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4.目覚め

「んぅ…。」


目が覚めると、美しい蜜柑色の瞳がこちらをのぞき込んでいた。


「おお、ライト家のお姫様はようやくお目覚めか」

「おはようございます。体調はいかがですか?」

「おにい、さま…。フローラも…。」


からかうような口調で目覚め早々に声をかけてきたのは、シャーロットの兄であるジェラルドだ。メイドのフローラもそれに続く。


どうやら、ジェラルドとフローラが様子を見てくれていたらしい。

シャーロットは二人の目元の黒ずみに気づき、眉を寄せる。


(酷いくま…。もしかして寝ずに治療してくれてたのかしら)


本当は今すぐにでも謝りたいところなのだが、二人とも普段の行動を思うと、無理をしたことは認めなさそうだ。


シャーロットに心配させまいというその気遣いを嬉しく思いつつも、無理させてしまったことを反省し、もっと成長して強くなり兄達の負担をどんどん減らせるようにしようと意気込む。


───しかし、その考え方が既に二人の考え方と似ているのだが、本人達がその事に気付くのはまだまだ先だった。


ふと顔をあげると二人とばっちり目が合う。なかなか返答のないシャーロットを心配していたのだろう。


「えぇと…、お兄様達が治療してくださったおかげなのか、とても元気です。ありがとうございました!あと、心配かけてごめんなさい!」


そう言って頭を下わげる。兄達は安心したようにほっと息をついて、微笑んだ。


「そうだな、大怪我を負ったにしては元気そうでなによりだ。痛いところはないか?」

「はい!さっき一回起きた時と比べて、今は全く痛みがなくて。ほら、さっきは誰もいなかったでしょう?でも、今度は二人がいてくれたから、痛みもひいたんじゃないでしょうか!」


先ほどとは違って、大好きな頼れる二人がいてくれるのがとても嬉しく、満面の笑みを浮かべる。


二人は嬉しげな表情を浮かべるが、元気だということに対しては、どうにも信じていない様子だ。


(…あっ!もっと元気だって示せば信じてもらえるかしら!)

そして思い付きを行動にするべく、シャーロットはベッドから立ち上がろうとした。


そんなシャーロットの様子に何をするつもりかと、二人は訝しげな顔をするも、直ぐに意図に気づくと急いで止めようと慌て出した。


二人からしたら、重症の妹or主人が急に立とうとするのだから止めるのも当然なのだが。


「お嬢様、お座りください。」

「シャーロット、じっとしてなさい。」


だがそんな声も時すでに遅く、シャーロットは思い切り立ち上がった。そして、自信満々に両手足を広げる。


「ご心配ありがとうございます。ですが、ほら!立ち上がっても大丈夫なくらい、全く痛くないんです!」


今度こそ信じたでしょう、というしたり顔で二人を見つめたが、なぜかジェラルドは黒い笑みを浮かべていた。


(あ、あれ?この顔を見るのっていつも叱られる時だったような...?)

その表情に嫌な予感が背を伝う。


そして残念ながらその予感は当たってしまった。


「…シャーロット?お前は大怪我を負った直後だよな?痛くなくても安静にしておくべきだよな?なぜそんな自信ありげに立ち上がっているんだ?」


魔王のような笑みにシャーロットは震え上がった。


「あわわわ、お、お兄様!ここ、これはですね、お兄様達が元気って信じてなかったから…」

「問答無用だ!今すぐ戻りなさい!」

「はい、ごめんなさい!」


やはり怒られてしまったため慌ててベットに沈むように座り、ジェラルドはため息をついた。

ふと、フローラの方を向くと、フローラが眉をひそめ、考え込んでいるのに気づいた。


「フローラ?どうかしたかしら?」


「いえ…。先ほど主もおっしゃっていましたが、いくら普段から比較的治りの速いお嬢様とはいえ、さすがに今回は異様に感じられまして。

…それで考えていたのですが、自己治癒力以外となると、可能性は3つ。

1つは、聖女様を回復してもらったということ。ですが、聖女様が来るなんてことが私達に知らされていない訳ないため、この可能性はないかと。

2つ目は、お嬢様がご自分で回復薬をお飲みになられたこと。とは申したものの、そこに置いておいた回復薬が減っていないように見えますし、少量じゃ効果もほとんどないと思うのですけれど。ちなみにお嬢様、回復薬をお飲みになられた覚えはございませんか?」


「いえ、飲んだ記憶はないのだけど…」


そこで、一つの可能性にたどり着き、シャーロットは目を輝かせた。

(…はっ!もしかして私、寝ている間に飲んだのかしら?だとしたらなんて器用なのかしら!思いがけない才能を見つけたかもしれないわ!)


表情から考えていることが分かったのか、ジェラルドはシャーロットに呆れたような視線を向けてくるが、シャーロットはまるっと無視することにする。

そんなシャーロットとジェラルドを横目に、フローラはぶつぶつと呟きだした。


「…そう、ですか。ならやはり、3つ目なのでしょうか…。」

「結局、その三つ目ってなんなの?」


さっと切り替えて質問する。話の脱線が多いシャーロットにとって、切り替えの早さは長所と言えるだろう。そもそも脱線しなければいい話だが。


フローラは少し目を彷徨わし、何かを決心したような表情で告げた。




「それは───お嬢様が自分で治癒魔法を使ったということです。」

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