第21話 ちっちゃい広井君を机の中で飼いたい
広井君とはお友達だ。
少なくとも私はそう思っている。
ただ、広井君の中での私はどこかアイドルチックに祀られているような……ただ遠くから眺めるだけの存在でしかないように思えた。
私はアイドルみたいに可愛くないし、どんくさいだけの女の子。
広井君が考えているような高嶺の存在ではないことにはさすがに気づいてほしいのだけど……
「(今日もミキティの隣に座れる幸福を噛みしめよう。ああ、もうずっとここに居たい。ここに住みたい。いやミキティの机の中に住みたい。机の中に引っ越しして一生ミキティを眺めるだけの存在になりたい。机の中にミキティの写真を飾りたい。でも写真持ってないんだよな。ミキティ、ブロマイド販売しないかな? 俺が買い占めるから)」
私のどんくささに気づくどころか、以前にも増して高尚な存在にされてしまっている気がする。机の中に住みたいとか言い始めるし。
「(でもミニチュア広井君を机の中で飼うのは有りかも——)」
広井君につられて変なことを考え始めた馬鹿な頭をブンブン振り回す。
「(な、なななな、何を考えているの私!? 馬鹿じゃないの!?)」
男の子を机の中で飼うなんてまともな思考じゃない。
一瞬でもそんなことを考えてしまった自分が信じられなかった。
「(そ、そうじゃなくて、私と広井君はまだまだ友達力が足りてないって話だよ!)」
一緒にクラス委員になって、一緒にカラオケにも行った。一緒に声優イベントに行く約束もした。
それなのにこの距離感はなんだろう。
「(もっともっと仲良しになりたいな)」
その為にまず何をすべきなのか。
私の中で一つの答えはすでに存在していた。
「(チャットアプリ……)」
以前席子ちゃんとIDを交換したチャットアプリ。
一瞬だけ広井君と同じグループに入れてもらったこともあった。私が秒で抜けちゃったけど。
そのせいで私は広井君のアプリIDを知らない。
IDを共有すればチャットで交流できるし、それに写真も送り合える。
「(広井君、私の写真欲しがってたし、私も広井君の写真が欲し——)」
ガンガンガンガン!!
煩悩に侵食されたこの馬鹿な頭を再び机に打ち付けまくる。
違うの! そういう変態的な意味で広井君のアプリIDを知りたいわけじゃないの!
わ、私は純粋に広井君と仲良くなりたいだけなんだから!!
「信じて席子ちゃん!」
「急に話を振られても意味わからんわ!!」
こうして私の当面の目標は決まった。
広井君のチャットアプリのIDを手に入れることである。




