第13話『ゼーたん』
その後、四人はモール内にあるZEGAというゲームコーナーに足を運んだ。
涼介と充は学校帰りなどに良くここに通っている。
対照的に妹二人は初めてと言ってもいいほど来たことがない。
涼介達が訪れる際は、高校生やら社会人やら老人などしかいないはずのこのゲームコーナーだが、今日は夏休みということもあり小さい子も多く見受けられた。
入口付近には客寄せのためだろうか、ZEGAのマスコットキャラクター『ゼーたん』の着ぐるみがキャンペーン中と書かれた看板を持って行き交う人々に手を振ったりしていた。
記念撮影も出来るらしく、子供連れの親達は『ゼーたん』の前に長い列を作っていた。
その光景を目の当たりにした時、充と涼介は思わずその場で立ち止まってしまった。
その理由は単純明快―――――
((いや、なんであんなのが人気なんだよ……!?))
そう、二人は『ゼーたん』というキャラクターのその人気っぷりに驚いていたのだ。
なにせ『ゼーたん』の頭は太陽、右肩から象の鼻が伸びており、他は全てピッチピチの黄タイツといった『ぐで〇ま』と『おっさ〇テレビ』のキャラを足して二で割り、そこになぜか象の鼻を適当に取ってつけたかのような、お世辞にも可愛いだとかカッコイイとか言えない、そんな見た目のキャラクターなのだ。
夜道で出逢えば、ほぼほぼ間違いなく化け物呼ばわりされること待ったナシのようなキャラクター。
それが二人の目の前に映る光景では小さな子供たちに引っ張りだこなのだ。驚くのも仕方がないだろう。
「な、なぁ、二人はどう思う……?」
涼介は、背後にいた涼介達が突然立ち止まったことを不思議そうな顔で見つめるゆうなとユイに『ゼーたん』のいる方向を指さして問いかけた。
「どれですか……? あ、あれか、な……」
「えっ、どれです、か……」
ゆうなとユイは充の指の先を追って行き視線が止まり、二人の顔も驚きに染まる。
((まぁ、そりゃそうなるわな))
涼介と充は心の中でそう思った。
「な、なぁ涼介、ここは後にしないか? さすがにこれは……」
絶句したままの妹二人を見て充は涼介に切り出した。
「あ、あぁ、そうしよう……」
涼介も同意を示し固まったままの二人に声をかける。
「ゆうな、ユイちゃん、一旦ここを離れよ……」
その時だった。
「「かっ……」」
「か?」
「「かわいい〜っ!!!!!」」
一瞬の沈黙の後――――
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
少年二人の驚愕の叫びはフロア中に響き渡った。




