第7話「スパルタ怖ぇ」
「それで、今日は何の用だったんだ充?」
その後も続いたボケの応酬が一段落したところで、涼介はずっと気になっていた事を充に問う。
すると充は目を丸くして答えた。
「別に? ただ暇だったし来ただけなんだけど?」
「いや、暇ってお前、夏休みなんだから課題があるだ……」
「終わらせた」
「……は?」
今この友人は何と言ったのか?思わず聞き返してしまった。
「いや、終わらせたぞ? 課題」
「……いやいや、いくら天才のお前でもそんな事あるわけ」
充は学年でも常に上位の成績を残している。
だが、課題の量を知っている涼介は冗談としか思えなかったのだ。
「ところがどっこい、あるんだな〜これが(笑)」
「いやでもなぁ……」
すると充はニヤリと笑ってから
「ヒントな?オレの母さん」
と言った。
「充のお母さ、あっ……なるほどな……。まぁそのなんだ、大変だったな?」
先程まで、コイツは何を言ってるんだ、と思っていたがその一言ですぐに納得がいった。
「あぁ、死ぬかと思ったわ……。あのクソババア、マジで許さねぇから……」
そう言って充は机に突っ伏した。
充の母親―ヒロコさんは、見た目も中身も冷血という言葉が似合う、スパルタ教育者だ。
幼い頃、教えて貰ったこともある涼介はあの当時を思い出して身震いした。
そして、充の課題終了発言……これらから導き出されるのは1つの答え。
……これ以上は怖くて口にできない。
「やっぱり、充さんは凄いんですね!」
充の課題が終わった背景を知る由のないゆうなは、素直に充を褒めていた。
「お? そうか? んじゃあ、オレのお嫁さんになって下さい」
机からガバッと起き上がった充はゆうなに両手を差し出した。
「私は兄さん一筋ですから、他の男性の方からはお断りします!」
笑顔でピシャリ。
すると充は、目線だけをこちらに向けてニヤつきながら
「だってよ、シスコン〜(笑)」
「もうその話はさっき聞き飽きた……」
「ちっ、ノリ悪ぃな……」
「そりゃあ、どうも」
「褒めてねぇよ……。ゆうなちゃん、涼介が俺に冷たいんだけどどう思う?」
「今の兄さんは、私しか目に入ってないんだと思います♡」
「おぉー、愛されてるねぇお兄ちゃん?」
「黙れ充、ヒロコさんに連絡するぞ?」
「そいつだけは勘弁だ(笑)」
そんな、どうでもいい話をしている内に、時間はだんだんと正午に近づいていた。




