第34話
その日の時空魔法の授業はあのエイトくんとの闘いで終わってしまった。
エイトくんは授業が終わったあとに素直に謝ってきた。実は教師に尊大な態度で勝負を挑み、何故か勝ててしまったため引き返せなくなったのだそうだ。
恐らくスキル・悪戯が発動し教師は不確定な魔法の軌道を読み切れなかったのだろう。
「ま、まぁ思春期だし色々あるよな」
そんな事よりも、と言わんばかりに思考を切り替える。
今充はエリーナ校長の後をついて行っている。
それは何故か。もちろん試合前に約束した「ご褒美」を貰うためだ。
エリーナ校長はある教室の前で立ち止まる。それにならい充も立ち止まる。
エリーナ校長はその扉の前で咳払いをし、扉を開けるなり、その教室の中の人物に声をかける。
「アイシャさん、しっかり自習してましたか?」
「はい、先生。昨日の授業の復習をしてました」
アイシャは顔を上げ、簡潔にそう答える。
「そうですか、あぁそうそう今日からこのクラスに転校生が来ますよ」
そう言うとアイシャはすごい速さで首をこちらに向けた。
「せ、先生さすがに冗談ですよね?だってここは特Sクラスです。それこそ私か先生ほどの実力が無ければっ」
「いいえ、本当です。私が直々に見てこのクラスに相応しいと思いました」
その言葉が真実だと告げられた時、扉から入ってくる1人の青年、言わずもがな充である。
「ミツルさん、一応もう一度自己紹介してもらっても?」
「はい、これで2回目だな。俺の名前はミツル、アラキミツルだ。アラキがファミリーネームな。これからこの特Sクラスで仲良くしていこうと思っている。この学校のことなどわからないことが沢山あるので、よろしく頼むよ、アイシャ」
充がエリーナ校長に要求したのはこのクラスへの所属である。アイシャのことが放っておけなかった充はアイシャと同じクラスで過ごすことにしたのである。
充が自己紹介を終えると次はアイシャが自己紹介をする。
「改めて、私はアイシャ、アイシャ.....エスバレッタよ。出来ればあなたにはあまり畏まらないでアイシャって呼んでほしいわ」
アイシャはそう言うとそっと微笑む。
「ん?エスバレッタ.....?どこかで聞いたよな.....って、マジか」
エスバレッタ、そのファミリーネームはルナリアと同じである。つまりはアイシャはルナリアの妹ということになる。
アイシャをよく見ると心なしか微かに震えている。
恐らく今まで友達の1人も出来なかったのは特Sクラスという特異な環境のせいだけではなく、このアイシャ=エスバレッタという名前も一人でいるというこの状況に拍車をかけたのだろう。
「えっと.....畏まらないでね.....?私は対等に話せる学友が欲しいの」
そのアイシャの言葉に充は頷きながらこう答える。
「あぁ、もちろんだ。お前はまだ知らないかもしれないが、俺はもう少しでお前の義兄さんになるらしいからな」
そう言ってやるとしばらく固まった後、
「えぇぇぇええぇぇぇえ!!!!?」
と、校内に響き渡るような声でそう叫んだ。
声の大きさが父親と全く同じだ。やはり血は争えないようだ。
「そんな驚くことか?」
「いや、驚きますよ!いや、確かに姉の呪いが解けたと手紙はありましたがその手紙にはそんなこと欠片も書いてなかったです!」
「ま、まぁそれは知らんがそうゆうことだ。まぁ、今は学友としてよろしくな」
「学友として、よろしくね」
そう言ったアイシャの顔は憑き物が取れたような清々しい笑顔だった。
「えーと.....王女様が呪いにかかっていたとか、結婚するとか、最高機密が飛び交ってるこの場所に私はいていいんですかね.....?」
2人がエリーナ校長の口止めをする事になったのは言うまでもない。




