9. 生い立ち2
すると、名を呼ばれた彼は冷たい表情を向け、わざとらしい笑みを浮かべた。
「おはようございます、お母様。随分と荒れていますが、何をなさっていたのですか?あと、この子達は誰ですか?」
ガブリエルも小馬鹿にしたような笑みで返す。
「あら、見てわからない?あんたの父親の不倫相手とその子供よ。あの人ったら、こそこそと何をしてるかと思えば…、こんなことが世間にバレたらどうするつもりかしら?だから、その前に処分しておこうと思って。そこにいる汚らわしい女とガキをね」
「そうですか。つまり、この子は僕の義妹ということですよね?それならこの子の処置は僕に任せていただけませんか?対応を決めたらお父様にお伝えしておきますから。させていただけないのなら、そこの男達まとめて斬り倒しますが」
男達は顔をひきつらせる。
彼、ジェラルドは口調からして剣術の心得があるのだろう。にこやかな笑顔で言っているが、話している内容の酷烈さと合わなさすぎる。
それに対して、ガブリエラは見た目的に剣を持てる程の筋力は無さそうだ。それを見越して脅しているのだろうが。
…しかし、脅してまでシャーロットをどうするつもりなのか。
シャーロットはジェラルドに恐れおののく。
ガブリエルは動こうとしない男達を見て、シャーロットを殺すことを諦めたのか、舌打ちをしてジェラルドを睨む。
せっかくの高そうなドレスに似合わない形相である。
「…ちっ!しょうがないわね。けど、伯爵家からこいつに金は銅貨一枚たりとも渡す気はないから、自分でどうにかしなさいよ」
捨て台詞を吐くと、ガブリエラは男達と共に去っていった。
───その後ジェラルドの話術によって、シャーロットは伯爵家の娘として扱うことが認められた。ガブリエラの宣言通り生活費などは一切貰えないが、森に採集に行ったりジェラルドからこっそりお金を貰ったりしてやり過ごした。
住むところも、広々とした伯爵家の屋敷の使っていなかった一番端の狭い部屋を貰えることになった。
最初は、ジェラルドもガブリエラと同じような加虐的な性格かと恐れていたが、母を助けるのに間に合わなかったのを謝罪されたり何度も会いに来て優しくしてくれたりする内に、そんなことはなくなっていた。
しかし、もちろんのことガブリエラとアラスターはこの7年間、親としての愛情など注いでくれるわけもなく、それどころか会うたびに殴られたり蹴られたりといった暴力を振るわれた。兄ができるだけ守ろうと対策は結構してくれていたものの。
立場的にガブリエラはまだしも、アラスターに関しては血の繋がった親であるはずなのだが、結果的にアラスター、つまり伯爵家の名を汚すことになったシャーロットを、世間体を気にするアラスターは許せなかったのだろう。
──────これが、シャーロットが両親から愛されない所以である。




