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勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている  作者: にぃ


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第40話 倦怠感と焦り

 

 学校、2日も休んじゃったな。

 仮病使っちゃった。

 絶対お母さんにもバレてる。

 だけど、お母さんは私の様子を心配して何も言ってこなかった。


「誰とも……会いたくない……」


 広井君に力のことを知られてしまった。

 その場にいた花宮さんにも知られてしまった。

 二人に知られてしまったということは下手すればクラス中に……いや、学校中に広まってしまっていてもおかしくない。

 もしそうなっていたら私はどんな糾弾を受けてしまうのだろう。

 そう思うと部屋の中から動けなかった。


「転校とか……今の時期できるものなのかな?」


 無理だろうなぁ。

 家庭の事情でもない限り、学校を変えるなんて恐らく不可能だ。

 ならば私の取れる行動はこうして部屋に引きこもるだけなのかもしれない。

 自室に一人きりで居ればこの忌むべき力に振り回されなくて済む。

 そうだよ。最初から私に残された道はこれしかなかったんだ。


「一人って……楽だなぁ……」


 他人の感情に振り回されないってこんなにも心が落ち着けるものなんだ。

 でも一人でぼーっとしているのは退屈だ。

 そうだ。勉強しよう。学校に行けない分、私は自主学習を頑張らないといけないんだ。

 重い腰を上げ、ゆらゆらと勉強机に向かう。

 髪はぼさぼさで寝間着姿のまま私は机に参考書を広げた。


「………………」


 頭に何も入ってこない。

 全然集中ができない。

 倦怠感で吐き気がする。


「……やめよ」


 ゆらゆらとベッドに戻る。

 ベッドにゴロンと転がり、そのままぼーっとスマホを眺めていた。


 自分が堕ちていくのがわかる。

 心が不安定で何もやる気が起きない。

 何かをやる気力が沸かない。

 勉強もできず、ろくに動けず、寝転がって時間が過ぎていくだけの日々が始まるんだ。


「ふふ……駄目な子だなぁ私」


 この二日間でどれくらい勉強に置いていかれたのかな。

 まだ取返しは付くのかな?

 取り返しがつくとしても……この気力の無さでついていけるのかな。


「って……私、何を学校のこと思っているんだろう」


 もう行かない所なのに。

 勉強なんてどうでもいいことのはずなのに……


「…………」


 気が付くと私は再び机に戻り、参考書を広げていた。

 とてつもない吐き気と戦いながら、集中できない頭を叩きながら、無理やり勉学の世界に没頭した。

 どうして苦しい思いをしてまで勉強しているのか自分でもわからなかった。

 ただ、焦りのような感情が脳裏に渦巻いて、気が付けば手を動かしていた。







 気が付くと、午後4時を回っていた。

 学校はもう放課後の時間だ。

 私は一旦手を止めて、ベッドに座る。

 同時にスマホから着信音が鳴った。


「……席子……ちゃん?」


 鳴り響く電話に出ることを躊躇する。

 どうして電話を掛けてきたのだろう。

 私を心配して?

 それとも……私の力について問い質す為?


「…………」


 結局私は電話に出る勇気がなく、やがて席子ちゃんからの着信は止まる。

 これで席子ちゃんとの繋がりも消えちゃったのかな……

 ………………悲しいな。


 ~~♪ ~~♪


「わわっ!?」


 再び着信音が鳴る。

 今度は広井君だ。


「広井……くん……」


 今一番話をしたくない人。

 でも今一番謝らないといけない人。



 ——『キミは他人の心を覗き見ることができるんだな?』



 結局私は広井君の質問に答えず逃げてきてしまった。

 この答えを彼に返す義務が、責任が、私にはある。

 だけど私はその責任を果たそうとせず、ただじっと着信音が消えるのを待っていた。

 やがて、彼からの着信も止まり、心の中に寂寞感だけが空しく広がってしまった。

 ごめんなさい。


 ~~♪ ~~~♪


 三度、着信音が自室に響き渡った。


「……? 知らない……番号……」


 無意識だった。

 きっとこの時の私は倦怠感で頭が正常に働いていなかったのだろう。

 普段なら知らない番号から掛かってきたら絶対に出たりなんかしない。

 でも、今の私は無意識に通話ボタンを押してしまっていた。


『出ましたわ!!』


「……??」


 誰だっけこの声。

 聞いたことあるような……ないような……

 喧騒に似た音もいくつか聞こえてくる。

 周りに何人か人がいるようだ。


「こらぁぁ! 未希ちゃん!! 私からの電話は無視するくせに花宮ちゃんからの電話ならすぐに出るとはどういうことだぁぁ!」


「り、莉々様! お、落ち着いてくださいませ!」


 怒気に満ちたその声は……


 とても聞き覚えのある声色で……


 すごく暖かさがあって……


 気が付けば私の瞳にはブワッと大粒の涙が浮かび上がっていた。


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