第78話
今回のアラームは子供達にとって危険になりうる強敵の出現を意味するアラームだ。幸い、子供達は離れた位置で魔物と戦っており、危険はなさそうである。
「みんな強いけど.....さすがにこいつは荷が重すぎる」
現場に到着し、遠目で充の目に止まったのは先程と同じ種類の魔物だったが、先程のものよりも3倍ほど大きい。先程吹き飛ばした熊の魔物がおよそ、俺と同じくらいだったので俺の3倍ほどあるということになる。
「.....さっきの熊の魔物と同じ種類の魔物だよな?」
俺はさらに観察を続ける。その熊の魔物はあたりをキョロキョロ見回し、何かを探しているような行動をしている。
「あの熊の魔物、もしかしてさっきバロンが殴り飛ばした奴の親かなにかか?」
その何かを探している姿はどこか自分の子供を心配している親のようにも見える。
「.....少し可哀想にも見えるがあいつは危険だな。見逃す訳にはいかない」
俺は熊の魔物との距離を一瞬でつめ、熊の首を朧月で下から上へとすっぱりと切り離す。切り口から大量の鮮血がとびだし、辺りが血に染まる。
「できるだけ苦しくない方法で殺せたかな.....」
ヒュッ、と剣を振るい刃に付着した血を振り払う。
俺はその死体をそのままアイテムボックスの魔法で収納する。そして充はしばし、思考にふける。
(さっきバロンはコアから魔物が生まれてくるって言っていたよな?で、ここはそこそこ遠いからこの程度の魔物しかいない。でもこいつはこの周辺の魔物の強さを逸脱している.....なにか特別な理由でもあるのか?)
数十秒ほどそのことを考えたが、最終的に分からずじまいでこのことはとりあえずおいておくことにする。
「まぁ、とりあえず.....驚異になる魔物もいない、生徒達もピンピンしてる。しばらくは俺ものんびりしてていいかな」
自動精密探知の反応を頼りに、どこにも異常がないことを確認する。
「特にすることもないし、みんなの戦闘を見に行きたいけど.....一人で行動しろって言った手前行きづらいな」
だが、どうにでも出来てしまうのがこの魔法という物。
俺は魔力を集め、それを水属性に対応した魔力に変換させていく。
「ミラージュ!」
俺がそう唱えると、一瞬周りの景色が歪み、すぐに元に戻る。
「成功.....だよな?」
俺は自分自身の手があるはずの場所を眺め、そう呟く。
この魔法は光の屈折を利用した、周囲から見た、自分自身の視覚的情報を遮断するものである。
思い浮かべたのは蜃気楼だ。
「よし、これで一人でっていう体は守られるな」
そして充は自動精密探知の情報を頼りに生徒達の元へ向かうのだった。




