第99話
エリックとゴーランさんは訓練場で向き合っていた。
「まず実践に入る前に確認させてもらいます。エリックくん、あなたは私と同じ戦闘スタイルで行くつもりですか?」
ゴーランさんの言う同じ戦闘スタイルというのは肉弾戦で戦い、傷を負ったら自らに回復魔法をかけるという、所謂ゾンビ戦法である。肉弾戦と言うより剣士と言った方がいいだろうか。
「.....いえ、俺は火属性が高いので火属性魔法も応用しつつ戦えたらと思ってます」
「ふむ、そうかわかった。たしかこの訓練場はダメージを無効化する魔法装置がありますよね?」
「あるな。それがどうかしたか?」
俺もエリックも首を傾げる。俺にもその質問の意図が一瞬分からなかった。
「それを切ってもらえますか?」
「えっ!?あれを切ったら傷を負いますよ!?」
「これから回復魔法を使った戦闘方法を習得しようとしているのに傷を負わないというのは本末転倒ですから。心配しなくても大丈夫です。死なないように加減はしますから」
エリックがかなり焦った様子でそう言ったがゴーランさんは全く動じる様子を見せずにこう言った。
「分かった。ただ、本当にやばいと思った時は俺が介入するからな。まぁ大丈夫だと思うが」
「信用して頂いてるみたいで何よりです」
「じゃあエリーナ校長に許可を貰うついでに装置の切り方を教えて貰ってくる」
俺がそう言って訓練場を出たあとのあのエリックの絶望した顔はしばらく忘れられないな。
「はい、というわけで訓練場の装置の切り方とその許可をくれ」
「.....はい?いきなり転移してきて、というわけでって言われてもなんのことが分からないんですが.....」
「いやな?かくかくしかじかで」
「あぁ、そういう事ですか。良いですよ切り方は訓練場の入口横にある箱の中にあるレバーを下げるだけです。訓練が終わったらレバーを上げて、鍵も私に返してくださいね」
そう言ってエリーナ校長は俺に小さな鍵を渡してきた。
「わかった。強力感謝する」
「はい、いい訓練になるといいですね」
「そうだな」
そして俺は訓練場に戻り、その装置を切った。
「よしっ、もうダメージ無効化されなくなったぞ。じゃああとは見てるからゴーランさんの好きにやってくれ」
「じゃあそうさせていただこうかな」
「よっ、よろしくお願いします!」
「じゃあ、はじめっ」
そしてトッ、と軽い音がしたあとにエリックの腕には4本の切り傷が出来ていた。




