第77話
俺は一度生徒達がなんの問題もなく、狩りをしていることを確認し、バロンの話を聞く事にした。
「まず一つ確認いいか?」
「ん?なんだ?」
「気分を悪くしたら済まないが、魔人は俺みたいな普通の人間にはその、悪く思われてるというか.....嫌われているのか?」
「うむ、そうだな。一般的には嫌われているな」
「それはなんでだ?」
「.....常識ないにも程があるぞ」
「す、すまん」
この世界に来たのが最近なので仕方ないのだが、それを言う訳にもいかないのでその言葉を飲み込んだ。
「まぁいい、どこから話したもんかな」
バロンは顎に手を当て、考えている。
「本当に簡単にでいいぞ。わからない所は図書館で調べるから」
「む、そうか。じゃあ重要なところだけ言わせてもらうとしよう。まず、この世には魔物が存在するな?」
「まぁ、存在するな」
俺は先程殴り飛ばされたクマを横目で見て頷きながら肯定する。
「だが元々魔物と言うのは存在していなかったんだそうだな、三百年程前まではな」
「そんなのか.....ん?まてよ?」
俺はつい先程図書室で読んできた『アスメル王国と周辺諸国』の一文を思い出す。
⚪︎アスメル王国が出来てから469年後に起きた、炎龍の暴走による王都大火災により、その起源などは失伝されている。
「アスメル王国が出来たのが900年ほど前で王都が炎龍に焼かれたのが王国が出来てから469年後だよな.....でもその時には魔物はいなかったんだろ?」
「お、常識を知らないと思ってたがそれに気づくのはなかなかいい目線をしてるな」
バロンはうんうんと首を縦に振る。
「で、実際なんでなんだ?」
「答えは簡単、龍は魔物じゃないからだ。龍種に分類されるな。というか、なかなか見かけないから伝説上の生物って考えてる人の方が多いかもな」
「そうなのか.....じゃあ俺がこの間狩った奴は違うのか」
「うん?どんな名前だった?」
「ウインドドラゴンとアースドラゴンってやつだな」
「あぁ、それは元々はいなかったから魔物だな」
ふむ、何となく竜は魔物で龍は違う、みたいな考え方でいいかもな
「で、話を戻すが魔物が発生した理由はな、24代目魔王陛下が魔人至上主義でな、それで魔人以外を滅ぼそうとして今は禁呪と呼ばれるほど凶悪な魔法を生み出し、それを実行した。だが、その魔法は半分失敗、半分成功という形で発動したんだ」
「ふーん.....じゃあ大方魔人が嫌われているのは魔法を発生させようとしたのが24代目魔王だったけど魔人も同じように見られてる、ってとこか?」
「そうだ、察しがいいな。その魔法は魔物を大量に発生させた。そしてこの勢力をもって24代目魔王は魔人以外を滅ぼそうと思ったのだろう。だが、失敗した部分もあった。指示をくだせる数少ない存在である24代目魔王自身が魔法に取り込まれ、コアになってしまったんだ」
「.....それはまた大きな失敗だな。でもそのコアは破壊できないのか?」
「.....その答えはおれも分からないな」
「それはなんでだ?試した奴くらいいるだろ?」
バロンはその問いに対し、ぴしゃっと言い放つ。
「いない。いや、試そうとした奴ならいた。そのコアの近くに行けば行くほど強い魔物が湧き出てくるんだ」
「.....なるほどな、それでいくら狩っても数が減らないのか」
「まぁコアから離れれば離れるほど湧き出る魔物は弱くなるんだがな、たまに強い魔物が発生するからたまに俺がこうして処理している」
「なるほど.....」
『ジリリリリ!!!』
「うおっ!」
いきなり俺の耳元、いや、頭の中にアラームが響き渡る。そのアラームの意味を察し、俺は自動精密探知に意識を集中させる。
「どうした?」
「すまん、どうしても行かなきゃ行けなくなった。えーと、また店に話聞きに行くから、じゃあな!」
「お、おう!気をつけてけ!」
充はバロンが何が何だか分からないうちに物凄い勢いで去っていく。
「何もんだあいつ.......」
バロンのそのつぶやきは木々の葉の擦れる音にかき消されていった。




