EXTRA「これが……真実だっ!!」
時間は、充が櫻井家に来る数十分ほど前に遡る……。
「に・い・さ・んっ♡」
朝食を食べ終えたゆうなが、洗い物をしていた涼介の背中に抱きついてきた。
「んー、なんだい?」
ゆうなのこうした行動に既に慣れてしまった涼介は、洗い物の手を止めないまま、ゆうなに聞き返した。
……慣れって怖い。
「なんとですね?私は今日の予定が無いので、すごーく……すごーっく暇なんです!」
「ふんふん、それで?」
「私と一緒に、デートしませんか!?」
「はいはい、デートね……デ、デートォ!?」
この発言は流石に流しきれなかった。
「はいっ! 一緒にお寺を回って、ショッピングをして……」
「ガッツリデートだな……」
近くにお寺もショッピングモールもあるので恐らくそこの事だろう。
「そして高台で一緒に街の夜景を……」
「ははは、ゆうなはロマンチストだな」
これもまた少し離れてはいるが、カップルに人気の【街が一望できる高台】がある。
「その後は、山の上にあるお城に行って……」
「ははっ、お城かぁ。……ん?」
ゆうなのその発言に何か不穏な空気を感じ取った涼介は、少し洗い物の手を止めた。
そして、ポケットからスマホをゆうなに見えないように取り出して、Gogleマップを開く。
「山の上のお城」と検索した。
範囲は近場に設定。
先程から近場のことばかりを言っていたからだ。
お城、そんなものは無かっ……いや、1箇所だけあった。
『HOTEL-コウノトリ』
説明欄、レビューを見て確信する。
(これ、思いっきりラブホじゃねぇか!?)
☆4.3……意外と評価が高かった。
それらをひと通り確認し、スマホをしまったあと、ゆうなに振り返った涼介は少し屈んで目線を合わせた。
ゆうなは、涼介の顔を見てニコニコしてる。
「あー……ゆうな?」
伝えるべきか……と悩んだが、これ以上ゆうなが他の所で自爆しないように教えることに決めた。
「なんですか? 兄さん?」
眩しい目線……やめろ、心が痛む……。
「そのお城はだなぁ……その……は、入るには大人になる必要があるんだ。」
教えるべきと決めたはいいが、今のゆうなにその知識を与えるのは教育上あまり宜しくない、そう考えた涼介は少しオブラートに包むことにした。
「お、大人にですか?」
「そうだ、お酒もタバコも大人になってからって言うだろ?」
「確かに……そうですね!」
「それと一緒なんだ。」
「なるほど」
「分かってくれたか?」
これで大丈夫だな、とホッとした涼介は洗い物に戻る為、膝を伸ばそうとした。
「はいっ! 分かりました、教えてくれてありがとうございます、兄さんっ♡」
ゆうなが首元に抱きついてきた!
その為、姿勢としては前屈み気味だった涼介は、首に体重をかけられた事でバランスを崩し、涼介はそのままゆうなの方に倒れ込んでしまった。
しかし、機転を利かせて涼介が先に床に手を着いた事で、ゆうなに衝撃をあまり与えずに済んだ。
その結果、涼介がゆうなに覆いかぶさる形になる。
「ふぅ、あっぶねぇ……痛っ!」
しかし、二人分の衝撃を受けた涼介の腕には負荷がかかりすぎた。
どうやら、左手首が炎症を起こしたようだ。激痛が走り涼介は苦悶の表情を浮かべた。
「はわわっ! に、兄さん、ごめんなさいっ! 私が急に抱きついたから……!」
「大丈夫だ、気にするな。妹を守るのは兄の役目だろ……?」
(我ながら、キザなセリフだわ……)
「に、兄さん……/////」
涼介が笑みを見せると、目元に涙を浮かべながらも柔らかくゆうなは微笑んだ。
ガチャ……
そこに来訪者。
「「!?」」
「お前ら、なにしてんの?」
そして、現在に至る。