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勝ち確ヒロインはなぜか今日も負けている  作者: にぃ


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第22話 意外とボディタッチが多めの勝ち格ヒロイン

 

 広井君は自分の席でスマホを眺めていることが多い。

 スマホに集中しているときは心の声が聞こえてこない。


「(何を見ているのかな?)」


 そーっと覗き込むように広井君のスマホに視線を流す。

 よく見えないので身を乗り出す。


「あ、あの、氷室さん? 俺に何か用か?」


「はっ!?」


 気づかれちゃった!


「な、何でもないよ!? 広井君のスマホを覗いたりなんかしてないよ!?」


「い、いや、俺の肩に手を置いてじーっと覗き見ていたような気が……」


「はぅおっ!?」


 わ、私ったら何をやっているんだ!

 お、男の子の肩に手を置くなんて……置くなんて……

 ……手が離れない。


「こ、この手は広井君の肩幅が気になっただけだから! 気にしないで!」


「そ、そうなのか?」


「そうだよ! 広井君の肩幅を測るついでにチラッとスマホに視線がいっただけなんだよ!」


「お、おう……」


 やばい広井君が引いている。あの広井君を引かせてしまうくらい今の私の挙動はおかしいのだろう。うん、自覚あるよ。急に肩幅測り出す女子なんてただのおかしい人だもん。

 でもなぜか彼の肩に置いた手が離れない。本能が彼に触れたがっている感じだ。

 彼もチラチラと肩に置かれた手を気にしていた。


「ひ、広井君は、普段スマホを見ていることが多いよね! ど、動画でも見ているの?」


「あ、ああ。動画見たり佐伯千秋の歌を聞いていたりかな」


「へぇ~。ち、ちなみにチャットアプリはあまりやっていないの?」


「ああ。アレはあんまりいじらないな。家族と席子以外友達登録していないからあまり起動もしていない」


「……むぅ」


 つまり席子ちゃんは家族と同等の価値ってこと? それとも席子ちゃんと夫婦になって家族になりたいっていう暗示かな?

 ジロッと席子ちゃんを見る。

 急に睨まれて頭にクエスチョンマークを浮かべている。困り顔可愛いな。ずるいぞギャルめ。

 わ、私だって、広井君と友達登録するんだもん。

 私は彼の肩に手を置いたまま、指で文字をなぞってみる。

 と、も、だ、ち、ぼ、し、ゅ、う


「(み、ミキティが俺の肩を指で擽ってくるぅぅ!? なに? なんなの? くすぐったいけどなんか嬉しい! なんか嬉しいーーー!!)」


 しかし、検討むなしく、広井君はくすぐったそうな顔をするだけで何も気づいてくれなかった。

 やり方が間接的過ぎた。やっぱり言葉にしないと駄目か。


「せ、せっかくアプリを登録しているのならもっと活用しないともったいなくないかな?」


 チラッチラッと広井君の顔を覗き見る。


「たしかにそうだな。もっと家族と交流した方がいいな」


 くぅ。言い方が遠回しすぎて全然意図が伝わらなかった。


「そ、そうじゃなくね! ほら! 高校生なんだからもっとお友達と交流すべきだと思うんだよ! お・と・も・だ・ち・とっ」


「うーん。席子とはチャット使わなくても話できるからなぁ。いや、チャットじゃないと聞けない話とかもあるか。わかった! もっと席子とチャットしてみる」


 そうじゃないの! そうじゃないんだよ~!

 駄目だ。どんどん事態は良くない方向へ行っている。

 もっと直接的に言わないと……!


「ち、ちなみに私もアプリの友達登録者数が少ないから寂しいや苦しい時いつも一人なんだよね。あー、寂しい寂しい」


「席子がいるから寂しくないんじゃないか?」


「ぐぬぬ……」


 この人、ここまで言っても気づいてくれない。

 結構直接的に言っているつもりなのに全然伝わらないのはどうしてなの……

 私のフラストレーションは限界を迎えてしまった。


「どうしてここで『俺とチャットアプリでフレンド登録しない?』と言ってくれないのぉ~!」


「「「……っ!?」」」


 シンっと一瞬静まり返る。

 あ、あれ? 今私の悲痛の叫びが教室中に響き渡らなかった?


「あ……あ……」


 私の顔はみるみる紅潮し、真っ赤になったままその場に立ち尽くす。

 皆の心の声が私の心に聞こえてくる。


「(氷室さん。乙女だ)」

「(うんうん。気になる人のIDってどうしても知りたいよね。わかるよぉ)」

「(委員長って真面目なイメージあったけど、すっごくピュアな子なのかも)」

「(ちゃっとあぷり?? ってなんなのですの? ハイカラ過ぎてわからないですわ)」

「(未希ちゃん。ま~た暴走しているなぁ。いつものことだけど)」


 皆の心の声に悪意はない。

 むしろ私を同情する意見が多かったけど……


「は、恥ずかしいよぉぉぉ~!」


「あっ! ミキティ——!!」


 走り去る私に広井君が手を伸ばすが、私はその手を振り払って教室から出て行った。

 うわーん。この光景前にもあったぁぁ!


「……俺が悪い……のか? 俺が悪いよな?」


「それが分かっているなら、ちゃんとフォローしてあげなさい」


「……分かってる」


 広井君と席子ちゃんの会話は私には聞こえてこない。

 クラスメイト達は走り去る私に同情の視線を投げてくれてはいたが——


「「「(今、委員長のこと『ミキティ』って言ってなかった?)」」」


 一瞬でクラスメイトの興味はその一点に移り変わっていた。


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