言ってシロが私に手を出してくる。
……まるで金を寄越せとでも言うように。
私は、その手を打ち払う。
「自分で買いなちゃい!」
「ケチね〜。確か……腐るほど持ってるくせに〜」
「私は、自分から払うのはいいけど人に言われて払うのは、いやにゃの!」
「天邪鬼ね〜、フフ、だいぶ早めの反抗期かしら〜お姉さん心配だわ〜」
と人を小馬鹿にするように笑っている。
ーーーこのオカマ野郎! そのニセ乳もぎ取って、露店に並べてやろうか!
なんだろ。みんな私に対する態度がだんだん雑になってる気がする!
一人釈然としない気持ちになって、地団駄を踏んでいると
「露店巡りもいいですが、今日は冒険者ギルドに行くのではなかったのですか?」
エドモンドは、いつも通り呆れ顔だ。
ーーーそうだった! こんなことしている場合ではないのだ!
「伝説が! 今、始まるのだーーー!」
と私は叫びながら
走ろうとする……
グゥオェ!
お花畑、再びだ!
「デジャヴ……」
ヒョイっと、エドモンドに首根っこ掴まれ持ち上げられる。
「最近は、レオよりセイラ様の方が厨……個性的な発言が多いですね」
ーーーなんだと! この……私が!?
私が打ちひしがれ、惨めな気持ちになっていると
ソージが前を歩きだし頭の後ろに手を掴んでこちらを振り返る
「ハハ。セイラちゃんはいつも元気だね。さあ、行こうか」
「ソージ……」
ーーーこ、こいつ、ついに仕切りだしやがった! なんだ!? 裏で仕切ってるのは僕だよ……みたいな?! そんなキャラ狙いだしたのか? お母さん心配!
とまた訳の分からない脳内暴走しているうちに、
「着きましたよ」
エドモンドが、パッと手を離し私を地面に落とす。
どうやら冒険者ギルドに到着したらしい。
次回は、明日です。




