1 プロローグ
いつの頃だろう。
この少年に、俺が取り憑いていると認識したのは。
いつからなのかは、はっきりしない。人間としての生を終え、気が付いたらここにとらわれていた。
俺は前世では、素晴らしい人生を送っていた。
頭が人並み外れて良かった。
家庭は貧乏で、ろくな教育も受けられなかったが、頭の回転は速かった。その力を使って、事業で成功した。
そして三十四歳の時、俺の人生は終わったようだ。
おそらく、心臓麻痺か何かだったのだろう。
とにかく、転生はしたようだが、生きているとは言えない。
この少年の額に、魔石となって取り憑いたのだから……。
自分の意識が少しずつ消えていく……。
俺の存在が消えていくことに、とてつもない恐怖を覚える。
***
ある辺境の村に、一人の男の子が生まれた。
三十五歳になる両親が、ようやく授かった子供だった。この村の平均寿命は四十五歳ほど。二人にとっては、遅くに生まれた子だった。
男の子は、キラと名付けられた。
キラの額には、生まれた時から石が埋まっていた。
魔石と呼ばれる、魔物が持つような石だった。
村人たちは、その石を気味悪がった。
両親はキラの額を布で覆い、物心がつくと、いつも隠しておくように言い聞かせた。キラは素直に、その言いつけを守っていた。
キラが五歳の時、母親が亡くなった。
父親は猟師だった。獲物を追って、何日も山を駆け回る。一人で家に残すわけにもいかず、村には預けられる相手もいなかった。
父親はキラを山へ連れていき、仕事を手伝わせるようになった。
二人は山小屋を拠点に、数日かけて猟をした。
獲ってきた獲物を捌き、毛皮を剥ぎ、肉を乾燥させて村へ持ち帰る。そうして暮らしていたが、やがて父親も死期を悟った。
「キラ、俺はもう長くはないだろう。俺が死んだら、村を出ろ。この国にいれば、お前は殺されるか、売られてしまうだろう。ここに当座の金がある。これを持って、隣国の王都にいるコモスのところへ行け」
そう言ってから二週間後、父親は亡くなった。
キラが八歳になった時だった。




